読みもの
2021.05.17
音楽ファンのためのミュージカル教室 第14回

ソンドハイムの言葉を伝える音楽で人生を遡る『メリリー・ウィー・ロール・アロング』

音楽の観点からミュージカルの魅力に迫る連載「音楽ファンのためのミュージカル教室」。
第14回は、ミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』に注目! ブロードウェイの才人で、作詞家でもあるソンドハイムが作り出す音楽の魅力に迫ります。2021年5月17日から31日まで、新国立劇場中劇場で上演。

山田治生
山田治生 音楽評論家

1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...

左からメアリー(昆夏美)、フランク(平方元基)、チャーリー(ウエンツ瑛士)
©岩田えり

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作詞家でもあるからこそ生まれるソンドハイムの音楽

スティーヴン・ソンドハイムは、20世紀後半のブロードウェイを代表する才人である。1930年、ニューヨーク生まれ。10歳の頃に当時のブロードウェイで最も著名な脚本家・作詞家、オスカー・ハマースタイン2世の息子と友人となり、オスカー・ハマースタイン2世から大きな影響を受けた。

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ウィリアムズ大学で演劇を学んだあと、ミルトン・バビットに作曲を師事。1957年、脚本家のアーサー・ロレンツの紹介でバーンスタイン作曲の『ウエスト・サイド・ストーリー』の作詞を担い、一躍注目される。

スティーヴン・ソンドハイム(1930〜)
ニューヨーク出身の作曲家・作詞家。9歳のときにミュージカルを鑑賞し、興味をもつ。作詞家・脚本家のオスカー・ハマースタイン2世からミュージカル製作について学び、大学入学までに4作品を執筆。ウィリアムズ大学で演劇学を専攻。
アカデミー賞1回、トニー賞8回、グラミー賞8回をはじめ、数多くの受賞歴を誇る。

これまでに作詞・作曲を手掛けた作品には、『ローマで起こった奇妙な出来事』、『カンパニー』、『フォーリーズ』、『リトル・ライト・ミュージック』、『太平洋序曲』、『スウィーニー・トッド』、『メリリー・ウィー・ロール・アロング』、『ジョージの恋人(日曜日に公演でジョージと)』(ピュリッツァー賞受賞)、『イントゥ・ザ・ウッド』、『パッション』などがある。

ソンドハイムの作品の特徴は、作詞家でもあるだけに、言葉を大切にし、言葉と音楽が一体化していることがあげられるだろう。そして、ときに早口言葉のようなスピード感と都会的な抒情心温まるメロディや洗練されたジャズの響きもソンドハイムの音楽の魅力。声楽のアンサンブルは、オペラ的といえるかもしれない。

タイトルは「陽気に私たちは進み続ける」の意、ソンドハイムの自伝的要素も

『メリリー・ウィー・ロール・アロング』は、若き日に一緒にミュージカルなどを作って過ごした3人組(フランク、チャーリー、メアリー)の物語。タイトルを日本語に訳すと「陽気に私たちは進み続ける」という意味であろうか。作詞・作曲のソンドハイムにとって、自伝的な要素も含まれる作品である。

1981年にブロードウェイで開幕したときにはハロルド・プリンスが演出を担当したが、今回の上演(56月、東京、名古屋、大阪で)では、このミュージカルのメアリー役を演じたことがあるイギリスの女優アリア・フリードマンが演出を担う。このフリードマン演出版は、2012年にロンドンで初演され、2014年度ローレンス・オリヴィエ賞のベスト・リバイバル・ミュージカル賞を受賞したものである。

キャストは、フランクが平方元基、チャーリーがウエンツ瑛士、メアリーが笹本玲奈。

『メリリー・ウィー・ロール・アロング』2021年のPV

あらすじと聴きどころ〜時を遡って3人の人生を追う

註:演出や上演の版によって、このあらすじと異なることがある。

1978年

1978年、ロサンゼルス、人気映画プロデューサー、フランクの豪邸でのパーティ。映画の大ヒットを祝ってパーティが盛り上がっているなか、フランクの古い友人で作家・演劇評論家のメアリーは不機嫌に泥酔している。フランクが作曲を捨て、商業映画のプロデューサーになってしまったことが気に入らないのだ。若い頃からのフランクの親友で、彼の曲に詞を書いていたチャーリーは、脚本家として今やピュリッツァー賞を受賞していた。

フランクは、映画プロデューサーとしては成功していたが、妻ガッシーとの夫婦生活は破綻。どうして、こうなってしまったのか。富と名声は得たが、失ったものは何なのか。フランクは、貧しくとも夢を追いかけていたチャーリーやメアリーとの時代に遡り、人生の転機となる出来事を振り返る。

左からフランク(平方元基)、ガッシー(朝夏まなと)
©岩田えり

1973年

1973年、フランクはチャーリーとともに、メアリーが企画したテレビ・インタビューを受けている。チャーリーはフランクとまた作品を作りたいと思っていたが、フランクにその気はない。チャーリーはフランクを揶揄してしまい、2人は仲違いする。

1968年

1968年、フランクのマンションに、メアリーやチャーリーが訪れている。フランクは、チャーリーと作った『ミュージカル・ハズバンズ』の映画化の話を持ち出していたが、チャーリーは乗り気ではない。フランクは離婚したばかりでお金が必要だった。メアリーは2人に「オールド・フレンズ」を歌って、古くからの友だちの大切さを説く。そこにその映画をプロデュースするジョーと彼の妻ガッシーがやって来る。ガッシーとフランクは普通ではない関係だった。ガッシーはフランクにジョーとの離婚を告げ、フランクを誘惑する。

1966年

1966年、フランクは、ベスと離婚しようとしていた。ベスはまだフランクのことを愛していたが、フランクのガッシーとの不誠実な関係に我慢がならなかった。ベスはその辛さを「ノット・ア・デイ・ゴーズ・バイ」で歌う。

ベス(昆夏美)とフランク(平方元基)
©岩田えり

1964年

1964年、ガッシーは、フランクとチャーリーのブロードウェイ・デビュー作である『ミュージカル・ハズバンズ』の主役を歌っている。初日終演後のカーテンコール時、フランク、チャーリー、ジョー、メアリー、ベスが舞台裏でミュージカルのヒットを確信。一方、メアリーは、フランクとガッシーの関係を心配する。

1962年

1962年、ガッシーとジョーの豪華なマンションでのパーティ。ガッシーはこっそりフランクにジョーがプロデュースするミュージカルの創作に加わるようにいう。パーティでは、ガッシーがチャーリーとフランクに彼らの新しい歌「グッド・シング・ゴーイング」を披露させる。

1960年

1960年、チャーリーとフランクとベスは、グリニッジヴィレッジの小さなナイトクラブで歌っている。数少ない聴衆のなかにいたジョーは感銘を受け、彼の婚約者ガッシーもフランクに魅了されていた。ショーのあと、フランクがベスの妊娠によって彼女と結婚することが明らかになる。ショーのあと、フランクとベスの結婚が明らかになり、傷心のメアリーはフランクへの思いを飲み込む。

1959年

1959年、フランク、チャーリー、メアリーはそれぞれの仕事(歌、演劇、小説)に取り組んでいる。ベスも仲間に入れて、キャバレー・ショウを作り始める。

左からプロデューサーのジョー(今井清隆)、ベス(昆夏美)、フランク(平方元基)、チャーリー(ウエンツ瑛士)、メアリー(笹本玲奈)
©岩田えり

1957年

1957年、人類初の人工衛星スプートニック1号の打ち上げの日、フランク、チャーリー、メアリーが出会う。20年前の3人は無限の可能性を秘めた若者たち。新たな時代の到来とそれを担うのは自分たちであることを「アワー・タイム」で歌う。

左からフランク(平方元基)、チャーリー(ウエンツ瑛士)、メアリー(笹本玲奈)
©岩田えり
公演情報
ブロードウェイミュージカル『メリリー・ウィー・ロール・アロング』

日時: 2021年5月17日(月)〜5月31日(月)

会場: 新国立劇場 中劇場

出演: 平方元基、ウエンツ瑛士、笹本玲奈、昆夏美 、今井清隆、朝夏まなと他

料金: S席12,800円、A席7,500円(全席指定・税込)

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山田治生
山田治生 音楽評論家

1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...

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