読みもの
2020.03.26
林田直樹のミニ音楽雑記帳 No.1

モダンな家具と古美術が同居する、マウリツィオ・ポリーニのミラノの自宅

林田直樹
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

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20026月に、マウリツィオ・ポリーニのミラノの自宅を訪問した。

厳重な入口から門の内側に入ると、フェリーニの映画にでも出てきそうな館があり、秘密めいた階段を上っていくと、茶室の入口のように小さなドアがあった。まるで隠れ家である。

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明るい応接間に通され、鋭角的なデザインのガラステーブルの前のソファに腰を下ろすと、壁には14世紀頃のイタリアの品の良い夫婦の肖像画が架けられていた。

「私の祖先ですよ。いや冗談ですがね」とポリーニは言った。超現代的な家具と、中世の古美術が同居しているということ、それはいかにもポリーニらしい趣味と感じられた。

隣の部屋はドアが開けっぱなしになっていて、厳粛な雰囲気の漂う書斎であることがうかがえた。ピアノもおそらくそこにあるらしかった。

ポリーニの演奏を聴くとき、筆者はいつも、心のどこかで、あの私邸を思い浮かべてしまう。

そのポリーニが再録音したベートーヴェンの後期3大ソナタ(第303132番)が、この2月に発売され、大きな話題となっている。

今回の熾烈なベートーヴェンも、きっとあの部屋のように、単に19世紀という枠にとどまらない、スケールの大きな思考の賜物ではないかという気がしている。

林田直樹
林田直樹 ONTOMOエディトリアル・アドバイザー/音楽ジャーナリスト・評論家

1963年埼玉県生まれ。慶應義塾大学文学部を卒業、音楽之友社で楽譜・書籍・月刊誌「音楽の友」「レコード芸術」の編集を経て独立。オペラ、バレエから現代音楽やクロスオーバ...

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