イベント
2019.11.08
11/30~12/8 福井、神奈川、長野、東京で開催!

今もっとも旬なアーティストが一堂に会するケルト音楽の祭典「ケルティック・クリスマス」で、ハッピーになろう!

早いものでもう年末の足音が聴こえてきました。12月には、何を聴きますか? 「第九!」という方も多いかとは思いますが、今年はそのリストに「ケルト音楽」も加えてみてはいかがでしょう?
アイルランドやスコットランドを中心に世界に発信されるケルト音楽。そのもっとも旬なアーティストが集う「ケルティック・クリスマス」をご紹介します。

山﨑隆一
山﨑隆一 ライター

編集プロダクションで機関誌・広報誌等の企画・編集・ライティングを経てフリーに。 四十の手習いでギターを始め、5 年が経過。七十でのデビュー(?)を目指し猛特訓中。年に...

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アイルランド、スコットランド地方から発信され、世界中で演奏される音楽

「バッハやヴィヴァルディ、ヘンデルなど、バロック音楽を勉強している人は、ケルト音楽に触れてみるといいと思いますよ。メロディの歌わせ方やビート感の出し方など、とても参考になるはずです」

以前、とある取材で、ケルト音楽の代表的な楽器、フィドルについてこんな話を伺ったことがある。フィドルとはつまりヴァイオリンのこと。ヴァイオリンはスーツやタキシードが似合うエレガントな楽器で、フィドルはより人々の生活に寄り添った普段着に近いもの、とイメージすればいいだろうか。両者に優劣をつけようなんて話はナンセンスだ。

ケルト音楽って、何だろう? 特にこれといった定義は、ない。ケルトと呼ばれる民族の文化が色濃く残っているのはアイルランドやスコットランド、ウェールズやフランスのブルターニュ地方、スペインのガリシア地方など。これらの地方、特にアイルランドとスコットランドを中心にして発信される民族音楽(主にダンス音楽)というのが、きわめて大雑把に捉えたケルト音楽だといえるだろうか。使う楽器はフィドルをはじめハープ、バグパイプ、ホイッスル、アコーディオンやコンサーティーナというバンドネオンを小さくしたような蛇腹楽器などだ。無印良品の店内で流れている音楽をイメージするのもわかりやすいかもしれない。

例えばアイルランドでは、街のパブで住人たちがセッション的に演奏していたりして、究極のアマチュア音楽だともいえるが(その点では沖縄や奄美の音楽に近いところがある)、そんな「ピープルズ・ミュージック」をベースにしつつ、きわめて高いレベルでオリジナルな音楽にまで昇華させ、世界的に活躍する旬のアーティストたちを一同に招いて師走の全国を巡るのが「ケルティック・クリスマス」だ。

過去には、以前に本サイトでも紹介したスコットランドの「カトリオーナ・マッケイ&クリス・スタウト」、アイルランドの中でも特にケルト音楽の伝統が強く残るドニゴール地方を拠点にワールドワイドな活動を続けるスーパー・グループ「アルタン」、神秘的なコーラス・ワークで中世の讃美歌からポップスまでをレパートリーとし、近年は能やゲーム音楽とのコラボでも注目される「アヌーナ」をはじめ、若手からベテランまで幅広いラインナップで毎年開催されている。

今年はアイルランドの国民的アコーディオン奏者「シャロン・シャノン」に加え、アイルランドの「ウィ・バンジョー・スリー」、スコットランドの「タリスク」という勢いある2組の若手グループが参加することになった。

「ケルティック・クリスマス」今年のメンバー~国民的アーティストから、気鋭の若手アーティストまで

アイルランドの国民的アコーディオン奏者、シャロン・シャノン

シャロン・シャノンは1991年のデビュー以降、抜群のリズム感とのびやかに歌うアコーディオンで、アイルランドのトップ・ミュージシャンとしての地位を揺るがないものにしてきた。ロックやカントリーのアーティストとも盛んに競演し、2016年に発表されたアルバム『Sacred Earth』では、アフリカとのミュージシャンともコラボレーションを行なうなど、さらに幅広い音楽性を追究している。どんなに実験的な試みをしようとも、それがシャロン・シャノンの確固とした音楽として聴く人の心に届くのは、アイルランドの伝統音楽がその土台をしかと支えているから。

彼女の音楽を聴いていると、えもいわれぬ幸福感が全身を包み込む。こんなに人を幸せにできるなんて、どれほど強い人なんだろうと思う。今回のステージでもまさに「ハピネス炸裂!」なステージになること必至である。

新しくてかっこいい超絶バンジョー、ウィ・バンジョー・スリー

写真:石田昌隆

アメリカでもツアーを成功させ、勢いに乗るウィ・バンジョー・スリーの音楽には、まるで青春を謳歌しているような爽やかさがある。バンジョーやフィドル、マンドリンといったトラッドなシーンで使われる楽器が、彼らの手にかかると珠玉のポップ・ソングを生みだす魔法のツールになる、そんな感じだ。

彼らの音楽を聴いていると、昔、アメリカ大陸に移民としてやってきたアイルランドやスコットランドの人々の音楽が、カントリーやブルーグラスといったアメリカ音楽の伝統を作り、アフリカから連れてこられた人々の楽器がバンジョーとして生まれ変わった、なんていう歴史にも思いを馳せたくなってくる。

コンサーティナ奏者、モーセン・アミニが率いるスコットランド発の新星、タリスク

誰に何と言われようと、自分の信じる道を突き進め――。タリスクの2018年のアルバム『Beyond』を聴いていると、そうやって背中を押されているような気がしてくる。背中を押すといっても「ポン」ではなく「ドン!」だ。パンキッシュですらある圧倒的なパワーと、その陰に潜む繊細さが、聴く者の耳を捉えて離さない。

ギターとフィドル、そしてコンサーティーナ(アコーディオン族に属する蛇腹楽器)が織りなすアンサンブルは、3人しかいないのにまるでもっと大人数で演奏しているかのような広がりがある。それは、コンサーティーナ奏者モーセン・アミニの手から生み出される音色の多彩さによるところが大きいと思う。ステージでは彼の楽器さばきにも注目だ。

世界中の音楽と交わっても壊れない、したたかなケルト音楽

「僕たちの音楽、そして文化はとても強固なもの。だから、ほかの音楽と交わっても簡単には壊れないし、伝統的な文化に敬意を払っていれば、どんなところに出ていっても大丈夫なんだ」

これは先に挙げたクリス・スタウトが取材で語った言葉だが、これは上記3組のアーティストたちにもいえることもあり、もっといえばケルト音楽に携わるアーティストたちの総意なのかもしれない。

また、こんな考え方もできる。ケルト民族はその昔、中央ヨーロッパに住んでいて、時の流れとともにイギリスやアイルランドに移り住み、後にアメリカ大陸へも渡っていった。その過程で、いたるところにそのDNAが落とされていったから、大半のヨーロッパ音楽、そしてアメリカ音楽にはその奥にケルト的要素を受け入れる素地がある。そうすると、冒頭のバロック音楽のくだりも納得できるのだ。いずれにせよ、ケルト音楽とは世界を巡る壮大な夢なのである。

ケルト音楽のセッションに垣間見える「音楽の本質」を日本でも

数年前、ダブリンと、アイルランド南西部の小さな村で、パブでのセッションを観た。都会ダブリンのパブは歴史を感じさせる重厚な造りの店もあれば、今風でお洒落な店もたくさんある。対して、地方のパブには雑貨や日常必需品も売っていたり、子どもたちが遊んでいたりして、ただお酒を楽しむだけではなく、みんなの集会場といった雰囲気だ。恐らく、村の子どもたちは人生で必要なことの多くをここで学ぶのでろう。

さておき、セッションそのものは、都会も地方も変わらなかった。夜、ぞろぞろと演奏者が集まってきて、おもむろに演奏が始まる。楽器はフィドル、ホイッスル、アコーディオンやコンサーティーナなど。皆でテーブルを囲み、奏者の傍らにはパイントグラス。ダンスチューンの旋律は、少しずつ形を変えながら繰り返されていく。「削除」、「繰り返し」、そして「明瞭さ」がケルト音楽の真髄だという話を聞いたことがある。絶えず進化を繰り返して、新たな生命が吹き込まれていくさまは、ケルトの人たちが抱く輪廻転生の思想をそのまま音で表現しているようである。そのようにして即興的に生みだされる音楽は、素朴なようで複雑で、複雑なようで素朴。新しくもあり懐かしくもあり。そこにはしなやかで深い包容力があり、同時に奏者のコミュニケーション力が試される厳しい場のようにも思えた。

パブで行なわれるセッション(写真:筆者)
ケルト系キリスト教のシンボルであるケルト十字(写真:筆者)

ダブリンではもっとカジュアルな、カフェやレストランで音楽を聴く機会もあった。演奏に興味津々なのは観光客の類で、地元の人たちは奏者が隣で頑張っているのに、まるで意に介さない様子で新聞や雑誌を開いている。しかし、席を立つ際、決まって彼らに小銭を置いていったり、声をかけたりするのは、ついさっきまでそしらぬ顔で新聞を読んでいた人たちなのだ。そんなところに、彼らの音楽との付き合い方が見て取れるようでもあり、その奥には、もっと大切な何か、音楽の奥深さがあるような気がしてくるのだった。

これからケルト音楽を聴いてみようという方はもちろん、楽器を練習していて、もっとうまくなりたいと思っている方、はたまた純粋に音楽を楽しみたい! という方は、ぜひケルティック・クリスマスに足を運んでみてはいかがだろう。

アーティストたちの佇まいや音楽を通して、日々の生活がもっとハッピーになるような、自分を前に進めてくれる何かが、きっと見つかるはずだから。そして何より「音楽っていいな」と純粋に思えるはずだ。

ケルティック・クリスマス 2019
東京公演

日時 2019年12月8日(日)16:30 開場/17:15 開演
会場 すみだトリフォニーホール 大ホール
チケット 前売:S席7,000円/A席6,000円(税込)
S・Aともに中学生以下半額
※当日券は500円増し

出演
シャロン・シャノン(アイルランド)
ウィ・バンジョー・スリー(アイルランド)
タリスク(スコットランド)
クリスティン・カー(カナダ/ダンサー)

◆同日開催アフタヌーン企画!
日時 12/8(日)すみだトリフォニー 小ホール
[1] 映画「クイーン・オブ・アイルランド」
12:00 開場
12:15~13:40 映画上映
13:40~14:00 アフタートーク(天辰保文)
全席自由 500円(税込)※先着順入場

[2] 公開インタビュー&トークショー
14:30 開場 14:45 開演(16:15 終演予定)
MC:天辰保文(音楽評論家)
トーク・ゲスト:シャロン・シャノン、We Banjo 3、タリスク
全席自由 500円(税込)※チケットに記載の整理番号順入場

福井公演

日時 11月30日(土)14:15 開場/15:00 開演
会場 ハーモニーホールふくい 小ホール
チケット 全席指定:5,000円/ペア券:8,000円/車いす席:4,000円/※小~大学生:半額
※未就学児童は入場できません

出演
シャロン・シャノン
タリスク

横須賀公演

日時 12月1日(日)14:30 開場/15:00 開演
会場 よこすか芸術劇場
チケット S席6,000円/A席5,000円/ペア券(S席)11,000円
プレミアム倶楽部サンクス料金(S席)5,000円
※未就学児童は入場できません

出演
シャロン・シャノン
ウィ・バンジョー・スリー
タリスク

◆アフター・パーティー開催!!
2019年12月1日(日)
よこすか芸術劇場 公演終演後、1Fロビーにて開催します。
参加費:500円
※12/1公演チケットをお持ちの方のみ限定
★楽器持ち込み大歓迎!!

長野公演

日時 12月7日(土)14:30 開場/15:00 開演
会場 長野市芸術館 メインホール
チケット 一般 4,000円/シニア割引 3,000円 ※60歳以上が対象/U-25割引 2,000円*25歳以下が対象
※未就学児童は入場できません

出演
シャロン・シャノン
ウィ・バンジョー・スリー
タリスク
クリスティン・カー(ダンサー)

助成:Culture Ireland

単独公演
シャロン・シャノン

12月3日(火)大阪 あいおいニッセイ同和損保 ザ・フェニックスホール
12月5日(木)山形 文翔館

http://www.plankton.co.jp/sharon/index.html

単独公演
ウィ・バンジョー・スリー

12月4日(水)大阪 梅田クラブクアトロ
12月5日(木)東京 渋谷クラブクアトロ

http://www.plankton.co.jp/webanjo3/index.html

単独公演
タリスク

12月3日(火)東京 晴れたら空に豆まいて
12月4日(水)愛知 宗次ホール

http://www.plankton.co.jp/talisk/index.html

山﨑隆一
山﨑隆一 ライター

編集プロダクションで機関誌・広報誌等の企画・編集・ライティングを経てフリーに。 四十の手習いでギターを始め、5 年が経過。七十でのデビュー(?)を目指し猛特訓中。年に...

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