天上から音が降り注ぐ! 祝祭感あふれるフェスティバルホールはどう歴史をつくるのか
その名にふさわしく、1958年に「大阪国際フェスティバル」でこけら落としとなり、バイロイト音楽祭の初の海外公演も担うなど、音楽祭を開催するために生まれたフェスティバルホール。2013年に再オープンしたフェスティバルホールの今とは?
1962年東京生れ。ヴァイオリンを学ぶ。ドイツ文学、西洋音楽史を専攻。ウィーンに留学。 多彩な執筆、講演活動のほか、1993年からNHK、日本テレビ、WOWOW、クラ...
天から音が降り注ぐ
ホールのエントランスに向かう正面階段からして伝統と格式を感じさせ、オーディエンスを非日常の祝祭へと誘う、大阪・中之島のフェスティバルホール。
座席数2700席(オーケストラピット使用時2524席)のフェスティバルホールは、パフォーミングアーツを愛するすべてのファンのために存在する。
オールジャンルだ。日々がそれを証明する。
ウィーン・フォルクスオーパー響、キエフ・バレエ《白鳥の湖》、エレファントカシマシ、山崎育三郎、東京スカパラダイスオーケストラ、沢田研二、大阪フィル定期演奏会、淀川工科高校吹奏楽部、松尾スズキ『キレイ─神様と待ち合わせした女─』、美川憲一&八代亜紀、読売日響……。2020年1月、2月の主な公演だけでこのラインナップである。
音楽を、舞台を愛してやまない支配人、磯部吉孝氏も手応えを感じている様子。
「いろいろなジャンルを受け付ける素養があるホールだと思っております。実際、オーケストラ、オペラ、バレエ、ポップスのトップアーティストからお褒めの言葉をいただきます。能や狂言も行なってきました。
主催公演であれ貸館であれ、たくさんの方の興味をしっかりと受け止め、興行的にも成功させたいという気持ちを持ってホールを運営しております。
ポップスの大御所からいただいた嬉しい言葉があります。
『天から音が降り注ぐ、拍手が天上から降り注ぎ、包まれる』と。『客席から拍手が滝のように沸き起こる』とも。
建て替える前のフェスティバルホール(1958年~2008年)時代からお付き合いのあるアーティストも多いです。ありがたいことですし、身が引き締まりますね。私も旧フェスティバルホールで仕事を致しました。ですので、フェスティバルホールという名前にも非常に愛着があります。
そうそう、2013年にオープンした今のフェスティバルホールを、この方にも愛のある言葉で褒めていただきました。
“淀工”こと大阪府立淀川工科高等学校の吹奏楽部を全国区にした丸谷明夫先生です。丸谷先生と生徒さんにはオープン前から試験演奏などでお世話になったのですが、先生は『大きいのに、ぜんぶ聴こえる。いい音も、そうでない音も! ぜんぶ正直に反応してくれる素晴らしいホール!』と。とても嬉しかったですね」。
ワーグナー公演で歴史のある大阪国際フェスティバル
フェスティバルホールと言えば、日本初の国際音楽祭、1958年の旧ホール開館とともにスタートした大阪国際フェスティバルだ(初年のみ大阪国際芸術祭の名称で開催)。
「歴史を見ますと、1961年の第4回大阪国際フェスティバルで、ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団(フランツ・コンヴィチュニー指揮)の初来日公演を手がけていますね。1967年の第10回では、バイロイト・ワーグナー・フェスティバルとして《トリスタンとイゾルデ》と《ワルキューレ》を上演しています。1ヵ月余りの改修工事を行ない、大規模なセットを受け入れました。
その遺伝子は受け継いでいます。フェスティバルホールにはワーグナーが似合うのですね。
それで今年はワーグナーのスペシャリストでもある飯守泰次郎さんの指揮、関西フィルによる《ニーベルングの指環》ハイライトを上演します(5月30日)。関西フィルの創立50周年をお祝いするコンサートでもあります。ホールと同じフェスティバルタワーにある朝日カルチャーセンター中之島とのコラボ企画、《ニーベルングの指環》ハイライト関連講座も始まります」。
常連のウィーン・フィルや大阪フィル
昨今、大阪国際フェスティバルとしての公演は、春、陽春ばかりでなく、秋にも行なわれる。
ファン憧れのウィーン・フィルハーモニー管弦楽団のコンサートだ。
「ウィーン・フィルとも長いお付き合いで、ほぼ毎年主催しています。昨年はクリスティアン・ティーレマンの指揮でリヒャルト・シュトラウス。今年(11月6日)はワレリー・ゲルギエフの指揮です。
バレエ・ファンには、夏のバレエ・ガラ<ブライト・ステップ×ATP>(7月31日)を。関西初の開催となるこの公演は、西島勇人さんを中心としたプロジェクトで、世界13カ国で活躍する19人の若手日本人ダンサーと、オーディションで選ばれたジュニアが出演します」。
「ブライト・ステップ」とは?(東京公演主催のスタジオアーキタンツ制作映像。大阪公演は7月31日)
大阪国際フェスティバル以外の人気公演も多い。
「小林研一郎さんと大阪フィルによる3大交響曲の夕べ(8月9日)。毎年完売します。今年はコバケンこと小林研一郎先生の80歳&3大交響曲の夕べ第30回記念です。大阪フィルさんはうちで定期演奏会も行なっていますし、これからもいろいろと協力しながらコンサートをお届けしたいですね。
ワーグナーも、バレエも、3大交響曲も、フェスティバルホールの大空間を生かした企画と自負しています。ぜひ、ホールで生の演奏・舞台をお楽しみください。みなさまのご来場をお待ちしています!」
中之島のフェスティバルホール。まさに祝祭を演出する、すべての舞台芸術好きのためのホールだ。
ナビゲーターがオススメする3つの公演
1. 大阪フィルハーモニー交響楽団 3大交響曲の夕べ〈30回記念〉
日程: 8月9日(日)17:00開演
コバケンこと小林研一郎80歳!
祈りもうねりもお任せあれのタクトと、フェスティバルホールの音響を知り尽くした大阪フィルで聴く、名交響曲3題! 今年もまたチケット争奪戦が繰り広げられる。
2. ワーグナー作曲《ニーベルングの指環》ハイライト(演奏会形式)
日程: 5月30日(土)14:00開演
名匠・飯守泰次郎とワーグナーの調べは「相思相愛」。飯守自身が熟考したハイライトを約3時間の演奏会形式で。
3. パレルモ・マッシモ劇場 ベッリーニ《ノルマ》
日程: 6月28日(日)15:00開演
美しい調べに満ちた名作《ノルマ》のために、デジレ・ランカトーレ、エヴァ・メイ、マルコ・ベルディ、フェデリコ・ベネッティがやってくる。イタリアのマッシモ劇場管弦楽団と合唱団が紡ぐドラマも楽しみ。
[運営](株)朝日ビルディング
[座席数] 2700席
[オープン]1958年(建て替え後、2013年再オープン)
[住所]〒530-0005 大阪府大阪市北区中之島2-3-18
[問い合わせ]Tel. 06-6231-2221
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