追悼フジコ・ヘミング~そのピアニズムを生んだ師弟関係と、人柄が偲ばれるエピソード
ピアニストのフジコ・ヘミングさんが2024年4月21日に逝去されました。
70歳代後半でピアニストとしての軌跡を描いたドキュメンタリー番組が大反響を巻き起こし、ファーストCDが異例の大ヒットを記録。以来国内外で多忙な演奏活動を展開し、生涯現役を貫かれました。
生前のフジコさんと交流のあった音楽評論家の道下京子さんが、そのピアニズムを大切な思い出とともに綴ります。
2019年夏、息子が10歳を過ぎたのを機に海外へ行くのを再開。 1969年東京都大田区に生まれ、自然豊かな広島県の世羅高原で育つ。子どもの頃、ひよこ(のちにニワトリ)...
2024年4月21日、ピアニストのフジコ・ヘミングさんは、92年の生涯を閉じた。
ピアニストとして世界中の舞台に立ち、90歳を超えてもなお演奏活動を続けていた彼女だったが、その名が広く知られるようになったのは、21世紀を迎える直前のことである。
恩師の言葉に導かれフジコさんと出会う
私がフジコさんと初めて会ったのは、2018年。きっかけは、私のことを学生時代から知っている音楽業界の方から受けた1本の電話である。その方は、私の室内楽(2台ピアノ)の師である作曲家、末吉保雄先生のことを話し始め、末吉先生が以前からフジコさんを知っていたこと、そして彼女の演奏について語っていたことを教えてくれた。残念ながら、2か月ほど後、末吉先生は逝去。しかし、そのとき聞いた先生の言葉が、のちのフジコさんに関する執筆へとつながっていく。
その年、私はフジコさんのリサイタルを地方のホールで聴いた。彼女の演奏をCDやテレビなどで聴く機会は何度もあったが、ライヴを聴くのはその時が初めてだった。
終演後、フジコさんの楽屋を訪れた際、彼女は耳の不調を語っていた。私が聴く限り、音の響きのバランスには何の違和感もなく、余剰な音の混濁もなかった。当時、すでに80歳代半ばであったが、年齢を感じさせない卓抜な指さばきで、ショパンのエチュードを見事に演奏した。彼女の音はよく鳴り響くが、がなり立てるような音ではない。また、彼女の演奏における脱力が、これほどの長い演奏活動を支えてくれたのであろう。
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