ブラームスを知るための25のキーワード〜その4:読書
毎週金曜更新! 25のキーワードからブラームスについて深く知る連載。
ONTOMO MOOK『ヨハネス・ブラームス 生涯、作品とその真髄』から、平野昭、樋口隆一両氏による「ブラームスミニ事典」をお届けします。どんなキーワードが出てくるのか、お楽しみに。
1949年、横浜生まれ。武蔵野音楽大学大学院音楽学専攻終了。元慶應義塾大学文学部教授、静岡文化芸術大学名誉教授、沖縄県立芸術大学客員教授、桐朋学園大学特任教授。古典派...
ブラームスは読書家
彼が大変な読書家であったことは、あまり知られていないようだが、彼の知識欲は非常に旺盛で、そうした性格が多方面にわたる知識人との交友関係にもあらわれている。
そうした性格というか意欲は、小・中学生時代からみられたもので、例えば、わずかばかりの小使い銭は、常に有料貸出図書館で 本を借りるために費やされていた。10代のとき、ブラームスはパブやレストランでピアノ弾きのアルバイトをしていたが、そんな時、彼の譜面台には必 ずといってよいほど、1冊の本が置いてあったという。夢中で読書をしている間、指は知り尽した曲を機械的に奏でていたわけだ。
ところで、ブラームスの蔵書を見てみると、まずその読書幅の広さに驚かされる。この項では音楽関係の楽譜、理論書、歴史書、評論等を挙げる余裕はない。文学書も作品名までは挙げら れないので、主な作家名を列挙しておくにとどめる。詩人としてはアイヒェンドルフ、アルニム、ノヴァリス、ヘルダーリン、メーリケ、そして特に彼の気に入りのJ. P. リヒターとE. T. A. ホフマン。また、ドイツ、イギリス、 スコットランド、デンマーク等の民俗詩集をもコレクションしている。次に、純文学ではヘルダー、レッシング、ゲーテ、シラー等のいわゆる疾風怒涛期(シュトゥルム・ウント・ドランク)の作品が多く見られる。
古典文学にも興味をもっていたらしく、原語ではなくドイツ語訳ではあるが、アイスキュロス、アプレイウス、 カトゥルス、ヘロドトス、ホメロス、 プロータス、プルーターク、ソフォクレスなど。中世文学でもボッカッチョ、 セルヴァンテス、ダンテ、ゴッツィ、 アリオストなど。さらにフランス喜劇作家モリエール、英国ものではシェイクスピア、バイロン、エマーソン、トーマス・モア、その他の蔵書。
歴史書や政治書にまで及ぶブラームスの知識欲
ブラームス蔵書中で特に興味をひくのは、しかしながら、前掲の文学書よりも、歴史書や政治書であろう。特に文化史と芸術史に強い関心をもっていた。グリムの『ミケランジェロの生涯』やブルクハルトの『ルネサンス文化』や『キケロ』、さらにリュプケの『建築史』や『フランス・ルネサンス史』、そしてヴェルフリンの『ルネサンス・バロック』など。
政治関係ではビスマルクの書簡が蔵書中に入っているのをはじめとして、当時出版されたばかりのフルーク・ハルトゥングの『1870年戦争に関する書』やトライチュケの『歴史的・政治的エッセー』、エクスナーの『政治について』等々。
この他にも、自然科学関係から風刺文学に至る、非常に多くの書物が所蔵されている。
第2章 ブラームスの生涯
第3章 ブラームスの演奏法&ディスク
今回紹介した「ブラームスミニ事典」筆者・平野昭と樋口隆一による「1853年の交友にみるブラームスの人間性」、「ブラームスの交友録」、「ブラームスを育んだ作曲家たち」、「ブラームスの書簡集」をはじめ、多岐にわたる内容を収録!
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