——ミュージカル『ニュージーズ』は、去年の5月に上演予定でしたが、コロナ鍋の影響で中止に。今年10月に改めて日本初上演されます。決まったときのお気持ちはいかがでしたか?
咲妃 志なかばでストップしてしまったので、先日、全員が集合したときは、みなさんの喜びが溢れて、よりエネルギーが蓄積された状態での再開になりました!
アラン・メンケンさんの楽曲も、この状況下に背中をおしてくれるような歌詞やメロディばかりで……。実際にお稽古で歌ったり、キャストさんが歌うのを聴くだけでワクワクして。ご覧になられるお客様も、元気になっていただけると思います。
——『美女と野獣』や『アラジン』などで知られるアラン・メンケンさんの美しい楽曲を、舞台で生で聴けることに期待が高まっていますね。『エリザベート』の小池修一郎さんによる演出も今から楽しみです。そして、若き新聞配達員(ニュージーズ)たちのリーダー、ジャック・ケリーを演じ、座長も務める京本大我さんはいかがですか?
咲妃 お稽古を再開したとき、彼がこの1年間、どれだけこの作品の再上演にむけて努力を積み重ねてきたのかを実感しました。歌唱力の向上はもちろん、ジャック・ケリーという役をすごく繊細に丁寧に演じられています。かなりの情熱でこの舞台に賭けている京本さんを見ながら、私も負けていられない、と思いました。
——名曲揃いの『ニュージーズ』で、とくに好きな楽曲はありますか?
咲妃 一番好きな曲は、ジャックが歌う「サンタフェ」です。この舞台のメインテーマともいえる楽曲で、メロディがジャックの心情にあわせて複雑に変化していき、最後は壮大に終わる曲です。京本さんは声の音色がとても豊かなので、すごく聴きごたえがあります。
『ニュージーズ』より「サンタフェ」
——ジャックの奮闘を支える、咲妃さんが演じるキャサリンについて教えてください。
咲妃 この時代にはめずらしく仕事をしている女性で、新聞記者です。彼女の信念や探求心には、演じるうえで学びが多いですね。実年齢よりは少々若い役ですが(笑)、フレッシュに演じさせていただきたいなと思っています。
——感情あふれる美しい歌声にファンが多い咲妃さんですが、宝塚を退団後も、『GHOST』などのミュージカルで歌われています。現在、歌ううえで大事にされていることは?
咲妃 冷静さですね。最近、役の心情だけを考えて歌うのではなく、作詞家や作曲家が楽曲にこめた想いを表現することが大切だと改めて感じました。普段のボイストレーニングでも、気持ちメインではない歌い方を鍛えています。
『GHOST』のPV
——美しい歌声にまた新たな魅力が加わりそうです。歌と言えば、京本さんとのロマンティックなデュエット曲もあります。「ホール・ニュー・ワールド」など、アラン・メンケンさんのデュエット曲はどれも名曲なので、今から楽しみです。
咲妃 「サムシング・トゥ・ビリーブ・イン」という曲で、今回、初めて日本語の歌詞がつき、世界観がより明瞭になった気がします。いわゆるラブソングですが、恋人たちがストレートに気持ちを伝えるというよりは、心が通じ合っているのを遠回しに表現する感じというか……(笑)。
少しじれったい感じがこのデュエットソングの魅力の一つですので、劇場でぜひご覧いただけたらと思います。
『ニュージーズ』より「サムシング・トゥ・ビリーブ・イン」
——次に、咲妃さんご自身の音楽とのかかわりや好きな楽曲について聞かせてください。音楽を好きになったのはいつ頃ですか?
咲妃 私の両親は音楽が好きで、生活の中でさまざまなジャンルの音楽が流れていていたんです。私も物心がついたときから歌っていました。母はカーペンターズが好きで、父は中島みゆきさんのファンでした。私も合っているはずのない英語で歌ったり、意味もわからず中島さんの歌を熱唱していた記憶があります(笑)。
——普段はどんな曲をお聴きになりますか?
咲妃 いろんなジャンルを聴いています。ディズニーの曲はすべて好きですね。
——気分別にお気に入りの曲があれば、おしえてください。
咲妃 元気を出したいときは、テイラー・スイフトさんの「シェイク・イット・アウト」をよく聴きます。
咲妃 リラックスしたいときは、久石譲さんのオーケストラの曲を集めたCDを聴くことが多いです。それを流しながら作業するとはかどるんですよ!
“伊右衛門”のCMの曲とか、「サマー」が好きですね
——宝塚時代は雪組トップ娘役として、数々の名舞台で感動を残してこられましたが、今も思い出の楽曲はありますか?
咲妃 私自身は在団中に歌ったことはないのですが、「明日へのエナジー」です!
まだ宝塚音楽学校生だったころ、朝のおそうじ時間に、上級生の方がこの歌を教室に流したんです。聴いた途端に、「なんだ、この素敵な音楽は!?」と、すごく感激したことを今も覚えています。宝塚では珍しいゴスペル調の楽曲で、今も大好きな歌です。
コロナ禍で綺華れいさんが作成した宝塚歌劇団OG有志による「明日へのエナジー」
——聴くだけで勇気が湧いてくる、永遠の名曲ですね。クラシック音楽でお好きな曲があれば教えてください。
咲妃 ラヴェルの《ボレロ》が好きです。中学生のとき、宮崎でオーケストラのコンサートがあり、母が絶対に私を連れて行きたいとチケットをとってくれて。そのコンサートの最後に演奏されたのがこの曲でした。
小さく始まって最後はすごくダイナミックに終わるという構成も素敵で。こういう音楽は聴いたことがなかったので大感動しました。メロディは一貫しているのに、だんだん雰囲気が変わるところも、聴きながらワクワクしました
ラヴェル:《ボレロ》
——お話をうかがって、いろいろな音楽を楽しまれていることが伝わってきました。咲妃さんにとって音楽とはどんな存在でしょうか?
咲妃 音楽は、癒しです。静かな曲でも激しい曲でも!
——最後に、舞台への意気込みを一言お願いします。
咲妃 歌、芝居、踊り、あらゆるエンターテインメントを一気に楽しめるのがミュージカルの魅力だと思います。『ニュージーズ』も、日常から非日常に、いっきにお客様をいざなえる舞台です。歌以外でも、若いニュージーズたちの踊りは、もう体力の限界では? と思うほどの激しさで、鳥肌が立つほど感動的です。彼らのほとばしるエネルギーをぜひ劇場でご覧ください!