読みもの
2021.02.02
大井駿の「楽語にまつわるエトセトラ」その36

オルガン:語源は古代ギリシア語で「器具」を意味するオルガノン

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...

ドイツ、パッサウにある聖シュテファン大聖堂のオルガン。教会のオルガンとしては世界最大で、17974本(!)のパイプが使われています。

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数ある楽器の中でも圧倒的な存在感を放つ、オルガン。この名前は、古代ギリシア語で「器具」を意味するオルガノン(ὄργανονという言葉に由来します。

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オルガンができたのは、紀元前3世紀の古代ギリシア。クテシビオスという発明家が作った水オルガンが、現在のオルガンの原型とされています。

水オルガンは、水を用いて空気圧を作り、空気を循環させることによって音を出します。なので、演奏する際は、演奏者以外にもポンプで動かす人が必要です。しかし、この水オルガンは式典、闘技場などで頻繁に演奏され、またたく間に広まりました。そしてさまざまな改良を経て、水を使わないオルガンが作られました。

ドイツ・ザール地方のネニッヒにある古代ローマ時代に作られたモザイク画。左に水オルガンを演奏する人、右にはリトゥースを吹く人が描かれています。

中世に入るまでのオルガンは、持ち運びができるほどの大きさでしたが、中世に入ると、教会のような大きな建物に大きなオルガンを作るようになります。大きなオルガンともなれば、音域もぐんと広がります。すると2本の手だと音域をフル活用するには足りなくなり、なんと足用の鍵盤を付け加えます。手も足も動きっぱなしです!

 

オルガンを弾くバッハ(1725年)
足元にも鍵盤がついていることがわかります。

ルネサンスやバロック期になると、パイプの本数は何百本にもなり、さまざまな楽器の音色を模した音も出るようになりました。こうして、オルガンは長い年月をかけて、信じられないほどの規模の楽器となったのです。

筆者も、実際に4700本のパイプを持つフランフルト・旧オペラ座のオルガンを演奏したときは、間近で鳴る轟音に思わず声が出てしまいました。

このような大きなオルガンの低音は、16Hzや8Hzになることも。これらの音はあまりに低すぎるため、人間の耳でほぼ認識することはできません。そのかわり、地面の振動によって音を体で感じることができるのです!

広島にある世界平和記念聖堂のオルガン
広島と同じく、大空襲を受けたドイツ・ケルン市から寄贈され、1954年に完成しました。日本国内にあるオルガンの中でも、規模の大きなものです。
©︎ひろしま たてものがたり

バッハ:コラール前奏曲より「主よ、われ汝に呼ばれる」BWV639(世界平和記念聖堂のオルガンでの演奏)

オルガンを聴いてみよう

1. G.ガブリエーリ: トッカータ「ラ・スピリタータ」
2. バッハ:クラヴィーア練習曲集第3巻〜前奏曲 変ホ長調 BWV552
3. サン=サーンス:交響曲第3番《オルガン付き》作品78〜第2部後半
4. デュプレ:《古いクリスマスの変奏曲》作品20
5. メシアン:《主の降誕》〜「神は私たちとともに」
6. The Doors:Light My Fire

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。2022年、第1回ひろしま国際指揮者コンクール(旧:次世代指揮者コンクール)優勝。パリ地方音楽院ピアノ科、ミュンヘン国立音楽演劇大学古楽...

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