第2章:想いが曲になるまで Vol.4 つないで歌おう
日本全国の学校や合唱団で歌われ続けている合唱曲《COSMOS》や《地球星歌》。旅の体験や星空の影響を受けた作者のミマスさんが自身の想いをこめた歌です。そのメッセージが、十数年の時をかけて歌とともに広まっています。この連載ではプロローグ、《地球星歌の旅》に続き、ミマス作品に込められたご本人の体験をエピソードとともに紹介していきます。
Sachikoの澄みわたるボーカルと、ミマスの詞と曲を基盤とする音楽ユニット「アクアマリン」( http://aqumari.com/ )のメンバー。1998年6月結...
合唱曲《つないで歌おう》はとても新しい歌です。もともとは、埼玉県で活動する狭山少年少女合唱団の団歌として制作されたもの。団員であるお子さんたちが歌に込めたい言葉や想いをたくさん出してくださり、それをまとめる形で僕が作詞作曲しました。歌う喜び、歌の素晴らしさ、歌によって結ばれる出会いや絆がテーマです。これらの要素は一つの合唱団の団歌という枠を超えて、歌を愛する全ての人が共感できる普遍的なものでしょう。合唱関係者の目にとまり、承諾をいただいて楽譜が広く世に出ることになりました。元来のオリジナルである狭山少年少女合唱団の編曲は、ピアノ伴奏も含めて非常に優美かつ荘厳で感動的です。しかしこちらは、合唱の経験を豊富に積んだ小学生~高校生が集まる合唱団ならではのもの。そこで一般的な小学校のクラス合唱でも気軽に取り組めるように富澤裕さんが改めて編曲し、音楽雑誌「教育音楽・小学版」7月号に2部合唱の楽譜が掲載されました。(合唱団の皆さんによるオリジナルバージョンの演奏は本当に素晴らしいので、機会があれば多くの方に定期演奏会などに足を運んで聴いてほしいものです)
さて、僕はこれまで、自分が作詞作曲した合唱曲をいろいろな所で歌っていただいていることから、各地で活動を続ける多くの少年少女合唱団や社会人合唱団の演奏会にお招きいただきました。団員の方々と交流する機会にも恵まれます。そこでいつも痛感するのは、メンバーの方々がみな、日常生活の中でたいへんな時間のやりくりをして練習に参加しているのだということです。
多くの中学生・高校生の合唱団員が、学校の勉強や部活動や塾通いなど様々なことを頑張りながら合唱団の活動を続けています。社会人合唱団でも、多忙な仕事をする中でなんとか時間を作って夜の練習時間に駆けつけるという方がほとんどです。ある主婦の方は、週に一度の練習日には朝から準備を始めなければならないと仰っていました。お子さんたちや旦那さんの晩ご飯を用意するためです。いろいろな料理を作り、温めればすぐに食べられるようにしてから来るのだそうです。また、心から「すごいなあ!」と驚くようなエピソードもあります。ある合唱団には、遠い離島からはるばる高速船に乗って練習に通ってくる子がいるのだそうです。そういった話を聞くたびに、僕はいつも「歌の凄さ」を感じるのです。
こうした人々を、そこまでして練習に通わせるものとは何でしょうか。
それこそが、歌というものの素晴らしさの本質ではないでしょうか。
歌は、必ずしも歌わなければならないというものではありません。歌わなければ生きていけないというものでもありません。大変だと思ったならば、いつでもやめればいいことです。しかしながら本当に大勢の、星の数ほどの人々がこう思っているのです。「どんなに大変でも歌だけは続けたい」と。
それは純粋に楽しいからかもしれません。歌い切ったときの達成感がたまらないという人もいます。大勢の仲間とハーモニーを作り上げる一体感。活動をとおして得られる多くの出会いや友情。それも大きな喜びでしょう。こんな理由を挙げる人もいます。自分が歌うと大勢の人たちが笑顔になってくれる。感動したと言ってくれる。あなたの歌を聴いて前向きな気持ちになったと言ってくれる。自分が誰かの役に立てるなんて、世の中の役に立てるなんて、他では味わうことのできない、人間としての根源的な大きな喜びだ……。僕も音楽をやっているから分かります。そうした声のすべてに深い共感を覚えます。
この《つないで歌おう》の歌詞には、狭山の合唱団のメンバーであるお子さんたちの想いが詰まっています。皆さんが「歌に込めたい」と出してくれた言葉や思いも、そうした「歌が大好きだ」という気持ち、「歌への感謝」に溢れていました。また、それらを拝見してとても印象的だったことがあります。小学生の子たちでさえ、「自分の歌声によって大勢の人たちを幸せにできる」という「社会的使命」のようなものを潜在的に自覚しているのです。きっと、演奏会やコンサートのステージに立って自分たちが歌うと、目の前で大勢の人たちの表情が変わってゆく、空気が変わってゆくという体験を重ねているからでしょう。演奏を聴いた家族や友人、時として全く知らない人から反響をもらえるということもあるでしょう。そういう経験を重ねた子は、自分の存在を肯定的にとらえ、世界というものに対してポジティブな感情や態度で生きてゆけるのではないでしょうか。その先に待っているのはおそらく「幸せな人生」です。
クラス合唱で歌を歌うときには、メンバーの中に様々な子がいるでしょう。歌なんか嫌いだ、合唱なんて全く興味が無いという子も大勢いると思います。そんな子たちがもしこの歌を歌ってくれたら、少しでも歌の魅力を知ってくれるでしょうか。自分の大きな可能性に気づき、前向きな気持ちになってくれるでしょうか。「歌は素晴らしいよねえ」。この歌を通して、そんな想いを多くの方々と共有できることを願っています。
*狭山少年少女合唱団による「つないで歌おう」オリジナルバージョンの演奏がyoutubeにUPされています。
*狭山少年少女合唱団の活動紹介のホームページもあります。
http://www1.s-cat.ne.jp/sayama-kids-chorus/
ミマス
僕の個人的な思いとしては、この歌でいちばん重要なフレーズは、「もしも歌がなければ」という最初の一言です。何かの有り難みを知ろうと思うなら、もしもそれが無かったら……と想像してみることが一番の近道だと思うからです。イマジネーションをふくらませて、ちょっと思い浮かべてください。歌の無い世界を。自分の想いや気持ちを表現する手段がない人生を。それによって改めて感じることがあるのではないでしょうか。
歌のタイトルは《つないで歌おう》です。何と何をつなぐのか。何を願って歌うのか。それは人それぞれで違って良いと思います。歌ってくださる方々の、それぞれの想いをのせて歌っていただくのが一番だと思います。
歌の始まりから終わりまでが、ちょうど小さな流れがたくさん集まって川となり、大きな海に広がるようなイメージ。一人ひとりの胸のうちにある素朴な思いや願いが、たくさん集まってふくらみ、最後は一つになって壮大な合唱ができあがると良いですね。歌う人だけではなく、客席にいる大勢の聴衆も巻き込み、演奏会場にいる全ての人の心のパワーも借りて、世界や地球を包み込むような合唱を作ってください
もしあなたのクラスや合唱団でこの歌を歌ったら、この『オントモ・ヴィレッジ』のウェブページにある、皆さまの合唱の動画を発表するコーナーに応募してみてください。この曲だけでなく、《COSMOS》や《地球星歌》などミマス作品ならどの曲でもOKだそうです。世界に向けてぜひ皆さんの歌声を発表してください。応募方法は「歌声を発表しよう」をごらんください。
冬は星空がキレイだと多くの人が言います。実際にそうですね。理由はいくつかあります。まず冬は空気が澄んでいるということが大きいでしょう。さらにもう一つ根本的な理由があるのです。冬の夜空はほかの季節に比べて、明るい星がとても多いのですね。
その土地から見える星空は緯度によって違ってくるのですが、日本のほとんどの地域では、一年をとおして見ることができる1等星の数は15個です。1等星というのは、星たちのなかでも特に明るく目立つ星のこと。この15個の1等星を、見やすい季節ごとに分けてみるとこうなります。春は3個、夏は4個、秋は1個、そして冬は7個です。冬はとくに明るい星が多く、星空がきらびやかだということが分かるでしょう。ベテルギウスとリゲルという2つの1等星を持ち、「星座の王様」と呼ばれるオリオン座も冬の代表的な星座。その左下には星たちの中で最も明るいシリウス(おおいぬ座)があり、ビカビカと吠えるような青白い光を強烈に放っています。こいぬ座のプロキオン、おうし座のアルデバラン、ふたご座のポルックス、ぎょしゃ座のカペラ(「ぎょしゃ」とは馬車を運転する人のこと)といった1等星たちも負けじと輝いています。ベテルギウスを中心にしてこれらの1等星をすべて結ぶと、巨大な6角形ができます。これが「冬のダイヤモンド」。素敵なネーミングでしょう。冬の夜は寒さが厳しいけれど、頭上にはこんな星空が広がっています。ぜひ温かい服を着込んで、ちょっと見上げてみてください。
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<ミマスのライブ映像>
『君も星だよ』発売記念 Aquamarine トークライブ in長谷川楽器
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