第4回 作詞をしよう~「自分が言いたいこと」を歌にする方法~
作詞作曲に憧れる! でも音楽の心得がないから......と諦めるその前に、「宇宙一やさしい作詞作曲ガイド」をお手にどうぞ。
星や宇宙をテーマに音楽を作るミマスさん(アクアマリン)による『歌を作ろう! 宇宙でいちばんやさしい作詞作曲ガイドブック』より、ONTOMO出張版をお届けします! 言葉には上手くできない想いを、歌に託してみませんか。きっと新しい世界が開けますよ。
Sachikoの澄みわたるボーカルと、ミマスの詞と曲を基盤とする音楽ユニット「アクアマリン」( http://aqumari.com/ )のメンバー。1998年6月結...
作詞って何をすること?
今回は、作詞についてお話ししてゆきます。
作詞とは、歌の「歌詞」を作ること。作曲はひじょうに限られた音階の中でメロディを作ってゆきますが、作詞で使える言葉はほとんど無限。「この言葉がいいかな……」、「いや別の言葉のほうが似合うかも……」。そんなふうにあれこれ試しつつ、楽しみながら作ってゆきましょう。
ところで作詞といっても、いったい何をどう書いたらいいのでしょうか。「自由すぎてどうしていいかわからない」。そんな心境の方もいるかもしれませんね。
大切なことは、「自分が言いたいことを言う」ということ。あなたが作る歌は、あなたのものです。あなたの言葉で、あなたの想いを素直に吐き出してゆくことが大切です。
歌のテーマは本当に何でもよいのです。友情や恋愛でもよいですし、あなた自身の夢や好きなもののこと、身近な人たちへの想い、ふだん考えていることや悩んでいること、自分で考えた架空の物語、自然の風景、平和への願い。何でもアリです。あまりかたく考えずに、肩の力を抜いて楽しんでやってみるのがいちばんです。
こんなテーマで書いてみようかな……。それが決まったら、とりあえず何か言葉を出してどんどん書いてみましょう。気に入ったものがあれば使って、気に入らなかったら消してまた考えればいいだけ。できばえを気にするなんてことは、いちばん後でいいのです。
僕にはいま小学1年生の息子と幼稚園児の娘がいますが、自分の子どもたちにも日頃から言っています。「歌は誰でも作れるんだ。お前さんたちも作ると楽しいぞ」。その甲斐もあってか、息子は3歳のときに初めて作詞作曲をして、オリジナルソングを作りました。「♪ドドドドソソソー、ドドドドソソソー」というメロディのくり返しに乗せて、大好きな新幹線の駅名を東京から新函館北斗まで順番に叫んでゆくという歌です。立派な作品だと思います。彼の個性が最大限に表現されています。娘のほうもさいきん幼稚園からの帰り道に、自分で作ったという謎の歌をよく歌いながら歩いて帰ってきます。こちらはいろいろな動物が日替わりで詞に登場します。
でも、これと同じようなことは、多くのお子さんがみんな普通にやっていますよね。あなたもきっと幼児のときに、こんなふうに勝手に歌を作って遊んでいたのです。それをここでもう一度やってみようということなのです。
真っ白な画用紙と色鉛筆をわたされたら、あなたは何を描くでしょう。
カメラをわたされて、「好きなもの撮っていいよ」と言われたら、あなたは何にレンズを向けるでしょう。そのときの気持ちとおんなじです。
もし歌を作れるなら、こんなものを作りたい。そんなふうに思ったことはありませんか? 心当たりがあれば、さっそくそれを形にしてみましょう!
例)
スパゲティの美味しさに感激して作った歌、《イタリア人に生まれればよかった》
雪道の車の運転の危険性を訴える歌、《雪が降ったらジャフはたいへん》
思いがけない幸運が重なった喜びを表現する歌、《アリの穴にチョコチップつきメロンパン》
日常の何気ない疑問を歌った歌、《海抜と標高の違いって何?》
など、いろいろ考えてみましょう!
詞のカタチ。基本的なルール。
詞は、どんなふうに書いてもいいのですが、一応の形があります。
言葉だけでつづる「詩」ならば、なんの制約もなく自由にどんどん書いてゆけます。でも歌の「詞」となると話は別。メロディとの兼ね合いが出てくるからです。文字数がメロディにうまく収まるように作らなければなりません。せっかく良い言葉が見つかっても、歌ったときに変な感じになってしまったら、詞かメロディのどちらかを変えて調整する必要がでてきます。
ということで、ここからは作詞のいちばん基本的なことを解説してゆきます。
字脚(じあし)
作曲の章でもふれましたが、多くの歌には「1番、2番、3番……」という構成がありますね。
そのような歌を作る際には、1番と2番の同じメロディには、同じ文字数の言葉(違ってもいいけどそんなに違わない)をつけないと、うまく歌えなくなってしまいます。この文字数のことを「字脚」といいます。
たとえば1番の出だしを「ぼくは よぞらを みあげてる」とすると、字脚は(3、4、5)となります。そこで2番もこれに合わせて「ほしが きらきら かがやくよ」なんてすると、一番も二番も同じメロディにうまく乗るわけです。
字脚を意識するのは大切なことですが、あまりとらわれすぎる必要もありません。「1番では長くのばして歌った音符に、2番では早口で言葉を詰め込んでしまう」といった感じで微妙に調整できるからです。字脚を厳守するあまりにせっかくの良い言葉を排除したりしないようにしてください。
詞(曲)の構成
これも作曲の章でふれましたが、「1番、2番、3番……」という構成の1番の中だけを見ても、多くの曲に共通の構造があります。まず出だしの比較的おだやかなメロディから始まり、次に少し雰囲気の違うメロディが続いて、いよいよ盛り上がってカッコよく歌い上げるサビのメロディが来るというふうに。もちろんすべての歌がこの形にあてはまるわけではありません。でもポップス、ロック、演歌に合唱曲、多くのジャンルに見られる構造です。童謡や唱歌でさえも、その短い曲のなかに起承転結がちゃんとあります。
ですから詞のほうも、これを意識しながら作ると、曲とうまく調和することが多いのです。たとえば、出だしは風景描写や状況設定などの導入部にして、歌のメインテーマとなる核心的な言葉はサビのところに持ってくるという感じです。
言葉の積み上げ方
字脚は、1番と2番で大きく違わなければ、1つのフレーズの文字数が3でも4でも5でも、偶数でも奇数でも何でも構いません。
しかし、言葉のブロックを積み上げてゆくとき、ぜひ「4」という数字を大切にしてください。なぜかというと、音楽とは4進法の世界だからです。
説明すると長くなりますが、よくミュージシャンが、「イントロは16小節だ。そのあと4拍ブレイクがあってこのコード進行を8回くり返し。そしてサビのあとギターのソロが32小節入るんだ」なんて言っているのを聞いたことがありませんか?(ないか)
とにかく、いま出てきた数字は全部4の倍数で、なんとなく4という数字が音楽の世界を支配しているので、「詞の一行が4つの言葉(文節)でできて」いたり、「一つのブロックが4行」だったりすると、曲が自然につきやすいということを、なんとなく覚えておいてください(でも、あまり気にしすぎる必要はありませんよ)。
例をあげましょう。たとえばこんな詞は曲がつけやすいです。1行が4つの文節で成り立ち、全体が4行から成っているでしょう。
ぼくは おなかが すいて おります
とにかく おいしい ごはんを たべたい
カレーに 焼きそば なんでも いいな
だれでも いいから なにか ちょうだい
これを読みながら、もう頭の中にメロディが浮かんできたという方もいらっしゃるのでは? ぜひこれに曲をつけて歌ってみてください!
作詞のコツ~逆算作詞法~
作詞が上手な人と苦手な人との違いは何でしょうか。
たまに、「作詞をしたいのだけれどうまくできなくて悩んでいる」という方から相談を受けることがあります。そうした方々と接していると、ある興味深い傾向があることに気づきます。
詞を書くのが苦手だという人は、たいてい歌の出だしの1行目から書こうとします。いっぽうで、作詞に慣れた人は結論である最後のサビの部分から書いてゆきます。そういう傾向があるような気がするのですね。
これはどういう意味があるかというと、結論から書くということは、目的地が決まっているということです。
このことは旅行の計画を立てるのに似ています。たとえば、僕はいま神奈川県の平塚市に住んでいますが、平塚から大阪へ行く場合、家を何時に出発したらよいかは、ふつう逆算して決めますよね。
新大阪駅に朝9時半に着くためには、7時04分小田原発の「ひかり」に乗らなければならない。そのためには6時20分平塚発の東海道線の電車に乗らなければならない。だからがんばって早起きして朝5時45分に家を出発「しなければならない」のです。
歌の出だしの最初の言葉も、歌の結論という目的地にちゃんと到着するために、その言葉から始まらなければならないという必然性があるのです。じつは、こういうふうに考えると、作詞も作曲もすごくやりやすくなるのです。
歌の最後で「私たちはみんな星だ」と言うためには、その前に「宇宙の長い歴史があらゆる生命の中に受け継がれている」ことを説明しなければならないし、その前に「星空を眺めているという状況設定」をしなければ不自然です。
作詞とは、単にキレイな言葉やカッコいい言葉を並べることではなくて、じつは必要な役割をはたす言葉を見つけ出す作業なのです。
そうはいっても、初めて作詞に挑戦する人がそこまで意識して作るのは難しいでしょう。やはり最初は、思いつくままにどんどん言葉を出すということを優先したほうがよいと思います。慣れてきて、少し長めの詞を書きたいと思うようになったらこんなことも意識してください。
動画解説版もありますので、ぜひご覧ください!
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