クラシック・シーンの“イケる”超エリートたち! フィルハーモニクスによる魅惑の凄腕アンサンブル
オーケストラ界の2大頂点、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団&ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団のメンバーと、その仲間たちによって構成されたフィルハーモニクス。最新アルバム『フィルハーモニクス VOL1 ボヘミアン・ラプソディ~イングリッシュマン・イン・ニューヨーク』を中心に、彼らの魅力を大解剖!
1969年徳島市生まれ。立教大学文学部日本文学科卒。音楽&映画まわりを中心としたよろずライター。インタビュー仕事が得意で守備範囲も広いが本人は海外エンタメ好き。@ba...
洗練された音楽と“みめ麗しい”メンバーを紹介!
2006年のウィーン・フィル来日公演に参加していたメンバーが、福岡で“しゃぶしゃぶ”を食べているときに交わされた会話を発端に、「他の室内楽グループとは違う、何か新しい方向性をもったアンサンブルを目指して」結成され、翌年ウィーンで活動を開始したという彼ら。
超絶テクニックをベースにさまざまなジャンルの音楽がもつエッセンスを融合させて新たな解釈で披露し、欧州を始め世界各地を席巻。2014年には日本でも『魅惑のダンス~私のお気に入り』と『オブリヴィオン~美しきロスマリン』という2枚のアルバムを名門ドイツ・グラモフォンからリリースし、来日コンサートも成功させて熱い反響を呼んだ。
あれから4年、名前も「PHILHARMONIX」と少しスッキリさせて新体制のメンバーになった彼らが、最新アルバム『フィルハーモニクス VOL1 ボヘミアン・ラプソディ~イングリッシュマン・イン・ニューヨーク』を携えてシーンに戻ってきた。
しかも、現在の顔ぶれはヴィジュアル的にもなかなかのイイ男揃い。ハイビジョン&Blu-rayの時代を迎え、テレビ画面にオーケストラ団員一人ひとりの動きが鮮明に映し出されるようになった昨今、お茶の間でコンサート映像を鑑賞していると、“みめ麗しい”演奏者の真剣な表情に思わず見とれてしまうことも少なくないのでは? フィルハーモニクスのメンバー7人の中にも、きっとあなた好みの“イケる=セクシーだと思う”プレイヤーが絶対いるはず!
……ではさっそく、彼らのプロフィールをのぞいてみよう(最新アルバムの中から、おすすめの曲も紹介)。
ノア・ベンディックス=バルグリー Noah Bendix-Balgley(1stヴァイオリン)
米国ノース・カロライナ州アシュヴィル生まれ。2009年のエリザベート王妃国際音楽コンクールでの入賞以来、さまざまなオーケストラでソリストとして活躍。ピッツバーグ交響楽団のコンサートマスターを経て、2014年よりベルリン・フィルの第1コンサートマスターを務めている。クレズマー音楽(東欧系ユダヤ人の民族音楽)の演奏も得意としているとか。
原曲はもちろん英国のロック・バンド、クイーンのヒット・ナンバー。ここではオリジナルのもつミステリアスな雰囲気を残しつつ、冒頭のバッハ/グノー風のテイストを始め、ロマ(ジプシー)風、アイリッシュ風、ファンダンゴ風……とさまざまな要素を加えて、実にフィルハーモニクスらしい狂詩曲(ラプソディ)に生まれ変わらせている。多彩な移民の国アメリカ出身のノアにはドンピシャかも。
セバスティアン・ギュルトラー Sebastian Gürtler (2ndヴァイオリン)
オーストリア生まれで曾祖母は日本人。1997年より2008年までウィーン・フォルクスオーパー交響楽団で第1コンサートマスターを務めたほか、室内楽にも注力。フィルハーモニクスでは積極的に編曲を担当し、時には渋い歌声も披露する。
R.シュトラウス《ばらの騎士》風の前奏曲で幕を開けると、アレンジャーでもある“歌うヴァイオリニスト”ことセバスティアンが大活躍。素朴なウィーン・フォークソング風メロディに乗せて、ヴァイオリン弾きの口上が哀愁たっぷりに語られる。国内盤には特別に日本語版で収録。
ティロ・フェヒナー Thilo Fechner(ヴィオラ)
ベルリンの音楽一家に生まれる。2004年よりウィーン国立歌劇場管弦楽団に入団し、同年ウィーン・フィルのメンバーとなった。創設当初からのメンバーのひとりでみんなのまとめ役。日本女性からも熱い視線を集めるトレードマークの赤いジャケットが眩しい「レッド・ヴィオリスト」。
スペイン語によるクリスマスの定番曲だが、今回のセバスティアン編曲で面白いのはそれぞれの楽器(ピアノ以外)の演奏の仕方。弦楽器は弓を使わずピッチカートで時に打楽器のようにしてパーカッシヴ演奏していると思いきや……ティロは何と! ぜひ、次回のライヴでステージをよく見てご確認を(ちなみにYouTubeでも確認できます)。
シュテファン・コンツ Stephan Koncz(チェロ)
ウィーン生まれ。ウィーン・フィルのメンバーだったが、2010年にベルリン・フィルへと移籍。「ベルリン・フィル12人のチェリストたち」のメンバーとしても活躍。編曲だけでなくオリジナル曲の作曲でも才能を発揮している。
シュテファンによるオリジナル曲。「テトリス」のBGMとしても有名なロシア民謡で幕開けしたかと思うと、チャイコフスキーのバレエ音楽《くるみ割り人形》の〈トレパック(ロシアの踊り)〉や同ヴァイオリン協奏曲の旋律などが次々と展開。最後にまた有名なバレエ曲の旋律がチラリと顔を出すのでお楽しみに!
エーデン・ラーツ Ödön Rácz(コントラバス)
ブタペストでハンガリーのフォルクローレを演奏する一族に生まれる。2004年にウィーン国立歌劇場管に入団し、2009年にウィーン・フィルの首席奏者に就任。驚くばかりの超絶技巧の持ち主。最古参メンバー。
まさにエーデンのためにあるような曲。今回のシュテファン編曲のポイントは、ブラームスがウィーン市民の憩いの場所であるプラーター公園でジプシー・バンドの演奏を聴いて魅了されている様子を夢想した、原点回帰ともいえるアレンジを目指したものだとか。
ダニエル・オッテンザマー Daniel Ottensamer(クラリネット)
ウィーン生まれ。2009年より父エルンスト(2017年に逝去)と同じ、ウィーン・フィルの首席奏者を務める。家は3歳下の弟アンドレアスもベルリン・フィルの首席というクラリネットの名門ファミリー。父と兄弟で結成したユニークなクラリネット・トリオ「ザ・クラリノッツ」としても活躍。2018年は兄弟デュオで来日している。
1930~40年代スウィング全盛時代に活躍したニューヨークに生まれのジャズ・クラリネット奏者、アーティ・ショウの作品がオリジナル。彼を敬愛しているダニエルもアレンジに参加。途中に出てくる猫の鳴き声みたいなのもカワイイ!
クリストフ・トラクスラー Christoph Traxler(ピアノ)
オーストリア生まれで、将来を嘱望されるソロ・ピアニスト。これまでにウィーン室内管弦楽団、シュターツカペレ・ハレなどで、マンフレート・ホーネックやラルフ・ワイケルトといった指揮者たちと演奏する機会に恵まれてきた。
旧メンバーでテレビ朝日系《題名のない音楽会》に出演したとき(2017年2月放送)にも番組内で披露され視聴者から大反響を呼んだ、スティングのヒット曲カヴァー。もともとはジャズっぽいナンバーだが、今回のアレンジでは南国ムードを醸し出しつつ、そこにバロックのテイストを加えるという彼ららしいやり方が素敵。ジャンルを超えて活躍する楽器、ピアノにはもってこいの楽曲かも。
……というわけで、こうして改めて眺めてみると、すごい経歴の持ち主たちというだけでなく、メンバーそれぞれがこのアンサンブルにとって唯一無二の存在であることがわかる。「音楽の歓び」という理念でひとつに結びつき、以前よりもさらにサウンドに磨きがかかってきた彼ら。2018年12月には新体制メンバーになって初めての来日公演もある! これからもフィルハーモニクスから目が離せない。
2018. 6. 20 ON SALE UCCG-1798 ¥2,778(税抜価格)+税
12/14(金)東京芸術劇場コンサートホール
問:ジャパンアーツぴあ 03-5774-3040
12/15(土)熊谷文化創造館さくらめいと(太陽のホール)
問:さくらめいとチケットセンター 048-532-9090
12/16(日)大和市文化創造拠点 シリウス 1階芸術文化ホール メインホール
問:やまと芸術文化ホール チケットデスク 046-263-3806
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