ブレードランナーLIVEでヴァンゲリスの「感情のボタンを押してくれる」音楽を堪能
ステージの上方に大スクリーンを設置して映画を全編上映、それに合わせてステージ上で音楽を生演奏する「シネマ・コンサート」に、1982年公開以来、伝説的な名作として人気を誇るリドリー・スコット監督『ブレードランナー』が登場! ヴァンゲリスが生み出したシンセサイザー・サウンドも、その伝説に一役買っています。よしひろまさみちさんが、そんな『ブレラン』と音楽の魅力を解説してくれました。
音楽誌、女性誌、情報誌などの編集部を経てフリーに。『sweet』『otona MUSE』で編集・執筆のほか、『SPA!』『oz magazine』など連載多数。日本テ...
映画ファンのみならず、現代音楽やポストクラシックのファンにも待望の『ブレードランナーLIVEファイナル・カット版』。巨匠リドリー・スコット監督の出世作であり、SF映画の傑作と呼ばれる『ブレードランナー』。その公開25周年(2007年)を記念して監督自身によって編集されたファイナル・カット版にあわせ、ヴァンゲリスのスコア生演奏を聴けるという貴重なチャンス。
世界初演となったロンドンで体験した前島秀国氏のレポートを読んでいただければわかることだが、オープニングからエンドロールまで、他のどんな上映バージョンにもまさる興奮を味わうことになる。
失敗かと思われた作品の伝説化に一役買ったヴァンゲリスの音楽
そもそも『ブレードランナー』は、1982年の公開直後は、興行的に「失敗」とみなされた作品。なにせ『E.T.』と同時期の公開に加え、SFといえば『スター・ウォーズ』シリーズに代表されるドンパチアクションが期待されていただけに、抽象的かつ退廃的な本作は大衆受けが悪かったのだ。
だがしかし、これが一番館と呼ばれた封切り館から二番館、三番館(名画座)に上映規模を落としていくたびに、映画ファンのリピート鑑賞が目立つように。また、公開から数年後に訪れたレンタルビデオ黎明期に驚異的セールスを記録。何度も観ることで、より一層深みにはまる、今で言う「沼」落ちした映画ファンを続出させ、本作がSF映画の金字塔となったのだ。
その一方で、この作品を伝説化させたのはヴァンゲリスのスコアにもある。公開当時から評価の高かったスコアだが、サントラの商標クレジットがエンドロールにあったにも関わらず、ヴァンゲリス自身の意向によりサントラが発売されなかったのだ。
それがどれほどファンの喉を乾かせていたかというのは、当時の現象を思い出すと理解できる。本作のための書き下ろしではなかった「メモリーズ・オブ・グリーン」収録のアルバム『流氷原』や、
82年リリースのカバーアルバムがバカ売れしてしまったばかりか、それらがあらゆるところでBGMとして使われたほどだったのだ。
おまけにそれまで彼のオリジナルアルバムはあったものの、サントラは彼の名を世界に知らしめた作品でもある『炎のランナー』だけ。
関連する記事
-
ウィーン・フィル×ムーティの「第九」200周年記念公演が映画に!
-
「ポーランド映画祭2024」でショパン・コンクールのドキュメントが日本初上映
-
ゴジラ生誕70年&伊福部昭生誕110年 いまこそ伊福部昭の音楽世界を堪能しよう!
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly