
ガウディ没後100年記念! サグラダ・ファミリアを全身で体感できる展覧会

没後100年を迎えた建築家アントニ・ガウディ。その名で思い浮かべるのは、いまなお建設が続くバルセロナのサグラダ・ファミリアではないでしょうか。日本にいながら、ガウディの建築思想を“体感”できる展覧会が現在開催中!
ガウディが何を見つめ、何を信じて建築を生み出してきたのか──ガウディの思考のプロセスに迫ります。

1959年北九州市生まれ。東京大学文学部美術史学科卒業。日経BP社の音楽・美術分野の記者、「日経アート」誌編集長、日本経済新聞美術担当記者等を経て、2012年から多摩...
東京・天王洲アイルの寺田倉庫 G1ビルで「ガウディ没後100年公式事業 NAKED meets ガウディ展」が開かれている。ガウディといえば、没後100年になるのに建設が続いているスペイン・バルセロナの教会サグラダ・ファミリアのメインタワー「イエスの塔」(高さ172.5メートル)が今年完成予定であることが大いに話題になっている。バルセロナはさぞかし混んでいるだろうなと思いつつ、やはり気になって仕方がない。

この企画展は、バルセロナに拠点を置くガウディ財団とNAKED(ネイキッド、本社:東京都渋谷区)が、共同事業契約を締結したことによって開催されるワールドツアーの一環という。NAKEDは、東京駅のプロジェクションマッピング等で知られるクリエイティブカンパニー。この展覧会でも展示手法が、絵画や彫刻を並べて展示する通常の美術展とは異なっており、「五感」を使った「体験」を主眼としている。本記事では、筆者が体感した展示の見どころを紹介したい。

鼓のような、あるいはトランペットのような構造物
会場を巡っていたら、2つの円盤の間にたくさんのロープを張った道具のようなものが台の上に置かれていた。和楽器の鼓(つづみ)に似ている。来場者は手で触って動かすことができる。右側の円盤を回すとロープがねじれて、本当に鼓のような形になった。

おそらく読者にも想像はついているのではないかと思うが、これは、ガウディの建築原理を体験するためにNAKEDが用意したツールだ。鼓のような形は、サグラダ・ファミリアの建物の中で実際に使われているという。中に入って天の方向を見上げると、その曲面が見える、あるいは、存在が感じられるはずだ。
実は、この前の章の展示では小麦やニンニク、糸杉など植物に由来する魅力的な造形についての解説や模型展示があったのだが、この鼓型はあり方が根本的に違う。ロープは張り詰めたままなので、円盤を回転させても基本的に直線のままだ。しかし、回すことによって生じる円柱のくびれには、自然に円ができる。手で確かめる幾何学とでも言うべきだろうか。ひたすら美しい。トランペットの音が出るラッパの部分に見られる曲面も同じとの解説があった。

力学的にも強度があるという。強度は建築にとって極めて重要な要素である。この少々自由な変化が鼓のような形の創造によって生まれるというのが実に興味深く、いかにもガウディらしいなと思う。改めて解説パネルを読んでみると、「ガウディの双曲面:直線で複雑な曲線を創造」と書かれていた。納得した。
自分の「放物面」をつくって建築体験!
「ガウディの工房」というエリアで、もう一つ極めて面白く感じた参加型のツールがあった。来場者がコンピューターを使って画面上で建物の絵を作る試みである。操作はもちろん簡単にできるように設定されている。トライしてわかるのは、建築物の通常の設計の仕方とはおそらくまったく異なるだろうということだ。まさにガウディ。それは一体、どんなものだったのか。
ガウディの基本はどうやら「放物面」にあるようだ。そんな言葉は聞いたことがないという人も多いだろう。実は筆者も初めて聞いた言葉だ。しかし、「放物線」なら知っているのではないか。その三次元版が「放物面」である。
ガウディは、紐とおもりを使って放物面を作る実験を繰り返したという。そこでできた放物面を上下反転させると、建築物の基となる構造体ができる。「逆さ吊り実験」と呼ばれている。本展では、来場者がコンピューターを使って画面上に構造体を作り、本物の建物のような質感もほどこすことで、「逆さ吊り実験」を介して一人ひとりが異なる建築作品を作る疑似体験ができる。筆者は、自分で作った「作品」に見惚れてしまった。しかし、それは筆者の能力というよりも、ガウディの原理が秀逸であるがゆえの賜物であることは明白だ。



人間には何が必要かを突き詰めた造形
建築家はしばしば家具を作る。ガウディもしかり。ガウディがデザインした椅子が展示室に複数置かれており、座ることができた。驚いた。あまりにも気持ちがいいのだ。ふかふかなどはしていない木製の椅子である。

ひょっとしたら、日本人とスペイン人は体格が近いのか? 来場していた知人とそんな話をした。その可能性がないとは言い切れないが、やはり人間工学的にすぐれているのだろう。有機的な印象ながら幾何学性を感じさせるのは、ガウディの造形たるゆえんだが、ここで得た推論は、ガウディが見た目の新奇性だけを追ったアーティストだったのではなく、むしろ何が人間にとって必要かということを突き詰めて、さまざまなものを創造してきたであろうことだ。
深い思考を促す言葉を紡いだガウディの手記
プロジェクションマッピングはNAKEDの真骨頂の一つだが、サグラダ・ファミリアの歴史を映像化した部屋を体験することには大いに意義があったし、会場の随所で展示されたオブジェの数々も、ガウディの本質を見るために役立つことは間違いない。

もう一つ、お伝えし忘れてはならないのは、ガウディの手記が公開されていることだ。

たとえば「装飾は“真実”であり、飾りではない」という言葉が解説パネルで紹介されていた。美術品と装飾品を区別して論じる傾向があった西洋美術史の研究者にとっては、おそらくハッとさせられる言葉なのではなかろうか。そしてこの言葉を知ることで、いきなりガウディが日本人にも身近に感じられるようになる。魔法の言葉である。
ほかにも「自然が原初の建築家である」「光と影という見えない素材」など、深い思考を促す言葉が多く記されている。言葉で、ガウディの凄みを改めて知った。
ラクガキスト小川敦生のラクガキ

「音楽は建築と同じ構築物である」という意見に同意していただける人は多いのではないかと思います。では、パブロ・デ・サラサーテが作曲したヴァイオリンの名曲「ツィゴイネルワイゼン」は、どんな構築物なのか? 旧作の絵があったので、引っ張り出してきました。少なくともガウディが使った放物面の基となる放物線のようなものの一部が存在し、物ならぬ人が放り上げられている! 建築と音楽のどちらの源にも、構築物ゆえの魅力があるというのは、なかなか興味深い事実なのではないでしょうか。
フェデリコ・モンポウ 静寂(しじま)の調べを求めて
椎名亮輔 著
アルベニス 生涯と作品
上原由記音 著/石田一志 監修
標準版ピアノ楽譜 スペイン ピアノ小品集 New Edition 解説付
川口成彦 解説・運指
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