クラリネット:シャリュモーが改造されて17世紀に誕生! トランペットとの関係は?
1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...
楽器のなかでも新しい部類に入るクラリネット。
バロック時代に使われていたシャリュモー(chalumeau)という楽器をもとに、1690年、ヨハン・クリストフ・デンナー(1655〜1707、ドイツ)が音域を広げて改造したのが、クラリネットです。
テレマン:2本のシャリュモーのための協奏曲 TWV52 〜第4楽章
シャリュモーはフランス語で「笛」という意味で、息を吹き込んで音が出る楽器全般を指していましたが、発展段階で、リードと呼ばれる板のようなものを1枚挟んだもののみがシャリュモーと呼ばれるようになりました。この構造は、改造されたクラリネットでも同じです。
そのシャリュモーを改造して作られたクラリネットは、シャリュモーより高い音域が出せるようになりました。そして、その高い音がトランペットのように聴こえることから、当時のトランペットの呼び名だったクラリーノという言葉から派生した、クラリネットと名付けられました。
少し説明を加えると、クラリーノ(clarino)はイタリア語で明瞭な(claro)という言葉に由来します。
その言葉に、“-etto”という、意味を弱める時に用いる接尾語をくっつけたのがクラリネット(clarinetto)です。直訳すると「クラリーノっぽい」といったところでしょうか。
クラリネット協奏曲を初めて書いたのは、ヴィヴァルディ(1678〜1741、イタリア)とされています。
しかし、まだ新しかったクラリネットはあまり頻繁に使われることがない期間が続きました。モーツァルトは、クラリネットが入った交響曲を、41曲中3曲しか書かなかったものの、晩年にクラリネット奏者のアントン・シュタードラーと知り合ったことで、クラリネットのポテンシャルに惚れ込み、クラリネットための作品を多く書きました。
モーツァルトは彼のクラリネットの演奏について、このような言葉を残しています。
なんて素晴らしい! こんな体験ができたことに感謝でいっぱいです。まさかクラリネットが人間の声のような音がするなんて思ってもいませんでした……すべてはあなたの演奏のおかげです。クラリネットのこんなに柔らかくて、こんなに美しい音には、もう誰も抵抗できないですよ。
1785年、シュタードラー宛の手紙より
さらに、アメリカのジャズ・クラリネット奏者ベニー・グッドマン(1909〜1986)の演奏を耳にした当時の作曲家らも、彼の演奏からクラリネットのポテンシャルに魅せられました。そこで、バルトークらがジャズ・クラリネット奏者であるグッドマンに。作品を次々と書きました。
ベニー・グッドマンに関連する作品
1. ベニー・グッドマン:Sing, Sing, Sing
2. モーツァルト:クラリネット五重奏曲 イ長調 KV581〜第1楽章(
3. バルトーク:コントラスツ〜第1楽章 ヴェルブンコス (グッドマンに献呈)
4. バーンスタイン:前奏曲、フーガとリフ〜リフ(グッドマンに献呈)
こうして聴衆からも作曲家からも、クラリネットの人気は不動のものとなりました。作曲家が書きたくなってしまうような音色を持った楽器、それがクラリネットなのです。
クラリネットを聴いてみよう
1. ヴィヴァルディ:クラリネット協奏曲第3番 ヘ長調 第4楽章
2. モーツァルト:クラリネット協奏曲 イ長調 KV622〜第3楽章
3. シューベルト:岩の上の羊飼い D.965
4. ブラームス:クラリネット・ソナタ第2番 作品120-2 変ホ長調〜第2楽章
5. アンダーソン:クラリネット・キャンディ
6. 作者不詳:クラリネット・ポルカ
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