
読みもの
2021.12.09
飯田有抄のフォトエッセイ「暮らしのスキマに」 File.89
窓辺の灯りに、美しくも悲しいラングの「マッチ売りの少女の受難」を想う


飯田有抄 クラシック音楽ファシリテーター
1974年生まれ。東京藝術大学音楽学部楽理科卒業、同大学院修士課程修了。Maqcuqrie University(シドニー)通訳翻訳修士課程修了。2008年よりクラシ...
師走も中旬に突入。なんだか忙しいですよね。私も深夜までなんだかんだと書き物をしてしまうことがあります。
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寝静まった夜道を帰るとき、冬はどうも寂しいですが、クリスマスシーズンはきれいに飾り付けをしているお家のライトが温かく灯っていて、ほっとするものです。
窓辺にちょっと。そんなイルミネーションがまた素敵だったりします。でも、あまりに暖かく幸せそうなお部屋を外からみると、幼いころに読んだ「マッチ売りの少女」気分になってしまう(笑)。
なんて考えていたら、「マッチ売りの少女」をテーマにした作品があったなぁと思い出しました。アメリカの作曲家デイヴィッド・ラング(1957〜)の《マッチ売りの少女の受難曲》です。2008年のピュリツァー賞音楽部門賞受賞作品だそうです。
声楽アンサンブルと、歌い手自身が奏でる打楽器のみで構成される作品で、私たちのよく知るあの物語を、独特の静謐な音楽で「受難曲」として描き出します。透明感にあふれ、冷たい空気と痛みすら感じられます。あまりにも悲しすぎるかもしれませんが、とても美しい作品なので、ぜひ。
それにしても、あらためて「マッチ売りの少女」のお話を考えてみたら、なんだかもう救いのない、必要以上に(?)悲しい物語ですよね。ひどい。アンデルセンはあれで何がいいたかったのでしょうか。当時の社会批判なんでしょうか。
ちなみに、私がラングを始めて知ったのは、「愛は強いから for love is strong」という声楽作品でした。同じアルバムに入っていますので、そちらもよろしかったら、ぜひ。
飯田有抄のフォトエッセイ「暮らしのスキマに」

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