インタビュー
2022.08.22
宝塚OGが語る、音楽と私 Vol.13

花乃まりあ「音楽は人生そのもの」~舞台『8人の女たち』や家族で楽しむジャズを語る

宝塚歌劇団の人気OGが、お気に入りの音楽について語るインタビュー連載。
今月は、元花組トップ娘役で、現在は舞台や映像で活躍している花乃まりあさんが登場。新作舞台『8人の女たち』の見どころや、宝塚時代の思い出の曲、お気に入りのジャズなどを語ってくれました。

取材・文
NAOMI YUMIYAMA
取材・文
NAOMI YUMIYAMA ライター、コラムニスト

大学卒業後、フランス留学を経て、『ELLE Japon(エル・ジャポン)』編集部に入社。 映画をメインに、カルチャー記事担当デスクとして勤務した後、2020年フリーに...

撮影:吉原朱美
ヘアメイク:miura(JOUER INTERNATIONAL )
スタイリスト:鬼塚美代子(アンジュ)
衣装協力:RPKO ダイアナ ete

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宝塚OGたちの華麗なる共演、カラフルな衣装……見どころ満載の舞台『8人の女たち』

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——『8人の女たち』は、カトリーヌ・ドヌーヴ主演で映画化もされた極上のミステリーの舞台化です。今回は元宝塚のトップスターが主役の8人を演じることが話題ですが、出演が決まったときのご感想は?

花乃 映画版を見て、すごく魅力的な作品だなと思っていました。その後、出演者全員が宝塚OGと聞いて、喜びと興奮と緊張感が入り混じった気持ちです。俳優として大きな挑戦ですし、先輩たちと共演できることが本当に嬉しいです

花乃まりあ(かの・まりあ)
2010年、宝塚歌劇団に入団。2015年に花組トップ娘役に就任。明日海りおの相手役となる。2017年に卒業後は、舞台出演のほかにもリポーターを務めるなど映像でも活躍。2021年に結婚を発表。

花乃さんの新作舞台『8人の女たち』は、2002年に映画化もされたフランスの劇作家ロベール・トマの戯曲。クリスマスの朝、雪のために密室となった屋敷で主人の死体が発見され、その場にいあわせた8人の女たちが容疑者になる。果たして犯人は誰なのか…。今回は宝塚のOGキャストが集結し、ストレートプレイとして8月27日から幕を開ける。

——舞台に登場する8人の女性の中で、花乃さんは一番年下のカトリーヌを演じます。この役についてはいかがですか?

花乃 カトリーヌは16歳で、末っ子でお調子者。家族の中の太陽のような存在ですね。ただ、単にやんちゃな妹というだけではなく、思慮深さや知性もあり、物語を動かしていく女の子でもあるので、その部分も忘れずに16歳ならではの魅力をだしていこうと思います。

——フランス発の舞台ならではのカラフルなファッションもみどころですね。

花乃 本当に可愛らしいお衣装ですよね! 衣装を担当する十川ヒロコさんとは、これまで何度もお仕事をさせてもらっています。毎回、役柄の個性と作品にマッチした衣装を作ってくださって、今回のポスターも8人全員が魅力的です。舞台になるともっとリアルになっていくので、今から楽しみなんです

カトリーヌ役の花乃さん。

——密室空間で死体が発見され、その場にいた8人が疑われるという物語に、アガサ・クリスティの推理小説のような面白さを感じます。花乃さんはミステリーはお好きですか?

花乃 本は好きでよく読みますが、ハラハラするものよりは穏やかなほうが好きなんです。サスペンスものは続きが気になって、眠れなくなっちゃうんですよ(笑)。推理ものだと王道ですけど、シャーロック・ホームズはおもしろいですね。日本なら東野圭吾さんの小説も好きです。

——カトリーヌの姉のシュゾン役を、花乃さんと同じ花組のトップ娘役だった蘭野はなさんが演じます。舞台についてお話はされましたか?

花乃 蘭乃さんとは宝塚退団後もお食事をご一緒させていただいています。いつでも1歩前、2歩前を歩いてくださる先輩で、自分の胸のうちを素直にさらけだせる方でもあって。いつも求めていること以上の答えをもらえるので、この舞台で稽古場からご一緒できるのが嬉しいです。

——ほかにも水夏希さんや珠城りょうさんなど、華やかな顔ぶれですが、花乃さんにとって舞台版のみどころは?

花乃 映画だと、シーンのきりかわりや人物のアップが抜かれますけど、舞台では8人全員がほとんどその場にいて、スリリングな心理戦を繰り広げていきます。お客様は好きな人をずっと見ることもできますし、結末を知ったうえで、この人はあのときどんな表情をしていたのかなとか、見直すこともできます。何度見ても楽しめる作品になるんじゃないかなと思います。

最近お気に入りのジャズや宝塚時代の思い出の曲

——普段、音楽はよく聴かれますか?

花乃 自宅でリラックスした時間に聴くことが多いですね。夜、寝る前とか。好きなアーティストはノラ・ジョーンズで、「サンライズ」という曲が特に好きです。舞台の公演前にテンションをあげたいときは、ディズニーの音楽を聴くこともありますね。「プリンセス・プレイ・リスト」、「ホール・ニューワールド」、「輝く未来」……など。あと、父と夫がジャズがすごく好きなので、私もふたりの影響でよく聴いています。

ノラ・ジョーンズ「サンライズ」

——ご家族でジャズを楽しむって、素敵ですね。おすすめのアーティストは?

花乃 ジョーイ・アレキサンダーという若い男の子のピアノがおすすめです。最初に知ったときはまだ彼が14~5歳のときで、ジャズフェスで聴きました。まったく知識がなかったので、こんなに若い男の子が日本にピアノを弾きにくるんだと驚きましたね。生で聴くと、音楽を愛するハートがすごく伝わってきて、本当に良かったです。

ジョーイ・アレキサンダーのライブの様子

——宝塚時代は可憐で美しい花組のトップ娘役として活躍されましたが、今も思い出の楽曲はありますか?

花乃 いっぱいありますけど、自分が一番エモーショナルな気持ちになる曲は、退団公演だった『金色の砂漠』の主題歌ですね。今もときどき、あのとき舞台で感じた気持ちを思い出すんです。私自身はこの曲を歌ってはいないのですが、影コーラスの3人が歌うのを聴いて、毎回感動していました。

——『金色の砂漠』の美しく誇り高い王女タハーミネ役は、花乃さんの代表作として、個人的にも忘れられません。演出は上田久美子先生でしたね。

花乃 あの役を演じられたこと、ああいう作品に出演できて、一度は舞台に立つことをやめてもいいと思うほどの満足感がありました。卒業した今でも、心の中のどこかで、あの作品を越えたいという思いで毎回の公演に挑んでいる部分があるんです。

『金色の砂漠』の舞台映像

幼い頃から美しい音楽を聴かせてくれたお父さん

——では、クラシック音楽でお好きな曲は?

花乃 チャイコフスキーの《くるみ割り人形》は、クリスマスになると父が必ず聴かせてくれたワクワクする音楽です。暗い曲調の楽曲も好きで、カッチーニの「アヴェ・マリア」を聴くと、悲しくて繊細な重厚感に、クラシック音楽ならではの厳かな良さを感じます。

チャイコフスキー《くるみ割り人形》、カッチーニ「アヴェ・マリア」

——お話をうかがうと、音楽面でお父さまの影響が大きいんですね。

花乃 そもそも自分がこういう仕事に就こうと思えたのも、父が昔から美しい音楽を聴かせてくれたからだと思うんです。父には、子どもの頃からすごく影響を受けましたし、家にはいつもレコードやCDがあふれかえっていました(笑)。

宝塚時代も、ジャズを歌うときに、「この曲持ってる?」って父に聴くと、何枚もCDを出してきて、「これがいいよ」ってアドバイスをしてくれましたね。今では夫がそんな父に憧れて、二人で意見を交換できるほどジャズが好きになっています。

——楽を通して、家族の絆が深まっているんですね。花乃さんにとって音楽とはどんな存在でしょうか?

花乃 こんな言い方をすると壮大すぎるかもしれませんけど、音楽は人生そのものです。聴くのもそうだし、歌うのもそうです。歌については楽しいときばかりではなく、苦しいと思った時期もありました。でも、どんなときも音楽とともに生きてきました

——最後に、『8人の女たち』への抱負を一言お願いします。

花乃 世界中で愛されている作品を、宝塚のOGがストレートプレイで演じるのは新しい試みだと思います。宝塚時代を経て、一俳優として外の世界で輝いている先輩たちと共演するのは本当に楽しみですし、私自身もはりきって演じますので、ぜひご覧ください!

舞台『8人の女たち』
公演情報
舞台『8人の女たち』

日時: 2022年8月27日(土)~9月4日(日)/9月9日(金)~9月12日(月)

会場: サンシャイン劇場(東京)/梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ(大阪)

ライブ配信: 9月3日(土)17:00公演 (9月6日(火)までアーカイブ視聴可)

出演: 湖月わたる、水夏希、珠城りょう、夢咲ねね、蘭乃はな、花乃まりあ、真琴つばさ、久世星佳

取材・文
NAOMI YUMIYAMA
取材・文
NAOMI YUMIYAMA ライター、コラムニスト

大学卒業後、フランス留学を経て、『ELLE Japon(エル・ジャポン)』編集部に入社。 映画をメインに、カルチャー記事担当デスクとして勤務した後、2020年フリーに...

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