オーボエ自慢その1:歌声のような音色
アーティストが自分の楽器の魅力をとことん語る連載「My楽器偏愛リレー!」。各楽器につき、3つの自慢ポイントを紹介して、次の奏者にバトンを渡します。今回は、ギター奏者の鈴木大介さんよりバトンを受け取った吉井瑞穂さんによるオーボエ自慢です。
甘美な音色と豊かな音楽性で世界の聴衆を魅了する国際派オーボエ奏者。東京藝術大学入学後、渡独。カールスルーエ音楽大学を首席で卒業。日本音楽コンクール優勝のほか、イギリス...
初めてのオペラ鑑賞で歌声のようだと衝撃を受けて
実は、「オーボエ」という楽器を、始める前までまったく知らなかった。中学入学後、「新しく始める習いごと」として巡り巡ってオーボエ にたどり着き、気がついたときにはこの楽器が少しずつ、そして確実に好きになっていた自分。
音楽に触れるたびに、心がときめくのを感じたティーンネージャー期、偶然手にしたチラシのオペラ公演へ、お小遣いをはたき勇気をもって一人で足を運んでみた。ミラノ・スカラ座の来日公演で、カルロス・クライバー指揮の《ラ・ボエーム》が、私にとってオペラ初体験となった。
「指揮者が登場するだけで、なぜブラボーとこんなに大叫びするのだろう!?」という疑問は、あとになって解決するのだけれど。一瞬一瞬が目眩く世界観に包まれながら、不思議なことが起こる。誰が歌っているのかと、歌手の口をみても誰も歌っていない。「あれ? どうして?」と遠くのオーケストラ・ピットの方をオペラグラスでのぞき込んでみると、なんと「オーボエ 」が演奏されているではないか!
そう、「オーボエ」が「歌声 」だった。
プッチーニ:《ラ・ボエーム》
長年、エクサン・プロヴァンス音楽祭での数々のオペラ・プロダクションやクラウディオ・アバドとのさまざまなオペラ公演、ピエール・ブーレーズ最後のオペラ・プロダクションなど、貴重な機会をいただいてきた。その度に、舞台上の歌声と共に演奏しながら、まるで自分がプリマドンナになったかのように錯覚させてくれた、この楽器。
私にとって「オーボエ」は「自分の歌声そのもの」なのかもしれない。
オーボエの魅力を味わう作品
ベートーヴェン:《フィデリオ》より「フロレスタンのアリア」
クラウディオ・アバド(指揮)、ヨナス・カウフマン(テノール)
ルツェルン祝祭管、マーラー・チェンバー・オーケストラ(1stオーボエは吉井さん)
このオペラをイタリア、スペイン、エジンバラなど、ヨーロッパ各地で公演しました。この音源は、ルツェルン・フェスティバルでコンサート形式で上演されたときのライブ録音です。カウフマンさんが真後ろにいらっしゃって、歌声が真後ろから響いてきて、オペラ・プロダクションで舞台上から聴こえてくるのとはまた違った響きで、体中が震えました。本当に楽しかった!
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly
関連する記事
ランキング
- Daily
- Monthly