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2021.03.01
「音大ガイド」2.音大の受験対策

(1)音大入試の種類や受験科目は?

一般大学の入試同様、音楽大学の入試も、国公立大学や私立大学における違いだけでなく、学校ごとで入試の種類や科目、配点が異なります。ここではおもに音大入試ならではの試験科目を中心に説明します。

*記事は内容の更新を行っている場合もありますが、基本的には上記日付時点での情報となりますのでご注意ください。

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『音楽大学・学校案内』編集グループ 音楽之友社

執筆:堀内亮(音楽大学講師)、荒木淑子(音楽ライター)、各編集グループスタッフ。音楽之友社および『音楽大学・学校案内』編集グループは、1958年に年度刊行書籍『音楽大...

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音大のおもな入試科目

音大の入試科目は、大きく次の4つに分けられます(音大によりさまざまな分類名がありますが、ここではわかりやすく次のように定義します)。

  • 専攻実技(声楽・楽器演奏・作曲課題など)
  • 音楽系科目(楽典、聴音、視唱、副科ピアノなど) 
  • 学科(国語、英語など)
  • 面接ほか人物試験

このなかで、専攻別の試験「専攻実技」は多くの学校で必須科目になる、とくに私立の実技系コースでは重要な試験です。さらに、入学後の勉強に必要な基礎力を見極めるための「音楽系科目」も、専攻やコースによっては入試の必須科目、選択科目に含まれます。「学科」試験は、大学入学共通テストの受験が必要な国公立大学はもちろん、私立音大でも必須科目になる大学はあります。一方、最近は入試方法が多様化するとともに音大の入試科目にも変化がみられるので、動向を注視しましょう。

おもな入試の種類と入試科目

一般的に、音大入試は次の3種類の方法で行われますが、それぞれの入試で、試験科目は異なります。

・総合型選抜

総合型選抜は多くの場合、エントリーシートの提出後に、専攻実技の試験(レッスン形式の場合もある)と面談・面接を中心に行われます。国立大学でも一部に総合型選抜を取り入れている大学があり、私立大学では多くの学校で行われています。一般的に、私立音大の総合型選抜は8月頃から始まり、12月頃まで複数回実施する学校もあります。

楽器専攻を志望する受験生で楽典、聴音などのソルフェージュ力に不安がある場合でも、総合型選抜に合格すれば入学までの間、音大の講習会などで基礎から勉強できる大学もあります。

・学校推薦型選抜

学校推薦型選抜にもさまざまな方法があり、それぞれの大学・専攻などで入試科目は異なります。多くの音大では、提出書類、面接、実技試験によって選考されます。一般的に、11月頃に行われます。

・一般選抜

入試科目に学科(国語、外国語など)が加わることが多く、3つの入試方法のなかではいちばん必須科目が多い入試方法です。私立音大の一般選抜では、第2志望を併願できる大学があります。一般的に、2月〜3月に行われます。

 

そのほか、給費奨学生の選抜を兼ねた入試特待生選抜(試験)、一部ではありますが飛び入試を行う音大もあります。くわしい入試方法や入試科目は、各音大のWebサイトのほか、『音楽大学・高校 学校案内』(音楽之友社)で見ることができます。

入試科目のそれぞれの内容

一般的な音大の入試科目を一つずつ説明しましょう。『音楽大学・高校 入試問題集』(音楽之友社)では、各学校で実際に行われた入試問題がくわしく掲載されていますので参考にしてください。

また、対策については「音大ガイド2.(2)音大入試の受験準備・対策はどうすべき?」「2.(3)音大入試の受験準備・対策はいつから始めればいい?」を参照してください。

・専攻実技

とくに私立の実技系コースの受験生にとってはもっとも重要な入試科目です。声楽や器楽専攻の受験生は、課題曲を複数の試験官の前で演奏します。ミュージカルやバレエ専攻でも、実技課題が課されます(私立音大の課題曲は多くの場合6月頃、国公立では7〜11月頃までに発表されます)。作曲専攻の場合は、決められた時間内で和声課題や作曲課題などに取り組みます。

その他理論系や音楽ビジネス系の専攻の課題として、実技試験ではありませんが外国語や小論文、プレゼンテーションなどが実施されています。また、教育系の専攻では声楽・器楽などの実技や小論文などが課題になっています。

・楽典

楽典の知識(楽譜を読む・作る上でのルール)が問われる筆記試験です。楽典は楽曲を理解するのに必要であり、音大に入る前にできれば身に付けておいたほうがいい、音楽の基礎的な知識です。

多くの音大入試で、音階・音程・和音の種類、調判定、楽語などについて問われる問題が出題されますが、入試問題には各学校の個性が現れ、大学によって出題傾向も難易度も異なります。

・聴音

その場で聴いた音楽を楽譜に書き取る試験です。入試ではほとんどの場合、単旋律、二声の旋律、和音が課題として出されます。多くの場合は演奏を聴きながら楽譜に書き取りますが、なかには、記憶して楽譜に記す課題を出す学校もあります。

・新曲視唱

入試で行われる新曲視唱は一般的に、初めて見る旋律を無伴奏で歌います。歌う前には決められた予見(ピアノなどの楽器の助けなしに、声を出さずに楽譜を読む)時間が数十秒~数分あり、歌う直前には、その旋律の主和音などを聴くことができます。ちなみに、初めて見る楽譜を楽器で演奏する場合は「初見視奏」と言います。

・副科ピアノ

専攻がピアノ以外の受験生には、副科ピアノを入試の必須科目にする大学があります。課題曲は、古典派の「ソナチネ」「ソナタ」の第1楽章または終楽章から受験生が選択する学校が多いようです。

・面接・プレゼンテーション・口頭試問

面接(面談と呼ぶ音大もある)は、総合型選抜、学校推薦型選抜や奨学生、特待生選抜(試験)、一般選抜の教育学科、音楽ビジネス系の学科で行われることが多いです。

面接では、個人または集団で、一般的に出願書類をもとに志望動機や大学で学びたいことなどが質問されます。

プレゼンテーションの課題は学校によりさまざまですが、例えば、得意な楽器を演奏したり、高校時代に力を入れてきたことなどを口頭で発表したり、スマートフォンを使って自作の動画を披露したり、自分の個性やその大学で勉強したいという強い意欲をアピールします。

口頭試問は、主に作曲専攻など入試で課題提出があるコースで行われます。提出した課題の内容について口頭で問われるものです。

・小論文

音楽学系や教育系、またビジネス系でも多くの専攻で出題されます。実技系では作曲専攻での出題頻度が高いです。

・学科

音大の入試にも、たいていの場合、学科の試験はあります。

国公立大学の入試には大学入学共通テストの受験が必須の学校がほとんどです。国立大学の教員養成課程での一般選抜の配点は、多くの大学で大学入学共通テストのほうが実技試験よりも高くなっています。科目数は大学によって異なります。

私立音大は、国語と英語が課題となることが多いです。私立音大のなかには入試科目に学科のない音大もあるいっぽう、英語の入試レベルが高い音大もあります。私立音大の一般選抜で学科が必須科目の場合、大学入学共通テストの成績を利用する場合と、学校独自の試験を受ける場合があります。

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『音楽大学・学校案内』編集グループ 音楽之友社

執筆:堀内亮(音楽大学講師)、荒木淑子(音楽ライター)、各編集グループスタッフ。音楽之友社および『音楽大学・学校案内』編集グループは、1958年に年度刊行書籍『音楽大...

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