国内フルートメーカーがそれぞれ抱く情熱とこだわりを覗き見!
音色だけでなく見た目も美しい楽器「フルート」は、作り手によってさまざまな特徴が表れます。世界でもトップシェアを誇る国内メーカーは、それぞれどんなこだわりを持っているのでしょうか?
吹奏楽誌「バンドジャーナル」2022年3月号のフルート特集のために国内フルートメーカーを訪れたバンドジャーナル編集部の上林・神保、音楽ライター 小島綾野さんの3人が、取材のこぼれ話、感じたことを語ります♪
フルート製作の現場で感じた“職人魂”
小島 今回の企画で、上林さんはムラマツフルート、神保さんはパールフルート、私はヤマハの工場をそれぞれ訪ねて、職人の方のお話からいろいろなこだわりを感じましたよね。
神保 パールフルートの工場長さんは「フルートの製作は、ロケットを飛ばすのと同じぐらい緻密な作業だ」とおっしゃっていました。クオリティの追求は際限がなく、職人さんが胸を張って出せないものは、完成後でも組み立て直したり、上手くいかなかったパーツは溶かして、もとの銀に戻したり……。でもそれは、失敗を重ねてこそ職人の成長もあり、妥協なきクオリティの楽器が作れるのだと感じました。
上林 ムラマツフルートで伺った製造部長さんのお話で印象深かったのは、「我々は芸術家ではなく職人だ。楽器を製作した先にはお客さんが待っている」というもの。それから「十人十色、フルートを吹くその人の音が出るように。口笛を吹くように、歌を歌うように音を奏でられる、そういう『道具』をつくっているんだ」という姿勢も、はっとさせられました。こういった物づくりへの精神は、技術とともに熟練の職人から若手に引き継がれているそうです。
小島 ヤマハの職長さんも「吹く人それぞれのなかに正解や理想があるので、我々作り手はそれを叶えるためのお手伝い、その一部になりたい」と仰っていました。特にヤマハでは、世界的なプレイヤーの方々が開発協力をされていて、工場を訪ねられることも多いそう。
なかでも、アンドラーシュ・アドリアンさん(ハンガリー出身の名フルーティスト)は職人さんたちに「よい響きがする楽器はもうできている。その響きのもう一歩向こう側の世界を作りたい。だからみんなで一歩踏み出そう」と。目標や夢を、プレイヤーと製作現場が共有しているんです。
神保 職人の方々には、いつも奏者のことが頭にあるんですね。そうして我々の手元に届くフルート。吹いていても気がつかなかった細かなパーツ製作なども拝見したら、楽器をもっと大切に扱って、よい音を奏でなければという気持ちになりました。
日々進化を遂げてきたフルートという楽器
神保 工場見学には行けなかったけれど、アルタスフルートも人気ですよね。
上林 監修されているのが、イギリスの巨匠ウィリアム・ベネット先生。先生に師事されたフルート奏者の方に聞いたのは、先生の耳は超人的ということ。他の人が聴いたら違和感のない音程でも、驚くほど的確に指摘されるそう。だから、アルタスフルートのスケールの安定感は奏者にとっても安心して吹けるのかも。
小島 音程が不安定な楽器だと、吹きながら自分で音程を調整しないといけない。でも、安定した楽器ならその労力が不要なぶん、音楽表現に没頭できますね。
神保 それから、ミヤザワフルート。フルート特集の取材で山野楽器 銀座店フルートサロンのスタッフの方が「華やかな音」が特長とおっしゃってました。最近「CRESTA(クレスタ)」という新シリーズが発売され、東京フィルハーモニー交響楽団のさかはし矢波先生が「迫力ある音が出しやすくて、聴き手に音楽をより訴えかけられる」などコメントされてました。
上林 新しいことに挑むという姿勢では、業界内で一目置かれているのが三響フルート。国際的なフルートフェスティバルなどでは「三響さん、今度はどんな新しいことをしたの?」とお声がかかるとか。例えば24Kゴールドの楽器を世界で初めて製作したのは同社で、金は含有量が上がるほど柔らかくなるから、当時は製品として完成させるのはとても大変だったと聞きました。
小島 フルートは歴史の長い楽器ですけど、そのなかで技術の壁を、奏者・メーカー・職人のみなさんの情熱で突破して、世の中にあるフルートがどんどん進化してきたんですね。
上林 音もですが、見た目も美しい楽器だと思います。各メーカーでいろいろな特徴があるので、まずは楽器店などで実際に手にして試奏してみてほしいです!
※ ※ ※
そのほか、フルート特集の詳しい内容はバンドジャーナル3月号で!
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