太陽の光を浴び、羽根が回転するガラス細工を眺めながら、マーラーの歌を聴く
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
この小さなガラスの球体、なんだかわかりますか?
リヒトミューレといいます。太陽の光を浴びると、球体の中の黒く塗られた羽根がくるくると回るガラス工芸品です。一つひとつが職人さんのハンドメイド。なので、それぞれ、羽根の回る速度が異なるのです。
私はこの小さなコと、木更津にある「金田屋リヒトミューレ」という、とても瀟洒なお店で出会い、連れて帰ってきました。お店にはいくつものリヒトミューレがあったので、一つひとつの羽根の回転をじっと眺めて自分ともっとも“相性が良い”ような、“呼吸が合う”感じのするコを選んで買ってきました。
よく晴れた日は、真っ直ぐに射し込む太陽の光を受けて、ガラスの球体は元気いっぱいに輝き、羽根は勢いよくクルクル回ります。曇り空の日は、球体は柔らかく光り、羽根はゆったりと、深呼吸するように回ります。雨の日はどちらも、ただただ、じっとしています。
仕事の合間に、そんなリヒトミューレをそっと眺める時間は、どこか音楽に耳を澄ますひとときに似ています。
演奏は、同じ曲であっても、奏者一人ひとりが音楽に感じる間合い、色合い、輝き、呼吸感によって、一つとして同じ演奏はありません。同じ奏者でも演奏するたびに、少しずつ変化するものです。
そんなことを思いながら、今日は光、それも柔らかな光をイメージさせてくれる、マーラーの交響曲第2番「復活」の第4楽章「原光」を選びました。
マーラー自身の歌曲集「子供の不思議な角笛」の『原光』に基づく楽章で、アルトの独唱がゆったりと「神は私に光を与えて、祝福された生命を照らしてくれる」と歌います。オルガンと声楽のための素敵なバージョンを選びました。
6月は雨模様も多くなる月ですが、太陽の光を慈しみながら、夏に向かう日々を過ごしたいですね。
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