2023北九州国際音楽祭~リウ、ガジェヴ、カントロフと旬のピアニストが相次ぎ登場!
北九州市制25周年を記念して創設され、今年で36回目を迎える北九州国際音楽祭。国内外で活躍する旬のアーティストの招聘や充実したオリジナル企画、教育プログラムなど、音楽通から初心者まで幅広い層がクラシックを楽しめる音楽祭として、全国的に認知度が高まっています。
今年は主要会場の北九州市立響ホールが30周年を迎えることから、音楽祭名物の篠崎史紀率いるマイスター・アールト×ライジングスター オーケストラによる交響曲3曲や、北九州市出身のヴァイオリニスト南紫音が挑む弦楽四重奏など、スペシャルな公演が目白押し。
なかでも、いま世界でもっとも旬のピアニスト3人を相次いで聴けるのはこの音楽祭だけでしょう。ピアニストたちの生の声も交えながら、注目の3公演にスポットを当ててご紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
ブルース・リウがパーヴォ・ヤルヴィの指揮で「相性抜群」なショパンの協奏曲を
まず1人目は、2021年ショパン国際ピアノコンクールの覇者、ブルース・リウ。パーヴォ・ヤルヴィ指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団と、ショパンのピアノ協奏曲第1番を演奏する(10/15)。
「マエストロ(P.ヤルヴィ)はこの上なくエレガントで、僕の演奏するショパンと相性が抜群だと思います。トーンハレ管の豊かなサウンドと相まって、この作品の中の重々しく精力的な面と、軽く繊細な色彩とが、素晴らしいコントラストをもって見出されることでしょう。
この曲は、実際にはピアノ協奏曲第2番の後に書かれたもので、ポーランド時代のショパンの楽観的で、希望や情熱、活力に満ちた陽気な面が音楽に滲み出ています。素晴らしい優美さと民族的な要素も含み、とくに第3楽章のロンドには、ポーランドの民俗舞踏の一つであるクラコヴィアクの舞踏的な雰囲気が表れていて、これはショパンの音楽の主要な鍵の一つでもあります」(リウ)。
ショパンコンクール優勝後はNHK交響楽団やフィルハーモニア管弦楽団と共演したり、カーネギー・ホールなど夢に見た多くの舞台で演奏し、「朝目が覚めると自分はどこにいるのかを思い出すような生活」を送っているというスーパースターぶり。40~50回は弾いているという自家薬籠中のこの曲を、世界的指揮者とオーケストラとの共演で聴く、スペシャルな公演となる。
芸術性が高く評価されるガジェヴの心動かされるプログラム
2人目は、2021年ショパンコンクールで第2位に輝いたアレクサンダー・ガジェヴ。バッハ「フランス組曲第4番」、フランク「前奏曲、フーガと変奏曲」、ショパンのノクターンと「スケルツォ第3番」、ムソルグスキー《展覧会の絵》という、「『心の動き』を巡るプログラム」でソロ・リサイタルを行なう(11/4)。
音楽以外にも哲学、数学、物理学などさまざまな分野に興味を持ち、学んでいる好奇心旺盛なガジェヴ。彼の音楽に常に文化的背景が感じられるのも、それが所以ではないだろうか。
ショパン・コンクール入賞後、イタリアで最も権威ある「フランコ・アッビアーティ賞」の2022年ベスト・ソリスト賞を受賞、同年に優れたピアニストに与えられるイギリスのテレンス・ジャッド賞を受賞するなど、多彩な活動と芸術性が高く評価されており、いまは即興演奏にも深い興味を持って研鑽を積んでいるという。今年7月にはピアノ教師の父とともにマスタークラスを開催するなど、教育活動にも力を注いでいる。
弾くピアノやホールによって演奏が七変化しするガジェヴ節は、響ホールでもきっと、聴き手の心をキュンとさせてくれるに違いない。
カントロフがソロと同じく重きを置く室内楽を、チェロの新星と
3人目は、2019年チャイコフスキー国際コンクールのピアノ部門で優勝したアレクサンドル・カントロフ。同じコンクールのチェロ部門で史上最年少の1位に輝いたズラトミール・ファンとの室内楽を聴くことができる(12/10)。
「室内楽は私にとって常に大切なもののひとつです。協奏曲、ソロ・リサイタル、室内楽にはそれぞれにしかない要素とそれぞれに欠けている要素があり、音楽家として大成するにはこれら3つの形の演奏をすべて行なう必要があると考えています。
室内楽には、ソロにはないグループとしての強みがあり、時として調和が乱れることもあるのですが、それがその瞬間を特別なものにし、音楽の自然さを生み出します。
とても親密で集中したコンサートとしては、マティアス・ゲルネ(バリトン)とのシューベルト歌曲のリサイタルがあります。またダニエル・ロザコヴィッチ(ヴァイオリン)とのデュオでは毎回お互いが違う反応をしていたので、常に新鮮に感じましたし、それが室内楽の魅力でもあると思います」(カントロフ)。
今回共演するズラトミール・ファンのチェロについてカントロフは「品格があって軽やかで、演奏は常に自然でまったく誇張がなく、その演奏スタイルはピエール・フルニエを思わせるもの」といい、いつか一緒に弾けたらすばらしいねと話していたという。
「今回のプログラムは音楽のさまざまな要素を表現するのにふさわしいものだと思いますし、彼と一緒に弾いたり話したりしながら音楽を創りあげていくことを心から楽しみにしています」(カントロフ)。
チャイコフスキーコンクール後にコンサートの機会が増えたことから、どの曲を誰と演奏したいかを改めて考え、出演したい公演をじっくり検討するようになったというカントロフ。その彼が望んだチェリストとの室内楽は、まさしく一期一会の演奏会となることだろう。
パーヴォ・ヤルヴィ指揮チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団 ブルース・リウ(ピアノ)
日時:2023年10月15日(日)15:00 開演
会場:北九州ソレイユホール
曲目:ベートーヴェン:《献堂式》序曲 Op.124、ショパン:ピアノ協奏曲第1番 ホ短調 Op.11、ベートーヴェン:交響曲第5番 ハ短調 Op.67 《運命》
アレクサンダー・ガジェヴ(ピアノ)
日時:2023年11月4日(土)15:00 開演
会場:北九州市立響ホール
曲目:J.S.バッハ:フランス組曲第4番 変ホ長調 BWV815、C.フランク:前奏曲、フーガと変奏曲 Op.18、ショパン:ノクターン 第4番 ヘ長調 Op.15-1、ノクターン 第5番 嬰ヘ長調 Op.15-2、第13番 ハ短調 Op.48-1、スケルツォ 第3番 嬰ハ短調 Op.39、ムソルグスキー:組曲《展覧会の絵》
アレクサンドル・カントロフ(ピアノ)、ズラトミール・ファン(チェロ)
日時:2023年12月10日(日)15:00開演
会場:北九州市立響ホール
曲目:シベリウス:マリンコニア Op. 20、グリーグ:チェロ・ソナタ イ短調 Op. 36、ワーグナー(D.ポッパー編):アルバムの綴り 変ホ長調(ロマンス)、ブラームス:チェロ・ソナタ 第2番 ヘ長調 Op.99
このほかにも小曽根真(ピアノ)&アヴィシャイ・コーエン(ベース)、南紫音(ヴァイオリン)福田悠一郎(ヴァイオリン)佐々木亮(ヴィオラ)横坂源(チェロ)、笹沼樹(チェロ)菅沼希望(コントラバス)※チケット完売、マイスター・アールト×ライジングスター オーケストラと、豪華出演陣による7つの有料公演がある。
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