ブラームス《雨の歌》〜雨音のことではない? 愛称の由来
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
1879年に作曲されたヴァイオリン・ソナタ第1番《雨の歌》。シンプルで洒落た題名ですが、実はこの曲、ブラームスにとって大きな意味のある曲なのです。
題名は自身によって付けられた題名ではないのですが、ブラームスが1873年に作曲した同名の歌曲「雨の歌」作品59-3のメロディを第3楽章に引用したことからこの題名で呼ばれるようになりました。
もとになった歌曲「雨の歌」を作詞した詩人グロートは、ブラームスと同じ北ドイツ出身で、かつブラームスのいとこと同じ学校に通っていたということもあり、知り合って以降、深い親交をもちました。この2人は北ドイツでのみ話される低地ドイツ語で会話しており、周りの人たちは何を話しているかわからなかったそうです。
この詩は、「雨が降ると裸足になってはしゃいだ子どもの頃を懐かしむ」という内容で、このヴァイオリンソナタの中でも、詩のもつ爽やかな雰囲気が生かされています(本当に素敵な詩です!)。
降れ、雨よ降れ砂が雨で泡立つ、あの子供の頃の思い出をもう一度裸足で雨に打たれながら草の雨粒をかき集めるなんて幸せなんだろうもう一度あの優しい雨音に耳を澄ませたい美しい自然の不思議に心をつつまれながら(訳:大井駿)
ブラームスはさまざまな詩を使って数多くの歌曲を書きましたが、特にこの詩を気に入り、別のメロディを付けたものを1曲(WoO23)、さらに低地ドイツ語で書かれた同じ詩にも1曲、作曲しています。
ちょうどこのヴァイオリン・ソナタを書いている頃、友人クララ・シューマンの息子フェリックス・シューマンが25歳という若さで亡くなったため、第2楽章に葬送行進曲が挿入されているのも大きな聴きどころです。
ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番《雨の歌》作品78
ブラームス:歌曲「雨の歌」作品59-3(ヴァイオリン・ソナタに引用)
ブラームス:歌曲「余韻」作品59-4 (こちらも作品59-3と同じメロディーが使われています)
ブラームス:歌曲「雨の歌」WoO23(同じ詩に別のメロディを作曲)
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