——宝塚を退団後、初めてのミュージカルですが、歌については?

音 一人で歌う曲もいくつかあるんですけど、出演者のみなさんと歌う曲も多いし、アリソン以外にもいろんなパートをやっています。なかには、Googleの音声の役も(笑)。一つの作品でいろんな引き出しが増えそうで楽しみですね。

『ファースト・デート』サウンドトラック

——演出や脚本を、大ヒットドラマ『ゴシップガール』のスタッフが手掛けているのも話題です。音さんが思うこの舞台の見どころは?

音 やはり主人公のふたりの恋の行方がおもしろいです。例えば、何かが起こったときに相手が何を感じていたのか、二人の気持ちの流れが本当に細かに楽しく描かれていて。ニューヨークが舞台ということもあって、人種やジェンダーの問題も入っているので、今を生きる皆さんにより響くんじゃないかなと思います。

とにかく音楽が大好き! ジャンルを問わずいろいろ聴く

——次に音楽への想いについて教えてください。宝塚では歌姫として活躍されていた音さんですが、もともと音楽は好きだったのですか?

音 幼い頃から両親にはいろんな芸術に触れさせてもらっていました。宝塚歌劇もよく観ていて、ずっと好きでしたね。歌も小さい頃から親しんでいましたが、クラシックとかポピュラーとか、ジャンルをきちんと認識して勉強を始めたのは宝塚音楽学校に入ってからです。

——普段はどんな曲を聴くんですか?

音 とにかく音楽が大好きで、好きなジャンルが多すぎて選べないのですが(笑)、ずっと好きなのは、ルドヴィコ・エイナウディさんです。クラシックベースのイタリアの作曲家の方で、旋律がすごく綺麗なんですよ。TicTokでもっとも再生された「経験を重ねてExperience」という動画が有名です。この方のアルバムはずっと聴いていられるし、いつも流しています。

ルドヴィコ・エイナウディ「経験を重ねてExperience」

——エイナウディさんは、『ノマドランド』や『最強の二人』といった映画の作曲家としても知られています。音さんは映画を見てサントラに興味を抱くことも多い?

音 映画のサントラは大好きです。ドラマもそうですけど、何かの作品を見てサントラを購入することはよくありますね。プレイリストもサントラが多いです。

映画『アメリ』の挿入歌を作ったヤン・ティールセンさんというフランスの作曲家がいて、その方の曲も好きです。『アメリ』の曲は、以前、モダンバレエで踊ったこともありました。

——次に宝塚時代の曲で、今も思い出の楽曲はありますか?

音 『蘭陵王—美しすぎる武将—』という作品の「生きて」という歌が心に残っています。歌詞に染みる部分があるというか、生きることがつらくなったりわからなくなったりしたとき、普通の歌なら“あなたなら大丈夫”となると思うんですけど、この曲は“自分が好きなものすべてを捨てても生きて”という。心が軽くなるというか、自分の軸になるような曲です。

——『蘭陵王』のヒロインを務めた音さんの歌唱と演技は素晴らしかったです。では、クラシック音楽でお好きな曲は?

音 クラシック音楽もよく聴きますが、そのものというよりはベースがクラシックで現代的にアレンジされた曲が好きかもしれないです。先ほど挙げた作曲家のほかには、久石譲さんも好きですね。

役作りの迷いを音が助けてくれる

——多くの音楽に親しむ音さんにとって、音楽とはどんな存在ですか?

音 音楽は自分を救ってくれる存在です。役と向き合ったり、日常で行き場のない気持ちや消化しきれないものが生まれてくるなかで、音楽がそれを吸収してくれたり、代弁してくれたりしました。

役と向き合うときにも、最初は台本だけで人物のイメージをふくらませるんですけど、そのあと、楽曲ができて歌をもらうと「このキーで歌うならこのキーで話す人なんだな」とか「感情が波打つ人なんだな」とか、役作りの迷いを音が助けてくれました。舞台人としても個の自分としても、音楽は助けてくれる存在だなと思います。

——最後に、『ファースト・デート』への意気込みを一言お願いします。

音 とにかく初めてのことばかりで、今は緊張のボルテージがすごいところまでいってしまっているんですけど(笑)、キャストの方からいろんなことを学んで、新しい何かを掴み、皆さんとの化学反応を楽しみたいです。そして、なんといってもお客様に喜んでいただける舞台にできればと思います!

公演情報
ミュージカルコメディ『ファースト・デート』

日時: 2023年1月19日(木)〜31日(火)

会場: シアタークリエ

出演: 村井良大、桜井玲香、植原卓也 、音くり寿、オレノグラフィティ、保坂知寿、長谷川初範

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取材・文
NAOMI YUMIYAMA
取材・文
NAOMI YUMIYAMA ライター、コラムニスト

大学卒業後、フランス留学を経て、『ELLE JAPAN(エル・ジャパン)』編集部に入社。 映画をメインに、カルチャー記事担当デスクとして勤務した後、2020年フリーに...