ブラームスを知るための25のキーワード〜その15:弟子
毎週金曜更新! 25のキーワードからブラームスについて深く知る連載。
ONTOMO MOOK『ヨハネス・ブラームス 生涯、作品とその真髄』から、平野昭、樋口隆一両氏による「ブラームスミニ事典」をお届けします。どんなキーワードが出てくるのか、お楽しみに。
1946年生まれ。慶應義塾大学大学院博士課程在学中にDAAD奨学生としてドイツ留学。シュトゥットガルト聖母マリア教会代理合唱長。『新バッハ全集』I/34の校訂によりテ...
的確な言葉で作品を批評するすばらしい教育的才能の持ち主
ブラームスの弟子としてはグスタフ・ウヴェ・イェンナー(1865~1920)のみがあげられよう。他に、ヘルツォーゲンベルクの弟子であったハインリッヒ・ロイス侯爵も、時折ブラームスの指導を受けることができた数少ない音楽家に教えられる。
ブラームスの弟子が少ないことの原因を、ガイリンガーは、彼の音楽の歴史的位置と関連づけて解釈している。つまり、ブラームスの音楽は、過去500年の音楽の総決算であり、ひとつの終点と考えられる。多くの若い音楽家は、そうしたブラームスよりは、むしろ音楽の革新派、つまりワーグナーを中心とした「新ドイツ楽派」のもとに集まったというのである。
師としてのブラームスは、初対面のイェンナーに対して、「まず対位法を厳しく教えてくれる人をさがしなさい。村の老カントルがいちばんよい」などと言って突き放している。1887年、ライプツィヒでのことである。キール出身の若い音楽家は、自作品を徹底的に批判された後でのこの忠告に、肩を落としたにちがいない。
イェンナーは、その後ハンブルクでチャイコフスキーに会い同様の忠告を求めている。美青年のイェンナーに興味を示し、ペテルスブルクに来いとまでいってくれたチャイコフスキーだが、イェンナーはその意見を快しとせず、むしろ厳しいブラームスのもとで指導をあおぐ決心をするのである。
ブラームスの作曲指導について述べているロイス侯爵の証言によると、ブラームスは、つねに的確な言葉で作品を批評することのできる、すばらしい教育的才能の持ち主であったという。彼はつねにモーツァルトやシューベルトをひきあいに出し、まず作品を全体として構想し、細部にこだわってはいけないと忠告し、またベートーヴェンを例に、流麗な創造力を身につけるために変奏曲を多く書くことをすすめたという。
第2章 ブラームスの生涯
第3章 ブラームスの演奏法&ディスク
今回紹介した「ブラームスミニ事典」筆者・平野昭と樋口隆一による「1853年の交友にみるブラームスの人間性」、「ブラームスの交友録」、「ブラームスを育んだ作曲家たち」、「ブラームスの書簡集」をはじめ、多岐にわたる内容を収録!
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