読みもの
2020.09.21
週刊「ベートーヴェンと〇〇」vol.31

ベートーヴェンとチェス

年間を通してお送りする連載「週刊 ベートーヴェンと〇〇」。ONTOMOナビゲーターのみなさんが、さまざまなキーワードからベートーヴェン像に迫ります。
第31回は、ベートーヴェンが好きだったというチェスについて。メトロノームをベートーヴェンに紹介したメルツェルが、チェスにも関わっています!

大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

メルツェルのチェス人形(内部)

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コミュニケーションツール、チェス

ゲームはいつの時代も人を夢中にさせます。モーツァルトはビリヤード、バックギャモンやボウリングに多くの時間を費やしていましたが、ベートーヴェンも例外ではありませんでした。

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ベートーヴェンは日課として、夕方から晩にかけて地元の居酒屋で新聞を読みながらお酒を飲んでいました。たまに飲み仲間と遭遇することもありましたが、難聴を発症して耳が聞こえにくくなってからのベートーヴェンは、会話帳を使わないとやりとりできませんでした。そこで言葉を交わさなくてもすむチェスがベートーヴェンのコミュニケーションツールとして役立ったそうです。

「ベートーヴェンとチェス」による激動の人生

「ベートーヴェンとチェス」といえば、ベートーヴェンの友人メルツェル。メルツェルとは、「ベートーヴェンとメトロノーム」の記事でもご紹介しましたが、(現代の)メトロノームを発明した人物です。

もともとメルツェルは機械仕掛けのものが好きで、ベートーヴェンの交響曲《ウェリントンの勝利》では、この曲のために「パンハルモニコン」という楽器を作ったほどです。

この後メルツェルは「俺のおかげでこの曲が生まれたんだから、この曲は俺の曲だ!」と主張し、ベートーヴェンに裁判を起こされますが、メルツェルがベートーヴェンにメトロノームを紹介したことにより、何事もなかったかのように仲の良い関係に戻ります(笑)。

交響曲《ウェリントンの勝利》Op.91

メルツェルが発明した楽器「パンハルモニコン」
このオルガンのような見た目の楽器は、さまざまな音を出すことができる自動仕掛けの楽器ですが、空襲により破壊されてしまったため現存していません。

さて、このメルツェルとチェスの関係は、発明家ケンペレン(1734〜1804年)の死によって始まります。ケンペレンの死後、彼が発明した「トルコ人」というチェスをする機械仕掛けの人形を買収し、ヨーロッパではナポレオンやチェス名人たちと対決させ、名声と富を得ます。ちなみに当時は今のようにAIなどない時代なので、チェス台の下に人が隠れて人形を操作しているんです。しかも、ドイツ語で初めてチェス教本を書いたJ.アルガイエル(1763〜1823年)など、当時有名なチェスプレイヤーが操作していました。でも誰にもバレなかったんですね。

その後メルツェルはアメリカへ渡り、チェス人形の展示会を行ないますが、調子に乗りやすく反感を買われやすかったメルツェルは、借金地獄へ陥ります。そしてベネズエラの船の中で急性アルコール中毒で息を引き取りました。彼の人生は、ベートーヴェンとチェスによって波乱に富んだものとなったのです。

メルツェルが発明したチェス人形。
大井駿
大井駿 指揮者・ピアニスト・古楽器奏者

1993年生まれ、東京都出身。 パリ地方音楽院、ザルツブルク・モーツァルテウム大学ピアノ科・指揮科卒。 同大学院、ミュンヘン国立音楽演劇大学でピアノ、指揮、古楽の3科...

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