音楽ことばトリビア ~ドイツ語編~ Vol.3

素晴らしく美しい月、5月に

読みもの
2019.02.02
この記事をシェアする
イラスト:本間ちひろ
升島唯博 声楽家
升島唯博
升島唯博 声楽家
広島出身。エリザベト音楽大学卒業後、2001年渡独。デトモルト音楽大学修了。リューベック音楽大学、同大学院を首席で修了。オイレギオ国際コンクール優勝。08年にブレーメ...

Im wunderschönen Monat Mai

イム・ヴンダーシェーネン・モナートゥ・マイ

素晴らしく美しい月、5月に

この「音楽ことばトリビア」のフランス語編Vol.11に小阪亜矢子さんが「この素敵な5月に」という題で記事を書かれていますが、こちらはドイツの詩人、ハインリッヒ・ハイネ作の詩です。フランスもドイツも、美しいのは5月ということなのでしょうか。

このハイネの詩に曲を付けた有名な作曲家がロベルト・シューマンで、全16曲からなる《詩人の恋》という歌曲集の第1番が今回の題名の曲です。

私がクラシック声楽を始めて2年ほど経った頃、同級生の家に遊びに行った際に聴かせてもらったのが、ドイツの往年の名テノール歌手、フリッツ・ヴンダリッヒの歌う《詩人の恋》のCDでした。

ロベルト・シューマン:《詩人の恋》~「素晴らしく美しい月、5月に」
フリッツ・ヴンダリッヒ(テノール)、フーベルト・ギーゼン(ピアノ)

クラシック声楽を始めたばかりの人は、まずイタリア歌曲から勉強しはじめます。なぜならイタリア語の母音は日本語のものに近く、数もほぼ一緒だからです(厳密には数種類多いですが)。そして母音を綺麗に鳴らす、息をフレーズに乗せて使う、ということを勉強しやすいからです。

当時の私もイタリア古典歌曲やイタリア語のオペラアリアなどを勉強していましたが、このヴンダリッヒの歌う「詩人の恋」に衝撃を受けました。なんて美しい音楽なんだ! なんて甘く、愁いを帯びた美しい声なんだ! と。 私のドイツ留学の原点が、この20年前の出来事であったのです。

ドイツに1年を通して滞在した際に、実体験を通して本当に理解することができました。なぜハイネが、ただの「schön(シェーン)美しい」ではなく「wunderschön(ヴンダーシェーン)素晴らしく美しい」と表現したのかを。

ドイツは日本の北海道より緯度の高い位置にあり、冬はマイナス10℃を平気で超す寒さに襲われます。寒さだけではなく、緯度の高さから日照時間も日本よりもだいぶ短くなり、暗く鬱々とした冬が日本よりも長く続きます。そして日本では4月が春ですが、ドイツでは5月から暖かくなってきます。それまで雪や葉の落ちた木々でどんよりとしていた風景が、一気に色とりどりの花が咲き、本当に突然「素晴らしく美しく」なるのです。

この感動を19世紀の大詩人ハイネが詩にしたため、天才シューマンが曲を書き、私が神と崇めるヴンダリッヒが歌うこの「詩人の恋」。是非とも聴いていただきたい!!

ツイートする
シェアする

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ