ショパンコンクールでいきなりエチュードを弾いた辻井伸行さんのこと
大学院でインドのスラムの自立支援プロジェクトを研究。その後、2005年からピアノ専門誌の編集者として国内外でピアニストの取材を行なう。2011年よりフリーランスで活動...
先日、辻井伸行さんにショパンのエチュードについて伺ったインタビューが、発売中の「音楽の友」8月号に掲載されています。
私にとっては、辻井さんとショパンのエチュードというと、「コンクールで出てきていきなりOp.10-1」が頭に思い浮かびます。そのあたりはぜひ「音楽の友」の記事をご覧ください。
辻井伸行さんが2005年にショパンコンクールに出場した際のライブ録音
それで、私が辻井さんの取材に最初にかかわったのは、ショパンコンクールに出場された2005年のことなのですが、自分でがっつり取材をしたときというのは、やっぱり2009年のヴァン・クライバーン国際ピアノコンクールのことなんですね。ハオチェン・チャンさんとともに、20歳で優勝されたときです。
あのときの辻井さんの研ぎ澄まされた演奏、客席が引き込まれていく感じは、すごかった。特にショパンのピアノ協奏曲第1番の2楽章を弾いたとき、客席に涙をぬぐうひとがいたり、前の方に座っていたカップルがうっとり肩を寄せ合いはじめたり。音楽ってこういうものよねと思った瞬間でありました。
辻井さんには何回もインタビューさせていただいているんですが、今回ちょっと久しぶりだったので前回いつだったか調べてみたら、もう4年も前の2017年でした。
当時、陶芸にはまっていたらしい辻井さん。八ヶ岳や沖縄など、演奏会で訪れた旅先で、それぞれの土地の陶芸にチャレンジしていたそうで、家族にいろいろ作ってプレゼントしていたとか。
指先の感性発達してそうだから、いいもの作れそうですよね。実際「指の感覚がピアノとちょっと似ている。そっとやらないと崩れてしまうから、指先に集中していないといけない」と話していました。
この話を辻井さんが純粋な感じで語っていたとき、なぜか外野で、「陶芸が趣味ってモテそうじゃないですか」「たしかに! なんでだろう」「映画の『ゴースト』的なイメージあるからじゃない?」というような話題が、ご本人そっちのけで盛り上がった記憶。
そんな、陶芸を利用したモテにまつわる妄想で盛り上がる人々を、おいおいなんだこいつらみたいな感じの無言のほほえみでやり過ごす辻井さんのリアクションが、いまだに忘れられません。
辻井さんのショパンのエチュード、Op.10は5年前の2016年にアルバムがリリースされていますが、前述したようにコンクールのライブ演奏(ショパンコンクールでのOp.10-1とOp.25-6、ヴァン・クライバーンコンクールでのOp.10-1〜6)が収録されているアルバムもあります。
スタジオ録音と、アドレナリン出まくりのコンクールの録音、聴き比べるとおもしろいかもしれません。
スタジオ録音のショパンのエチュード(2016年)
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