フィリップ・グラスの音楽による現代オペラの金字塔《浜辺のアインシュタイン》新制作
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
来る10月8日・9日、神奈川県民ホール開館50周年記念オペラシリーズVol.1として、《浜辺のアインシュタイン》が日本で30年ぶり、国内初の新制作上演される。
ミニマル音楽の巨匠フィリップ・グラスと鬼才演出家ロバート・ウィルソンが、科学者アインシュタインを詩的に解釈しようと試みた前衛的なオペラで、4時間ノンストップ、歌詞は“数字”と“ドレミ”のみで、打ち寄せる波のように音楽とダンスが繰り返される中から独特のグルーヴが生まれる作品。
1976年にフランス・アヴィニョン演劇祭の初演で観客の度肝を抜いて以来、視覚と聴覚を刺激する「イメージ演劇」の源流、現代オペラの金字塔として世に知られることとなった。
神奈川県民ホールは、2025年に50周年を迎える。そこに向けて新企画ができないかというところから始まり、広い舞台を使った広い意味でのオペラ的作品を、しかも大作曲家の名作をよいキャストで上演するというだけでなく、何かクリエイティブなものを加えたいという意向で、20世紀オペラが検討された結果だという。
演出・振付は、振付家・ダンサーの平原慎太郎が務める。
「昨今コンテンポラリーダンスのみならず、さまざまな分野の統合や交流がなされていて、演劇の作品で演奏があることや、舞踊の作品で台詞があることに抵抗がない表現者が多くなってきた。
この作品は初演当時、本当に斬新なマルチメディアの舞台作品だったと言える。音楽と身体と演劇と衣裳と照明と装置が混じり合う中で観客が夢を見ているような体験をする、そんな作品をつくりたいという熱意をもって取り組んでいる。
今の日本に生きる人たちに何かを残せるような、そして舞台上に希望を見出せるような、そんな作品を目指す」。
指揮は東京藝大附属高校時代に小澤征爾に見出されたキハラ良尚。高校卒業と同時に渡欧し、オーストリア・ドイツの歌劇場で研鑽を積み、オペラ指揮者として邁進している俊英だ。
「通常のオペラと違って細かいことは何も書かれていず、制作側にゆだねられている。聴衆にも想像の自由が多い作品。合唱がアンサンブルの響きの一部として効果的に扱われているのが面白みだと思う。音の洪水に包まれるようなディスコ、ロック音楽の要素も大切な音楽なのではないかと思う」
翻訳家、文芸評論家として著名な鴻巣友季子の翻訳による台詞を担当するのは、実力派俳優の松雪泰子と田中要次。ヴァイオリンは2016年に18歳でモントリオール国際音楽コンクール1位を受賞した逸材、辻彩奈。
国内外で活躍する精鋭ダンサーたちが縦横無尽に舞い踊り、演奏・合唱にはソロ、オーケストラ、室内楽など多方面で活躍する音楽家と東京混声合唱団が出演する。
「今回私はメッセンジャーという役割をいただきました。『愛 正義 メッセンジャー』がキーワード。言葉を使い音で表現していきたいと思います。
フィリップ・グラスの圧倒的な音楽と舞台芸術、身体、言葉。新たな創作の一員として、奇跡的な体験に挑みたいと思います」(松雪)。
「これは例えて言うならテクノオペラ。音楽と動作と言葉の繰り返しの中にある不可思議な世界にトランスできれば4時間はちっとも長くない。
それも本番がたったの2回だけだなんて!想像しただけで鼻息が荒くなってます」(田中)
各ジャンルの気鋭のアーティストたちによる圧巻のコラボレーション、この秋の見逃せない一大イベントだ。
神奈川県民ホール《浜辺のアインシュタイン》トレーラー
※一部の繰り返しを省略したオリジナルバージョン/新制作/歌詞原語・台詞日本語上演
日時:2022年10月8日(土)/9日(日) 各日13:30開演
会場:神奈川県民ホール 大ホール
音楽:フィリップ・グラス
翻訳:鴻巣友季子
キャスト
指揮:キハラ良尚
出演:松雪泰子 田中要次 中村祥子 辻彩奈(ヴァイオリン)他
器楽編成:電子オルガン、フルート、バスクラリネット、サクソフォン、合唱
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