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2025.03.05
名曲解説100

30秒でわかるチャイコフスキー:交響曲第5番

チャイコフスキー:交響曲第5番について30秒で丸わかり♪

寺西基之
寺西基之

1956年生まれ、上智大学文学部を卒業後、成城大学大学院で西洋音楽史を専攻し、修士課程を修了。大学院在学中より音楽評論活動を始め、CDライナー、演奏会プログラム、音楽...

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ロシアの大作曲家ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840〜93)の後期の所産のひとつであるこの交響曲は、円熟期らしい充実した書法が生かされた傑作で、中期に書かれた「交響曲第4番」を引き継ぐかのように、運命との闘いと勝利が確かな構成のうちに描き出されています。

曲頭クラリネットに暗い旋律が示されますが、これは運命を象徴する循環主題としてすべての楽章に現れる重要な主題です。第1楽章ではまず序奏でその循環主題が示され、続くソナタ形式による主部は闘争的でドラマティックな展開を示します。第2楽章は息の長いホルンの主題に始まる緩徐楽章ですが、中間部ではテンポを速め、やがて循環主題が威嚇するように現れ、この循環主題は楽章の最後にも突如出現して聴く者を脅かします。

第3楽章は優美なワルツ楽章ですが、この楽章でも最後に形を変えた循環主題が忍び寄ってきます。最後の第4楽章はまず循環主題が朗々と長調で鳴り響く序奏に始まります。主部では再び悲劇的な闘いが繰り広げられていきますが、コーダでそれは勝利に至って循環主題が再度長調で堂々と示され、最後は第1楽章第1主題の高らかな響きのうちに明るく閉じられます。

チャイコフスキー:交響曲第5番 ホ短調 作品64

作曲年: 1888年

演奏時間: 約45分

編成: フルート3(第3はピッコロ持替)、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン4、トランペット2、トロンボーン3、テューバ1、ティンパニ、弦5部

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