タチアナ・シェバノワ没後10年〜ショパンコンクール第2位受賞のピアニスト
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
ピアニストのタチアナ・シェバノワさんが58歳の若さで他界されて、今年でもう10年がたちます。
シェバノワさんは、1953年モスクワに生まれ、モスクワ音楽院で学びました。1980年、ショパン国際ピアノコンクールで、ダン・タイ・ソンに続き第2位に入賞、ポロネーズ賞とコンチェルト賞も受賞しています。
タチアナ・シェバノワさん、その1stステージでの「即興曲 第3番 Op.51」の演奏
その後、ポーランド人ピアニストのヤロスラフ・ジェヴィエツキさんとご結婚されて、ポーランド国籍を取得し、ポーランドに暮らしていました。
彼女について考えるとき、いつも思い出すのは、息子さんである当時18歳のスタニスワフ・ジェヴィエツキさんが、2005年のショパンコンクールに出場されていたことです。両親ともピアニストというサラブレッド、しかも母は過去の上位入賞者。容姿もさわやかで、地元ポーランドの出場者として、とても期待されている感じがありました。
しかし、コンクールとはわからないもので、彼は1次予選で姿を消してしまったのです。他にもポーランド人の出場者はたくさんいましたが、なんだか彼の存在がとても気になりました。
その後、お母さまであるタチアナ・シェバノワさんのこの録音をたまたま入手し、聴く機会がありました。
ショパン研究所が出している、ショパンの時代の楽器で録音された、「The Real Chopin」シリーズ。2007年の録音で、1849年製のエラールが使われています。シェバノワさんが他界されたのは2011年ですから、その4年前の作品ということになります。
ここに収められたワルツの、香り高い音、気品あふれる表現。ショパンのワルツならではのエレガントな魅力が際立っています。
現代ピアノのピチピチとした音に慣れていると、ピリオド楽器による演奏というのは、ときにカサカサめの音のように感じられることもあったりします。しかし私はこのシェバノワさんの演奏で改めて、そのやわらかく味わい深い魅力に気づきました。以来、お気に入りの一枚です。
若くしてご病気で亡くなられたことが残念でなりませんが、残された録音でこれからもその音楽を楽しみ続けたいと思います。
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