読みもの
2023.01.09
「テューリンゲン・バッハ週間」が2023年3月31日~4月23日開催!

バッハの故郷を訪ねて、多様なスタイルで「バッハ音楽」を楽しみ尽くす音楽祭

コロナ禍による出入国規制も緩和され、海外旅行に行く人も増えてきました。このタイミングで2023年の3月31日~4月23日まで、ドイツのテューリンゲン州で行なわれる音楽祭「テューリンゲン・バッハ週間」。テューリンゲンといえば、音楽ファンなら一度は訪れてみたいバッハが生まれ育った場所。そこで、一体どんな体験ができるのか、音楽祭の主催者であるクリストフ・ドレッシャーさんにお話を伺いました。

ONTOMO編集部
ONTOMO編集部

東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

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バッハゆかりの地を訪ねる音楽祭

——ドイツには複数のバッハをテーマにした音楽祭が存在しますが、「テューリンゲン・バッハ週間」ならではの特徴や魅力を教えてください。

ドレッシャー 「テューリンゲン・バッハ週間」は、バッハの故郷テューリンゲン州で開かれる音楽祭です。テューリンゲンは J.S.バッハの家系が何世紀にも渡って暮らし活躍した場所です。

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バッハ家の多くは音楽家でした。例えばエアフルト市の音楽家には「バッヒェ Bache(バッハ家の複数系)」という呼称がついていたぐらい、バッハ家が代々この地域で音楽家としての名を馳せていたのです。

J.S.バッハ自身もテューリンゲン州の町アイゼナハで生まれ、その後、生涯の半分近くをテューリンゲン州のさまざまな町で過ごします。

これらのバッハゆかりの町のいたるところで、私たちのコンサートは開かれます。J.S.バッハが洗礼を受けたアイゼナハの洗礼盤のそばで、また彼がオルガン席に座ったまさにそれらの教会で、彼の音楽を聴くことができます

アイゼナハの聖ゲオルク教会。バッハが受洗した洗礼盤が残るこの場所でもコンサートが開かれる。
©︎MarcoBorggreve

——テューリンゲンでは、どのようなバッハゆかりの地をめぐることができますか?

ドレッシャー J.S.バッハはアイゼナハで生まれましたよね。そして小さな町オールドルフで育ちました。その後、ワイマールで宮廷の音楽家として雇われていましたし、またアルンシュタットやミュールハウゼンでオルガニストとして活躍しました。

これらの場所には今もなお、歴史的建造物が残っています。見学することもできますし、 コンサートを聴くことができます。

またエアフルト、ゴータ、マイニンゲンなど、J. S. バッハ自身が住んでいたわけではありませんが、彼の両親や親戚、そしてテレマン、ブラームス、レーガーといった作曲家が活躍した場所でのコンサートも開催しています。これらの町はすべて近くにあるので、大体1時間もあれば次の町へと簡単に移動することができます。また、多くの町でガイドがあり、英語はもちろん、時には日本語のガイドもありますよ。

バッハ界のビッグスターが続々登場

——音楽祭ではどのようなアーティストの演奏が聴けるのでしょうか?

ドレッシャー 多くの若手アーティストに加え、バッハ界のビッグスターたちがテューリンゲンに毎回やってきます。名指揮者たちにとっても、歴史的な場所でバッハを身近に感じることが、何ものにも代えがたい貴重な体験となるのでしょう。

指揮者、ヴィオラ・ダ・ガンバ奏者のジョルディ・サバールは「この音楽祭には素晴らしい未来がある!」と本音楽祭に太鼓判を押してくださいましたし、2023年はエアフルトに登場予定のトン・コープマンも「国際的にとても重要な音楽祭です。内容がとても良いですし、すばらしい観客に恵まれています」と語ってくださいました。

トン・コープマン

来シーズンは2023年4月、フィリップ・ヘレヴェッヘが《ヨハネ受難曲》を指揮し、コレギウム・ヴォカーレ・ヘントとともに音楽祭のオープニング・コンサートを飾ります。またルネ・ヤーコプスがビー・ロック・オーケストラと共演します。これらの公演は共にバッハの洗礼盤のあるアイゼナハで行なわれます。

フィリップ・ヘレヴェッヘ
©︎Michiel-Hendryckx
ルネ・ヤーコプス
©︎Philippe-Matsas

さらに、フランスのアンサンブル「ラルペッジャータ」、また若いアンサンブル「ソロモンズ・ノット」が、聖金曜日にワイマールで《マタイ受難曲》を演奏する予定です。

日本からは柴田俊幸さんが参加! バッハが結婚した教会でリサイタル

——今回、日本人としてはフルート奏者の柴田俊幸さんがリサイタル公演を行ないますね。

ドレッシャー これまでにも「テューリンゲン・バッハ週間」には、ヨーロッパの著名なアンサンブル、あるいは室内楽奏者の一員として日本人の音楽家の方々にご参加いただいており、2018年にはバッハ・コレギウム・ジャパンが本音楽祭のアンサンブル・イン・レジデンスとして2公演を行ないました。

しかし、2023年4月の柴田俊幸さんの公演は、また非常に特別なものになると思います。柴田さんが若い世代のバロック奏者として最も興味深い存在である上に、この公演のロケーションもとても素晴らしいのです。

柴田俊幸 ©︎Hiroshi Noguchi

公演が予定されているドルンハイムの教会——ここは J.S.バッハが最初の妻マリア・バルバラと結婚した場所で、こじんまりとした、とても魅力的な教会です。この歴史的な空間には、今でも当時の雰囲気を色濃く感じとることができます。それは、ドルンハイムの村人たちが熱意を持って、その遺産を大切にしているからなのです。

柴田俊幸さんからのコメント

テューリンゲン・バッハ週間といえば、そのプログラムの斬新さと、ベニュー(演奏会場)の素晴らしさに毎年驚かされます。3週間強を通してバッハが生まれ育った町と建物を音楽と一緒に体験できる、とても物語のある音楽祭です。今回演奏させていただくのはバッハが1人目の奥さんマリア・バルバラと結婚式を挙げた教会で、キャパも200人弱と室内楽を聴くにはもってこいの場所。

 

当日は、J.S.バッハの作品はもちろん、バルバラとの2人目の息子のカール・フィリップ・エマニュエル、そしてフィリップ・グラスの作品を、鍵盤楽器の鬼才アンソニー・ロマニウクと一緒に演奏します。日本人の音楽家として、バッハの生まれ育った町で、彼の音楽を演奏できることを誇りに思います。

 

柴田俊幸

バレエ、ア・カペラ、ジャズ......さまざまなバッハを楽しみ尽くす

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