2024北九州国際音楽祭〜「美を継ぐ 心を継ぐ」をキャッチフレーズに伝統芸能とクラシックを楽しむ
1988年から北九州市で開催されている北九州国際音楽祭。2024年は「美を継ぐ 心を継ぐ」をキャッチフレーズに、10月12日から12月7日に開催されます。「クラシック音楽や能、日本舞踊といった古今東西の伝統芸能の力を強く感じ、次世代に受け継いでいきたい」そんな想いが込められた音楽祭で、実際にどのような公演が開催されるのか、見どころを紹介します。
東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...
伝統文化を丁寧に次世代へ受け継ぎたい
北九州国際音楽祭は、北九州市制25周年を記念し1988年秋に始まった。当初は、フィンランド・クフモ室内音楽祭の姉妹版として実施され、クフモ室内音楽祭に参加する演奏家を招いて、室内楽の音楽祭を開催することを趣旨としていた。
現在、主要会場としている北九州市立響ホールは、本音楽祭の創始から5年後にオープンした。その名のとおり素晴らしい響きを備えており、室内楽に適したホールと評判になっている。その響ホールの存在は大きく、本音楽祭のラインナップは、時代の流れとともに姿を変えながらも、「室内楽」を中心とする音楽祭であることは変わっていない。
今年のキャッチフレーズは、「美を継ぐ 心を継ぐ」。クラシック音楽を含む伝統文化は、古今東西、アイデンティティの礎であり、人々の心を豊かに保つための役割も果たしている。運営に携わる響ホール・音楽事業課の担当者は、「争いや自然災害などが多い混沌とした時代だからこそ、伝統文化が持つチカラを感じています。そんな伝統文化を丁寧に次世代へ受け継ぎたいという想いを込めています」と語る。
ラインナップ全体を見渡すと、さまざまな「継ぐ」を感じられる内容となっているのがわかる。また、さらに「継ぐ」を実感できるよう、有料コンサートに纏わる講座が充実している。まずは、さまざまな角度からラインナップ内容を見て、自分なりの“継ぐ”を組み立てて鑑賞してみるのがおすすめだそう。
国内外のトップ・アーティストが登場! さらに未来のスターにも出会える名物企画も
北九州国際音楽祭に登場するのは、国内外の一流アーティストばかり。日本を代表するヴァイオリニストのひとりで長年NHK交響楽団のコンサートマスターを務める篠崎史紀を筆頭に、双紙正哉(ヴァイオリン)、田中香織(クラリネット)、長哲也(ファゴット)、谷昂登(ピアノ)といった北九州市出身のアーティストも多く集う。
ほかにもエフゲニー・キーシン(ピアノ)(12月7日)、ブラック・ダイク・バンド(英国式ブラス)(10月27日)、チャイコフスキー国際コンクール優勝者である神尾真由子(ヴァイオリン)と上原彩子(ピアノ)によるデュオリサイタル(10月12日)など、国内外の錚々たるアーティストが登場する。
©︎Makoto Kamiya
©︎武藤章
北九州市の文化施設を活用したコンサートもユニークな企画のひとつ。北九州市科学館で行なわれるプラネタリウム・コンサート(10月19日)では、山口綾規による電子パイプオルガン演奏が、西日本工業倶楽部で行なわれるサロン・コンサート(10月31日)では、田所光之マルセルのピアノ演奏を、明治時代の瀟洒な洋館で聴くことができる。
そして、本音楽祭の名物企画のマイスター・アールト×ライジングスター オーケストラ(11月23日)は、今年で11年目を迎える。本市出身の篠崎史紀が牽引するベテランと若手の生き生きとした演奏は、毎回、ワクワクさせられる。過去、参加した若手演奏者には、ミュンヘン・フィル・コンサートマスターの青木尚佳、東京交響楽団コンサートマスターの小林壱成のほか、多くが国内外のオーケストラの首席奏者などトップ・シーンで活躍している。今年も未来のスターと出会えるチャンスとなるかもしれない。
日本の伝統芸能は関連講座やクロストークも開催され、初心者でも楽しめる!
今年のもっとも特徴ある公演は、11月16日の日本の伝統芸能 能×日本舞踊 時代(とき)の美-室町の幽玄 江戸の粋-だ。本市出身の演者3名を含む9名の重要無形文化財保持者を迎える。
前半は演者によるレクチャーと客席でできる体験、後半に人気の演目である長唄「娘道成寺」、半能「土蜘蛛」を上演。室町時代に確立された能と、江戸時代に確立された日本舞踊をひとつの公演で比べて鑑賞・体験することで、違いやその魅力を、初心者でも十分に楽しめる公演となっている。金剛龍謹(能楽・金剛流若宗家)や若柳佑輝子(日本舞踊・若柳流家元長女)が出演。また、ホワイエでは、装束や能面、和楽器体験なども行なわれる。
さらに、事前に関連講座「能と日本舞踊の楽しみかた講座」(全4回)も実施される。9月28日(土)の最終回には、篠崎史紀と能楽・金剛流26世宗家で人間国宝の金剛永謹(こんごうひさのり)によるスペシャルなクロストークが実現する。今年のキャッチフレーズである「美を継ぐ 心を継ぐ」をテーマに、小倉城や小倉城庭園を見下ろす北九州芸術劇場大ホール・ロビーにて開催される。クラシック音楽と能楽を代表する二人による対話を聞けるまたとない機会。
「美を継ぐ 心を継ぐ」をキャッチフレーズに開催される今年の北九州国際音楽祭。クラシック音楽と日本の伝統芸能の両方を、一流アーティストによってさまざまな形で楽しめるこの稀有な音楽祭をお聴き逃しなく!
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