——前回に続いてドン・ジュアンを演じる藤ヶ谷大輔さんはどんな方ですか?
真彩 役作りや芸事に対してすごく真摯に向き合われる方。一言でいうなら“ジェントルマン”です。舞台にはラブシーンもあるのですが、すごくいい距離感で接してくださる。フランクな人柄なので、まわりに気をつかわせない空気を自然と作れるところが本当に素敵だなと思いますね。ご一緒していてお稽古がとても楽しいです。
——演じるマリアは、それまで悪徳の限りを尽くしてきたドン・ジュアンの人生を変える運命の女性。彼女はどんなキャラクターだと思いますか?
真彩 言葉で表現するのは大変難しいですが、現状に満足せず、自分が本当は何をしたいのか、心の中の自分と向き合い、答えを常に求めているような人。そして、猪突猛進な部分もあります。瞳の中がキラキラと輝いてる女性だとイメージしています!
——初演の宝塚版や2年前のバージョンと変わってくるところはあるのでしょうか?
真彩 そうなんです。2人の愛の描かれ方も、歌やセリフなども変わりましたね。でも色々な解釈ができる作品だなと改めて思い、稽古場で演じていてとても楽しいです!愛だけではなく、人と人との関わりも色々な形があるなと感じます。
——歌のほうはいかがですか? 真彩さんの天使のような歌声には、いつも感動しています。ドン・ジュアンとのデュエット曲もありますよね。
真彩 ありがとうございます。デュエット曲は藤ヶ谷さんの声が優しくまろやかなので、心地いいです。一緒に歌うことで音楽の楽しさに触れ、心が通じ合い、いい相乗効果がでればと思っています。自分自身のソロ曲にも、歌詞の変更と曲やフレーズの追加があるので、歌でどこまで表現できるか改めて挑戦しようと取り組んでいます。
——物語も歌も変わって、新たな『ドン・ジュアン』が誕生する予感がします。
真彩 そうですね。もしかすると「『ドン・ジュアン』はこういう作品だ」と思って観に来られると、この曲ってこうだったっけ? とか、この人はこんな性格だったかしら? ということになるかもしれません(笑)。私自身も退団後初のミュージカルで新たに一歩踏み出す気持ちです! ぜひみなさまもまったく新しいものを観に行く気持ちでご覧ください!
——次に、真彩さんの音楽とのかかわりや好きな楽曲について。音楽を好きになったのはいつ頃ですか?
真彩 両親がグリークラブで出会って結婚したので、生まれたときから音楽は身近な存在でした。サラ・ブライトマンやフランク・シナトラ、美空ひばりなど、さまざまなジャンルの曲を聴いていました。誕生日になると、家族がそれぞれのパートに分かれて合唱したり。よく母は、シャルロット・チャーチなど『天使の歌声』といわれる女性のボーカリストの歌声を集めたCDを聴かせてくれました。
シャルロット・チャーチ『天使の歌声』
——歌うことが日常に溶け込んでいたんですね。
真彩 そうですね。ただ、歌については「聴くのが楽しい」というよりは、「どうやったら歌えるか」を考えるのが楽しかったです。とにかく“ものまね”をするのが好きで。オペラやクラシック、ジャズも聴いて、人間の声だけでなく楽器の音をまねしたり。いっときダフト・パンクにハマったときは、機械音はどうやったらものまねできるんだろう?と真剣に考えました(笑)。
——機械音をまねるとはすごい! 幼少期は地域の子どもミュージカルに参加されて、去年まで宝塚歌劇団で活躍。子ども時代の環境が影響を与えていますね。
真彩 そうですね! 音楽と出逢わせてくれた家族に本当に感謝しています。
——現在、日常でよく聴いている曲はありますか?
真彩 藤井風さんが大好きです。子どもの頃、Jポップはまったく聴かなかったんですが、以前からYouTubeで拝見して素晴らしい人だなと。CDデビューしたとき、彼が音楽を通して世の中に伝えたいことや、一緒に乗り越えていこうというメッセージに大変共感しまして。あとは、Jポップでは宇多田ヒカルさんも大好きです。
——宝塚時代の曲で、思い出の楽曲はありますか?
真彩 たくさんあります! 宝塚時代も、音楽を一番大切に思って舞台に取り組んでいましたので。フランク・ワイルドホーンさん(「スカーレット・ピンパーネル」などで知られる世界的な作曲家)が作ってくれた『ひかりふる路(みち)~革命家、マクシミリアン・ロベスピエール~』の楽曲は、トップ娘役のお披露目公演だったこともあり、心に残っていますね。この作品の曲はどれも好きでした。
雪組公演『ひかりふる路(みち) 〜革命家、マクシミリアン・ロベスピエール〜』 『SUPER VOYAGER!』制作発表会 パフォーマンス
真彩さんが歌う「今」は2曲目。フランク・ワイルドホーンがピアノを弾いています。
真彩 あと、退団公演でラップに挑戦したことは印象に残りました。これを歌わせてもらえるんだ! と(笑)。
——クラシック音楽で、お好きな曲があればぜひ教えてください。
真彩 何でも聴きますが、特にピアノやヴァイオリン曲が好きです。ラヴェルの《水の戯れ》や《亡き王女のためのパヴァーヌ》。あとは、バレエ音楽も大好きで、プロコフィエフの《シンデレラ》、ニジンスキーが踊った《シェエラザード》など。もしかすると古典音楽より現代音楽に近いものが好きなのかもしれません。聴いていて、いろんなことを想像するのが楽しいんですよ。ここの音は女の子が遊んでるのかなとか、水がきれいなことを表現してるのかなとか。
——クラシック音楽はどんなときに聴きますか?
真彩 心を穏やかにしたいときや、静かになりたいとき。朝起きると頭に音楽が浮かんでくるんです。
——最後に、真彩さんにとって、音楽ってどんな存在ですか?
真彩 私にとって、音楽は人間が言葉で伝えたいことが溢れたときに出てくるものなのかなと思っています。人間が本来求めているものですね。自分自身も、伝えたいという気持ちが溢れると歌いたくなるし、その世界に入りたくなる。音楽は私にとってなくてはならないものです。
大阪公演
日時: 2021年10月7日(木)~10月17日(日)
会場: 梅田芸術劇場 メインホール
東京公演
日時: 2021年10月21日(木)~11月6日(土)
会場: TBS赤坂ACTシアター
出演: 藤ヶ谷太輔/真彩希帆/平間壮一、上口耕平、天翔愛/吉野圭吾、上野水香(東京バレエ団)、春野寿美礼/見辰吾、ほか
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