読みもの
2020.10.27
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その27・10月の特集「食」

カプリッチョ:楽語もピザの名前も同じ「気まぐれ」の意。フランス語ではカプリス

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...

ピザの名前にもなっているカプリッチョ。

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イタリア語の名詞で「気まぐれ」という意味のカプリッチョ。フランス語ではカプリス(caprice)とも呼ばれます。

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カプリッチョという言葉を使った初めての作品は、ベルギーの作曲家ジャケ・ドゥ・ベルヘム(1505?〜1567)の《カプリッチョ集》だとされています。形式にとらわれず、好きなように書かれた作品です。

こうして、作曲家の好きなように書かれた気まぐれな作品のことが「カプリッチョ」と呼ばれるようになりました。

日本では「奇想曲」とされることが多いです。奇想というのは「形式からはみ出た、思いもよらないさま」を表す言葉で、カプリッチョの意味をうまく捉えています。

ベルヘム:カプリッチョ第1集〜シンフォニア

ベルヘム《カプリッチョ集》初版の表紙

のちに書かれた音楽辞書でも「形式にとらわれず、作曲家のイマジネーションに従って書かれた作品」と定義されています(ブロサール/1703年、ヴァルター/1728年)。

カプリッチョの形容詞、カプリチョーゾ(capriccioso)という言葉も楽語です。こちらは「気まぐれな」という意味で、気まぐれな雰囲気で弾いてほしい場合、楽譜上で指示として用いられます。

さて、カプリチョーゾという言葉を聞いて、とあるものを連想する方がいらっしゃるかと思います。カプリチョーザ……ピザです! 

このピザのカプリチョーザも同じく「気まぐれな」という意味で、ざっくり訳すと「シェフの気まぐれ風」といったところでしょうか。

このように、カプリッチョと題された音楽は、作曲家の気の赴くままに、気まぐれに書かれました。

バッハ:カプリッチョ《最愛の兄の旅立ちに寄せて》自筆譜の冒頭。

カプリッチョを聴いてみよう

1. J.S.バッハ:カプリッチョ《最愛の兄の旅立ちに寄せて》〜「ホルン信号によるフーガ」
2. ベートーヴェン:カプリッチョ「なくした小銭への怒り」作品129
3. パガニーニ:24のカプリス 作品1〜第5番  イ短調
4. ブラームス:8つの小品 作品76〜第2番 カプリッチョ
5.  R.シュトラウス:歌劇《カプリッチョ》〜「支配人さん!」
6. ラフマニノフ:ボヘミア奇想曲 作品12

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...

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