読みもの
2020.09.16
曲名のナゾ Vol.11

ブラームス《雨の歌》〜雨音のことではない? 愛称の由来

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

ブラームスがヴァイオリン・ソナタ第1番《雨の歌》を作曲したオーストリアの避暑地ペルチャッハ。今でもリゾート地として多くの人が訪れています。

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1879年に作曲されたヴァイオリン・ソナタ第1番《雨の歌》。シンプルで洒落た題名ですが、実はこの曲、ブラームスにとって大きな意味のある曲なのです。

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題名は自身によって付けられた題名ではないのですが、ブラームスが1873年に作曲した同名の歌曲「雨の歌」作品59-3のメロディを第3楽章に引用したことからこの題名で呼ばれるようになりました。

もとになった歌曲「雨の歌」を作詞した詩人グロートは、ブラームスと同じ北ドイツ出身で、かつブラームスのいとこと同じ学校に通っていたということもあり、知り合って以降、深い親交をもちました。この2人は北ドイツでのみ話される低地ドイツ語で会話しており、周りの人たちは何を話しているかわからなかったそうです。

この詩は、「雨が降ると裸足になってはしゃいだ子どもの頃を懐かしむ」という内容で、このヴァイオリンソナタの中でも、詩のもつ爽やかな雰囲気が生かされています(本当に素敵な詩です!)。

 

降れ、よ降れ
砂がで泡立つ、あ子供思い出をもう一度
 
裸足でに打たれながら草粒をかき集める
なんて幸せなんだろう
 
もう一度あ優しい音に耳を澄ませたい
美しい自然不思議に心をつつまれながら
(訳:大井駿)
低地ドイツ語で書かれた歌曲「雨の歌」の自筆譜。ブラームス自身、「低地ドイツ語は自分にもっとも近い言葉なので、曲を書きづらい」と言っていたそうですが、このお気に入りの詩にはどうしても曲をつけたかったのか、最下段におまけのように書かれています。
ヴァイオリンソナタ第1番《雨の歌》の自筆譜、第1楽章冒頭。「ソナタ」以外の題名は書かれていません。

ブラームスはさまざまな詩を使って数多くの歌曲を書きましたが、特にこの詩を気に入り、別のメロディを付けたものを1曲(WoO23)、さらに低地ドイツ語で書かれた同じ詩にも1曲、作曲しています。

ちょうどこのヴァイオリン・ソナタを書いている頃、友人クララ・シューマンの息子フェリックス・シューマンが25歳という若さで亡くなったため、第2楽章に葬送行進曲が挿入されているのも大きな聴きどころです。

ブラームス:ヴァイオリン・ソナタ第1番《雨の歌》作品78

ブラームス:歌曲「雨の歌」作品59-3(ヴァイオリン・ソナタに引用)

ブラームス:歌曲「余韻」作品59-4 (こちらも作品59-3と同じメロディーが使われています)

ブラームス:歌曲「雨の歌」WoO23(同じ詩に別のメロディを作曲)

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

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