音楽ファンのためのミュージカル教室 第7回

アンドルー・ロイド・ウェッバーの映画を原作としたミュージカル——2020年に上演される注目の3作品より

読みもの
2020.02.07

音楽の観点からミュージカルの魅力に迫る連載「音楽ファンのためのミュージカル教室」。
数々の名作ミュージカルを生み出しているアンドルー・ロイド・ウェッバー。前回の『キャッツ』につづき、今年上演される『サンセット大通り』『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~』『スクール・オブ・ロック』の聴きどころを、あらすじとともにご紹介します。

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メインビジュアル:Sky presents ミュージカル『スクールオブロック』
ナビゲーター
山田治生 音楽評論家
山田治生
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山田治生 音楽評論家
1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...

2020年に上演されるアンドルー・ロイド・ウェッバーの3作品!

前回は、アンドルー・ロイド・ウェッバーの『キャッツ』を取り上げたが、今回は、2020年に彼の比較的近作のいくつかが日本で上演されるので、それら3作品を紹介したい。

このうち、『汚れなき瞳』と『スクール・オブ・ロック』は日本初演となる。

2020年上演のミュージカル

オペラの重厚さと西海岸ジャズ風のサウンドが彩る、没落した大女優の生き様――『サンセット大通り』

『サンセット大通り』は、『オペラ座の怪人』(1986年)、『アスペクツ・オブ・ラヴ』(1989年)に続いて、作られた。ロンドンでの初演は1993年、ニューヨークでの初演は1994年であった。ビリー・ワイルダー監督の同名の映画(1950年)のミュージカル化。その傑作映画へのオマージュといえる。

無声映画時代に一世を風靡した大女優ノーマ・デズモンドの物語。今や誰にも相手にされなくなったノーマは、執事マックスとともに、ハリウッドに近いサンセット大通りの大豪邸に隠遁していたが、ハリウッド復帰の妄想に取りつかれて、自らの復帰作のシナリオを書いていた。

そして、偶然に知り合った、売れない若手脚本家ジョーを自宅に招き入れ、シナリオ制作を手伝わせ、いつの間にか彼に恋愛感情を持つようになる……。

オペラでいえば、ヴェルディの《椿姫》やプッチーニの《トスカ》、ロイド・ウェッバーの旧作でいえば、『エビータ』のような、ヒロイン中心のミュージカルである。ブロードウェイのオリジナル・キャストでノーマを演じたグレン・クローズは、トニー賞を受賞している。

音楽は、オペラのような重厚さと米国西海岸的なジャズ風のサウンドがうまくミックスされている。

ノーマは、このミュージカルのなかで、オペラのアリアのようなドラマティックなナンバーを2曲歌う。一つは、かつての大女優としての誇りと幻影を壮大に歌い上げる「With One Look」。もう一つは、ハリウッドのスタジオに戻ってきたノーマがかつての栄光を思い出す「As If We Never Said Goodbye」。

執事マックスが、忘れられたか過去の大スター、ノーマを讃える「The Greatest Star of All」も悲哀を含んで味わい深い。

日本では2012年に初演され、2015年に続く再演となる。今回、ノーマ・デズモンドは、安蘭けいと濱田めぐみのダブル・キャスト。演出は鈴木裕美。

公演情報
ミュージカル『サンセット大通り』

期間 2020年3月14日(土)~3月29日(日)
会場 東京国際フォーラム ホールC

チケット S席:13,500円/A席:9,000円/B席:5,500円/Yシート:2,000円(※20歳以下対象・当日引換券・要証明書)/注釈付S席:13,500円(税込)

「800°DEGREES」限定コラボピッツァ付きチケット
S席+食事付き:14,500円
A席+食事付き:10,000円

公式サイト https://horipro-stage.jp/stage/sunsetblvd2020/

田舎を舞台とした、脱獄囚と汚れなき少女の物語『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~』

『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド~汚れなき瞳~』は、ブライアン・フォーブス監督の映画『汚れなき瞳』(メアリー・ヘイリー・ベルの小説に依る)を原作としている。1996年のワシントンD.C.での初演の評判はそれほど芳しいものではなかったが、1998年にロンドンのウエストエンドで開幕されると、2001年まで、1044回上演された。

舞台はルイジアナの田舎町。農家の納屋に身を潜めていた脱獄囚が子どもたちに見つかった瞬間、「ジーザス・クライスト(まいったな)」とつぶやく。

それを聞いた少女スワローは彼がイエス・キリストの生まれ変わりだと勝手に信じ込んでしまう。そしてスワローはその男に死んだ母親に会わせてほしいと願う。汚れない瞳のスワローにそう言われて、男は自分の正体を明かすことができない。

その後、子どもたちは、男の存在を大人たちに秘密にして、彼の面倒を見るが、町の大人たちは脱獄囚を探し出そうとしていた……。

モンスター(脱獄囚)と汚れを知らない娘との組み合わせは、『オペラ座の怪人』を想起させる。ロイド・ウェッバーらしい抒情的で美しい旋律に満ちている一方で、田舎を舞台としているだけに、カントリー的な素朴な音楽も聴ける。

三浦春馬が男、生田絵梨花がスワローを演じる。

「ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド」は、「解放する、手放す」という意味。スワローの母がよく口にしていたという。作品のタイトルを取った「Whistle Down The Wind」という歌は、このミュージカルのなかでテーマ・ソングというべき曲であり、単独でもしばしば歌われる。ロイド・ウェッバーのメロディ・メーカーとしての才能がよく示されたナンバーである。

スワローが死んだ母親に会わせてほしいと願う「If Only」もシンプルで美しい。

子どもたちが男に信じ続けることを約束する「No Matter What」は、アイルランドのボーイゾーンによってカバーされ、UKシングルチャートの第1位を記録した。そのほかにも、「When Children Rule The World」など、このミュージカルでは子どもたちが印象的なナンバーを歌う。

日本版の演出は白井晃。脱獄囚を三浦春馬、スワローを乃木坂46の生田絵梨花が演じる。今回が日本初演だが、カギとなる「ジーザス・クライスト」の言葉をどう扱うのか注目される。

公演情報
ミュージカル『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド ~汚れなき瞳~』

期間 2020年3月7日(土)~3月29日(日)
会場 日生劇場
チケット S席:13,500円 A席:9,000円 B席:4,500円(税込)

公式サイト http://www.whistledownthewind.jp/

古き佳きミュージカル・コメディ、『スクール・オブ・ロック』

『スクール・オブ・ロック』は、現在のところ、ロイド・ウェッバーの最新作。原作はリチャード・リンクレイター監督の映画『スクール・オブ・ロック』(2003年)。作詞はグレン・スレイター、脚本はジュリアン・フェロウズ。2015年にブロードウェイで初演され(2019年まで1307公演)、2016年にウエストエンドでも開幕した。

ギタリストのデューイ・フィンはバンドをクビになり、友人ネッドの部屋に転がり込んでいる。電話が鳴り、出てみると、名門ホレス・グリーン学院の校長ロザリー・マリンズからネッドあてに、臨時教師の職の依頼だった。

デューイは、ネッドになりすまし、そこで、教え始める。ホレス・グリーン学院は品行方正な私立学校であるが、担任を持たされたデューイは、生徒たちに音楽的な才能を見出し、ロック・バンドを結成して、ロック・バンドのコンテストに出ることを提案する。そして、彼のクラスの生徒たちはバンドを結成し、その名を『スクール・オブ・ロック』とした。

しかし、コンテストに出場する直前、デューイの正体がばれてしまう……。

日本初演はダブルキャスト。デューイ役を演じる西川貴教と子どもたち。
同じく、柿澤勇人と子どもたち。

全体のテイストは古き佳きミュージカル・コメディ。ロック・ミュージカルということでは、彼の初期の『ジーザス・クライスト・スーパースター』の系列であるが、ホレス・グリーン学院の音楽授業で、生徒たちがモーツァルトの《魔笛》の「夜の女王のアリア」を合奏するなど、一つの作品のなかでロックからクラシックまで扱うところが、ロイド・ウェッバーらしい。ミュージカルの最後には、「夜の女王のアリア」もロックになって演奏される。

保守的な環境で過ごす校長ロザリーが、ロックへの愛を思い出す「Where Did the Rock Go?」が抒情的なナンバー。もちろん、実際の舞台では、生徒たちのロック演奏が見どころ・聴きどころとなろう。

日本版の演出は鴻上尚史。デューイは、西川貴教、柿澤勇人のダブル・キャスト。ロザリーに濱田めぐみ。1565人から選ばれた24人の子どもたちの演奏にも注目!!

 *

3作品とも、オリジナル・キャストによる全曲録音があるので、音楽だけでも楽しむことができる。また、3作品とも映画を原作としているところが興味深い。

公演情報
Sky presents ミュージカル『スクールオブロック』
期間 2020年8月22日(土)~9月20日(日)
会場 東京建物 Brillia HALL(豊島区立芸術文化劇場)
料金 S席:14,000円/A席:9,500円/B席:6,500円(全席指定・税込)
公式サイト https://horipro-stage.jp/stage/sor2020/
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