読みもの
2020.10.06
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その24

スケルツォ:意味はイタリア語で冗談。メヌエットの代わりに取り入れられるように

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

マーラー:交響曲第5番 第3楽章 スケルツォの自筆譜。
ウィンナ・ワルツ風のモチーフが登場する中間部分です。ゆったりしたメロディーで演奏され、第1ヴァイオリン(上から2段目)にはグリッサンドも書かれています。

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このscherzoという言葉は、イタリア語で冗談という意味です。その名の通り、スケルツォと名前のつく曲は、もともとユーモアを兼ね備えた作品を指しました。

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冗談を言う」「ふざける」という意味をもったscherzareという動詞の現在分詞scherzando(スケルツァンド)は、冗談めかしく、おどけてという意味で、楽譜に発想記号として用いられることもあります

初めてスケルツォが登場したのは1605年、イタリアの作曲家プリーティの「スケルツォ、カプリッチョとファンタジー」でした。その後まもなくして、1607年、モンテヴェルディが「音楽の冗談(Scherzi musicali)」という曲を作曲し、スケルツォがだんだんと広がっていきます。

スケルツォが大きな転換を迎えたのは18世紀。それまでは複数の楽章(通常は全部で4つの楽章)をもつ曲の第3楽章(もしくは第2楽章)にはメヌエットが書かれたのですが、フランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732〜1809年)がメヌエットの代わりに、メヌエットをコミカルにした曲としてスケルツォを取り入れました

さらに、ハイドンの弟子だったベートーヴェン(1770〜1827年)がスケルツォを気に入り、自身のソナタや交響曲のなかで多く書きました。ベートーヴェンのスケルツォは、ハイドンのスケルツォよりもうんと速く、もはや速すぎて3拍子なのがわからない曲もあります

例えば、ベートーヴェンの交響曲第1番の第3楽章は「メヌエット」と書かれているのに、びっくりするほど速いのです。メヌエットからスケルツォへの過渡期に書かれたことがよくわかります。これが、もともと踊るためのメヌエットだったとは思えませんね……。

メヌエットからスケルツォへ
F.J.ハイドン:弦楽四重奏曲第75番 ト長調 作品33-5〜第3楽章 スケルツォ、またはメヌエット (1797年作曲)
ベートーヴェン:交響曲第1番 ハ長調 作品21〜第3楽章 メヌエット (1800年作曲)
ベートーヴェン:交響曲第3番 変ホ長調 作品55〜第3楽章 スケルツォ (1804年作曲)

ハイドン:弦楽四重奏曲第77番 ト長調 作品33-5〜第3楽章 スケルツォ
ベートーヴェン:交響曲第1番〜第3楽章 メヌエット
ベートーヴェン:交響曲第3番〜第3楽章 スケルツォ

譜例を見ると、ベートーヴェンが指定したメトロノームのテンポを見ても、どちらもほぼ同じくらいの速さなのがわかります!

こうして、3拍子のメヌエットから派生したスケルツォは、さらにさまざまな形に変容します。例えばマーラー(1860〜1911年・オーストリア)は、自身の交響曲第5番のスケルツォを書く際、レントラー(オーストリアや南ドイツの農民の間で踊られていたゆったりした3拍子の踊り)や、同じく3拍子でグリッサンドや不規則なリズムを用いたウィンナ・ワルツを取り入れました。何度聴いても面白い曲です。

スケルツォには、それぞれの作曲家の遊び心や挑戦的な姿勢がたくさんつまっているのです!

スケルツォを聴いてみよう

1. モンテヴェルディ:音楽の冗談(スケルツィ・ムジカーリ)〜美しい少女
2. J.S.バッハ:6つのパルティータ〜第3番 イ短調 BWV827より第6番 スケルツォ
3. メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 作品20〜第3楽章 スケルツォ(作曲者による管弦楽版)
4. ショパン:スケルツォ第2番 変ロ短調 作品31
5. マーラー:交響曲第5番〜第3楽章 スケルツォ
6. 矢代秋雄:交響曲〜第2楽章 スケルツォ

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

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