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2025.10.09
10月24日公開『フジコ・ヘミング 永遠の音色』

菅野美穂と小松莊一良監督が語るフジコ・ヘミングの素顔~映画『永遠の音色』

2024年4月、92歳のピアニスト人生を全うしたフジコ・ヘミング。苦難のなかでも希望を見失わなかった彼女の音色は、今も多くの人の心に響き続けている。
そんなフジコの姿を記録したドキュメンタリー映画の第3弾『フジコ・ヘミング 永遠の音色』が、10月24日(金)に公開される。

今作でナレーションを務めるのは、スペシャルドラマでフジコを演じ、プライベートでも親交のあった俳優の菅野美穂。公開に先駆けて行われた舞台挨拶には、菅野と小松莊一良監督が登壇。フジコとの思い出や映画の見どころを語った。

取材・文
東ゆか
取材・文
東ゆか 編集者・ライター

武蔵野音楽大学声楽科卒業、二期会オペラ研修所本科修了。音楽活動や会社員を経てフリーの編集者・ライターへ転身。趣味は散歩と山登り。フランスが好き。

©2025「フジコ・ヘミング 永遠の音色」フィルムパートナーズ

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フジコ・ヘミングの素顔・言葉を映画に残したい

本作でナレーションを務める菅野美穂

フジコを演じたことでその存在を“唯一無二”だと感じたという菅野。その魅力は多面性のある性格だという。

「フジコさんの性格は玉虫色のよう。それは“相反する自分”を受け止めていらっしゃったからではないでしょうか」と、少女のような純粋さと気高さを併せ持った姿を思い返した。

3作の撮影を通じて、約12年間フジコを撮り続けた小松監督。フジコらしさやその素顔をどうしても映画に残しておきたいという気持ちが創作の原動力だったという。飾らない日常会話や暮らしぶりを収めようと、撮影の日はずっとカメラを回し続けた。

「背景の説明は最小限に留めました。わからないところは余白として感じながら想像を巡らせて観てほしい。何度も観てもらえる作品にしました」と、フジコの言葉、音楽、日記で紡いだねらいを明かした。

菅野は作品からフジコと小松の篤い信頼関係を感じたという。
「フジコさんは人に裏切られた経験から、相手の本質を見抜く力があったはず。小松監督のことを信頼し、カメラの前で本音を語れたのはフジコさんにとって幸せなことだったのではないでしょうか。そしてその言葉は、ピアノの世界の人だけでなく、多くの人をハッとさせる力を持っています」と、本作がフジコと監督との信頼関係のたまものであると語った。

初公開の日記から垣間見える本当の思い

作中、フジコが小松監督に託した10代と40代の頃の絵日記が菅野のナレーションによって語られる。

「10代の頃の日記なんて気恥ずかしくて誰かに見せる気になれないのでは。そんな日記を小松監督に渡したことに対して驚きました。日記からは一つの夢に向かうための執念や根気強さも感じました」(菅野)

「40代は彼女の苦しい時代。しかし、おとぎ話のような世界観で日記が綴られていました。これを何十年も経った今、菅野さんに読んでいただいたことで、フジコさんの思いが伝わってくるようでした。レコーディングのときには、スウェーデンの雪景色が浮かびました」(小松)

『フジコ・ヘミング 永遠の音色』©2025「フジコ・ヘミング 永遠の音色」フィルムパートナーズ

スペシャルドラマの撮影の際にベルリンのフジコの家を訪れた菅野は、当時のことを思い出して顔をほころばせた。

「映画に登場した通りの、緑に囲まれた絵本のようなお家。猫がいて、フジコさんの好きなものがたくさんあって、数少ない気を許した方に囲まれていらっしゃる空間でした」(菅野)

会話が弾んだわけではなく、フジコの「まぁいいわよ」という相槌が印象に残ったそうだ。それでも菅野にとってフジコは会う度にエネルギーをもらえた存在だったという。

12年間フジ子・ヘミングを撮り続けた小松莊一良監督

「フジコさんも菅野さんがサインした灰皿を、さりげなく見えるところに置いていましたよ。きっと自慢したかったんでしょうね」と、小松監督も生前からフジコの菅野への思いを感じ取っていたという。今回のナレーションを菅野が担当することをフジコも願っており、「フジコさんも喜んでいただけていたらいいな」と笑顔を見せた。

本作の公開に寄せて二人は次のように言葉を寄せた。
「フジコさんはピアノと向き合うことがつらくても、それを辞めなかった方。だからこそ他の人とは違う音色を生み出すことができたのだと思う。映画を通じて再びフジコさんの演奏に触れられるのはすばらしいこと。私も改めてその音楽から勇気をもらいました」(菅野)

「フジコさんは1930年代の音色を目指していた人。その演奏を現代の映像や音響で聴けるのは貴重な機会だと思うので、ぜひ楽しんでいただきたいです。フジコさんと一緒に作った映画やCDで、私たちはいつでもフジコさんに会うことができます」(小松)

作中では、フジコを一躍有名にした《ラ・カンパネラ》をはじめ、ショパン「ノクターン第1番」、リスト《愛の夢》など19曲の演奏をスクリーンで堪能できる。また、初めて存在が明らかになる異母妹の存在は、フジコ像をさらに深めてくれるだろう。劇場では、フジコのこだわりを感じさせるパンフレットも発売。ぜひ映画館でフジコ・ヘミングの音色、言葉を味わいたい。

映画『フジコ・ヘミング 永遠の音色』
上映情報
映画『フジコ・ヘミング 永遠の音色』

10月24日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次ロードショー

出演: フジコ・ヘミング

ナレーション: 菅野美穂

監督・構成: 小松莊一良

配給: 日活 ©2025「フジコ・ヘミング 永遠の音色」フィルムパートナーズ

取材・文
東ゆか
取材・文
東ゆか 編集者・ライター

武蔵野音楽大学声楽科卒業、二期会オペラ研修所本科修了。音楽活動や会社員を経てフリーの編集者・ライターへ転身。趣味は散歩と山登り。フランスが好き。

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