プロ用のモニターヘッドホンで 好きな音楽にどっぷり浸る
ヘッドホンは大きく分けて「音楽鑑賞用(リスニング用)」と「モニター用」に分かれます。実はプロが使うモニターヘッドホンには、初心者にも手が出しやすい価格帯のものがあるのです。今回は、その中からおすすめの3モデルを紹介。お気に入りのヘッドホンで、音楽と膝を突き合わせて向き合ってみませんか。
「音楽鑑賞用」のヘッドホンは、その名のとおり音楽を楽しむためのもの。心地よさや聴き疲れのしにくさが特徴です。
一方「モニター用」はスタジオなどで使われるのが前提です。音の正確さ、ボーカルや楽器が耳元で鳴っているような近さが求められます。その反面、くっきりとした解像度の高い音は、耳には少し刺激的かもしれません。長く聴いていると疲れることもしばしば。でもいつも聴いている音楽も、モニターヘッドホンで聴くとちょっと違って聴こえるから不思議です。
プロ用のモニターヘッドホンが一般ユーザーにも広まる
モニターヘッドホンは、放送局や録音スタジオで使われているプロ用のヘッドホンです。最近ではDTMやネット配信を行なう人が増え、モニターヘッドホンは一部のプロのものではなくなった印象があります。
70年代まで日本の録音スタジオはエレガ(藤木電器製)など、人の声がよく聴こえるヘッドホンが使われていたといいます。しかしオーディオの発達などで、音楽にもダイナミックレンジの広さや高音質が追求されてきて、さらにCDを始めとしたデジタル録音の時代になると、こうしたレンジの狭いモニターヘッドホンでは役不足になってきます。
そこでソニーが自社のスタジオで使うために開発したモニターヘッドホンがMDR-CD900CBSでした。1988年頃のことです。CD900CBSはもともと自社のスタジオで使うためだけに作られたので市販されなかったのですが、スタジオを使ったアーティストからの要望で市販されるようになったといいます。この市販モデルがMDR-CD900ST。現在でもモニターヘッドホンの代表的な存在として販売され続けています。テレビでアーティストの収録シーンなどが映ると、十中八九このヘッドホンを使っています。
ただ、このCD900ST、自宅で使うには若干使いにくい部分もあります。まず長いストレートコード。2.5mもあるストレートコードの先は標準プラグという太いプラグで、アダプターを使わないとポータブルオーディオの3.5mmのミニ・ジャックには使えません。
またプロ機材なので製品保証も付いてません。価格は1万5,000~2万円くらいなので、それほど高くないのですが、音も本格的なモニターの音。初めてのヘッドホンとしてはちょっと敷居が高いかもしれません。
ですが先に述べたとおりユーザーの幅が広がったモニターヘッドホンは、製品ラインナップも大きく広がりました。そのため手が届きやすい価格帯のものや、モニターとリスニングの中間のようなモデルも多く誕生しました。
そこで今回は、初めてのモニターヘッドホンとしてオススメのモデルを紹介しようと思います。
抜けの良い音で、爽やか!~AKG K240 Studio-Y3
AKGはオーストリアの老舗ブランド(1947年設立)です。少し前にアニメの登場人物がAKGのヘッドホンを使っていたことから、アニメファンの間でAKGの上級モデルK701が大ヒット。そのため、逆に生粋のオーディオマニアからは「流行り物」的な目で見られることも多かったのです。もっともそのアニメの人気も一段落し、いまでは平常心(?)で使えるブランドに戻ったように感じます。
さてこのK240シリーズは、AKGの中でもエントリークラスのものです。とはいえ本格的なモニターヘッドホンとして使うユーザーのために、3mと長めのストレートケーブルになっています。プラグはミニプラグで、付属のアダプターで標準プラグにも対応。ケーブルは交換可能です。
モニターヘッドホンには音漏れが少ない密閉式というタイプのものも多いのですが、このK240シリーズはセミオープンというタイプで、音漏れは多少あります。その代わり抜けの良い音で、爽やか! 明るくてレンジの広い音は、とてもバランスが良くずっと聴いていられます。
また230gとモニターヘッドホンとしては標準的な重さですが、実際はとても軽く感じるうえ、着け心地も良くオススメです。実勢価格も8,000円以下と初めてのヘッドホンにはぴったりでしょう。なお型番の最後のY3は3年保証の意味で、そうした面でも安心して使えますね。
何よりカッコいい!~ゼンハイザー HD400S
ゼンハイザーはドイツのヘッドホンメーカーで、1945年に設立されました。ヘッドホンといえばゼンハイザーというマニアも多いブランドですが、全体的に高い製品に人気があります。
HD414やHD25など傑作モデル、定番モデルも多いのですが、今回オススメするのはHD400Sというモデル。じつは本格的なモニターヘッドホンではありません。
ただゼンハイザーはマニアやプロが好んで使うブランドですから、もちろん製品の信頼性は高いですし、何よりカッコいい! ヘッドホンはスタイルもステータスも必要なのです。
実際にこのHD400Sを聴くと、意外と本来のモニターヘッドホンに近い音がします。たとえばアシダヴォックス(日本の老舗ヘッドホンメーカー)のヘッドホンが少し前に流行りましたが、AKGの明るく抜けの良い音に比べると、むしろアシダヴォックスに音は近いかもしれません。中域から低域が厚い感じで、優しい音がします。
装着感は快適のひとこと。見た目に比べ軽い(217g)ということもあるのでしょうが、イヤーパッドの形状や感触が素晴らしい。
なお本格的なモニターヘッドホンではないので、ケーブルは1.4mと短めだしプラグはL型。ケーブルの途中にオンオフスイッチまで付いていて、スマホで使うには最適です。実売価格1万円弱くらいです。
折りたたんで持ち運べる~ソニー MDR-7506
日本のモニターヘッドホンの元祖にして代表といえるMDR-CD900STについては先に書きましたが、長いストレートケーブルや標準プラグオンリーなど、普段使いにはちょっと……という点も多いのは事実。また音もひとことで言うと鋭く、硬いです。とはいえ、頑丈な作りで補修パーツも入手しやすかったり、なにより軽く、抜群の装着感は何にも代えがたい……。そこでオススメなのがMDR-7506です。
MDR-7506は、海外でモニターとして使われることもある、と言われていますが、海外のスタジオに行ったことがないのでわかりません。ただ、音はモニターとリスニングの間、ややモニター寄り、といったところでしょうか。
見た目はMDR-CD900STの赤いラインが青くなっただけ。ただしケーブルは1.2mのカールコードに変更され、プラグも本体はミニプラグで付属のアダプターで標準プラグにも対応します。
また持ち運びがしやすいように折りたたんで小さくなるうえに、キャリングポーチまで付属しています。もちろんCD900STの優れた装着感はそのままです(少しだけ重くなっていますが……)。
そして音。CD900STの正確さや細かい音まで出すところは踏襲しつつ、尖ったところは若干ソフトにしつつ、本当に少しですが味付けがあります。このあたりはリスニングモデルに寄った、と言ってよいでしょう。
でもCD900STの「耳元で歌っている感じ」はそのまま。一度聴き始めると、ついつい時間を忘れて次の曲、あと1曲……と聴き入ってしまいます。こちらはCD900STよりもかなり安く、1万円前後で買えると思います。
頭や耳の形、好みの音は人それぞれ。購入前にぜひ試聴を
今回、私のおすすめモデルを3つあげましたが、ヘッドホンはぜひその音、装着感を試して買っていただきたいです。もしお近くに販売店があったら、最終的に安いネットショップで買うとしても、試聴してみることを強くオススメします。
頭や耳の形は人によって違いますし、好みの音もそれぞれ。後悔しないためにも試聴しましょう! もしかしたら、もっと自分にぴったりなモデルが見つかるかもしれませんよ。
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