作曲家・助川敏弥の没後10年を悼む~ピアニストを魅了する繊細で透明な作品世界
作曲家の助川敏弥が亡くなって、今年で10年。作曲家と縁の深いピアニストが中心となり、9月6日音楽の友ホールでメモリアル・コンサートが開催されます。助川敏弥とはどのような作曲家だったのか。出演者のコメントとともに紹介します。
2019年夏、息子が10歳を過ぎたのを機に海外へ行くのを再開。 1969年東京都大田区に生まれ、自然豊かな広島県の世羅高原で育つ。子どもの頃、ひよこ(のちにニワトリ)...
フジコ・ヘミングも愛奏。ピアノ作品を数多く創作した作曲家
作曲家の助川敏弥が亡くなって、今年で10年になる。1930年に札幌で生まれ、東京藝術大学在学中の1952年、日本音楽コンクール作曲部門で第1位と特等を受賞。多彩な作曲活動にとどまらず、評論活動にも取り組んでいた。
助川との出会いや作品、人柄について、愛弟子で作曲家の橘川琢は次のように述べている。
「2004年、助川敏弥先生から作曲家としてのさらなる勉強・研鑽のお誘いを直々に賜り、ご逝去の時までお近くで師事いたしました。先生は管弦楽や室内楽、歌曲や合唱曲、邦楽器、放送劇や電子音による環境音楽など幅広く作曲。中でもピアノについては『生涯を通じて自身をもっともよく語る言葉であった』と語られるなど、繊細かつ洗練された簡素の美や、小さな命への温かなまなざしに満ちた純粋な結晶のような作品が多く、端正で清澄な響きの中に、先生独自の爽やかな音の署名を感じます」
助川敏弥は、初心者でも弾くことができる小品から、30分以上の無調の“遺言”(《プレリュード、パッサカリアとフーガ》)まで、さまざまなスタイルのピアノ作品を数多く創作。フジコ・ヘミングも生前、彼の《ちいさきいのちのために》を愛奏していた。
1930 年生まれ。東京藝術大学卒業。在学中に日本音楽コンクール第一位ならびに特賞。1960 年、文部省芸術祭奨励賞。1971 年、文化庁芸術祭優秀賞。1973年、国際放送作品コンクール「イタリア賞」NHK 参加作品大賞。
主要作品、ピアノのためのタペストリー、ピアノ曲「山水図」、ピアノ小曲集「ちいさな四季」、 被爆ピアノとオーケストラと電子音による「おわりのない朝」、歌曲集「夕顔」、「薔薇の町」、合唱曲 「白い世界」、「ちいさきいのちのために」等。環境音楽の分野では鹿島建設本社ビル、技術研究所、道路公団東名高速「足柄SA」館内音楽等を制作。日本音楽舞踊会議 代表理事、月刊・季刊「音楽の世界」編集長を務めた。2015 年逝去
深沢亮子、宮谷理香、實川風~助川作品を受け継ぐピアニストたちが出演
没後10年を機に、助川敏弥の作品をのちの世代に受け継いでほしいとの願いを込め、助川作品の多くを初演した深沢亮子、彼の“遺言”の初演者に指名された宮谷理香、彼の作品の整理にたずさわった橘川琢による協力のもと、「助川敏弥没後10年メモリアルコンサート」が開催される。
また、コンテンポラリー作品でも自身の言葉で語り尽くす俊英、實川風と、深沢亮子の盟友でチェリストの安田謙一郎も出演する。このコンサートを通して、助川敏弥がその作品で伝えようとしたメッセージを改めて考える一日になるだろう。
以下に、「助川敏弥没後10年メモリアルコンサート」に出演する3人のピアニストのコメントを紹介する。
「31歳の頃、助川敏弥先生の作品で30分もかかる難曲《ピアノのためのタペストリー》初演のご依頼を受けた。手書きのコピー譜は少々読みにくかったが『暗譜で』とのこと。猛勉強をした。本番後にいただいたお手紙には『稀にみる名演』と書かれておりホッとした。助川先生はピアノを愛され、その作品は繊細で透明、一音一音を大切にされた。その後、私は東京、名古屋で助川作品のみでのリサイタルを行ない、作品のCD化や、国内外で演奏をしている」(深沢亮子)
「助川先生はいつも新しい作曲アイデアを嬉しそうに話され、また会話の中から心の機微を掬い取っていらしたように思います。知己を得てからは、自作の楽譜が詳細な解説や録音と共に届けられ、新しいピアノ曲が出来上がるたびに必ずお手紙と共にお送りくださっていました。『ボクの遺言』とまで仰っていた《プレリュード、パッサカリアとフーガ》を初演させていただいたことは、先生とのご縁の集大成でもありました。今回演奏するピアノ曲集『白いつばさ』には、助川先生の自然や人間へのやさしい眼差しが溢れています」(宮谷理香)
「今回の記念公演では、ピアノ独奏のための《山水図》を演奏させていただきます。助川敏弥先生の作品に触れるのは初めてですが、《山水図》の楽譜を開いた時に、水墨画のような美しい譜面に息を呑みました。音を出してみて、ピアノから紡がれる透明感、余白を感じる音世界にすぐに惹かれました。素晴らしい出演者の皆さまとともに、お届けできることを心から嬉しく思います」(實川風)
日時:2025年9月6日(土)14:00 開演
会場:音楽の友ホール
チケット:前売券4,000円/当日券4,500円/学生券3,500円
チケット取り扱い先:カンフェティ
販売URL: https://www.confetti-web.com/@/sukegawa20250906
電話予約: 050-3092-0051(平日10時-17時)
プログラム
お話「師 助川敏弥を語る」 橘川 琢
ソナチネ《青の詩》(1975) ピアノ:深沢亮子
《山水図》(1981/2002) ピアノ:實川 風
《花の舞》(2005) ピアノ:宮谷理香
ピアノ曲集『白いつばさ』ピアノ:宮谷理香
お話「助川敏弥を偲んで」ナビゲーター: 道下京子
『ピアノのための24の前奏曲』より 第2、4、5、16、18、22番(※) ピアノ:深沢亮子(※第22番 チェロ:安田謙一郎)
出演
ピアノ: 深沢亮子、宮谷理香、實川 風
チェロ: 安田謙一郎
お話・ナビゲーター:道下京子、橘川 琢
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