イベント
2022.03.26
4月23日・24日 ロームシアター京都とオンラインで開催!

「ローム ミュージック フェスティバル 2022」に出演! 吉田誠がクラリネットと歩んできた道を聴こう

2022年4月23日・24日、ロームシアター京都とオンラインで開催される「ロームミュージック フェスティバル 2022」に出演するクラリネット奏者・吉田 誠さんに、これまでの道とさまざまな縁が交差する今回の公演の聴きどころをインタビュー!

取材・文
長井進之介
取材・文
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

©Aurélien Tranchet

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公益財団法人ローム ミュージック ファンデーションは、音楽文化の発展・普及のために、未来の音楽界を担う若い音楽家たちの育成や、多くのコンサートの開催・支援に務めている。同財団が育成事業で関わった音楽家たちは「ローム ミュージック フレンズ」と呼ばれ、国内外で学び、活躍の場を広げている。そんな「フレンズ」の中から、現在活躍中の演奏家を集めた演奏会が、「ロームミュージック フェスティバル」だ。

「ローム ミュージック フェスティバル 2022」に出演される、クラリネット奏者として幅広く活躍中の吉田 誠さんにお話を伺った。

「ローム ミュージック フェスティバル」とは?

ローム ミュージック ファンデーションは、音楽を通して豊かな文化を作ることを目指し、さまざまな事業を実施。なかでも、1991年創立時から若い音楽家の学ぶ環境のサポートに取り組んでおり、支援してきた多くの若い音楽家がプロの音楽家として世界を舞台に活躍している。

活躍めざましい音楽家たちが「ローム ミュージック フレンズ」(2022年1月現在で4,650名)として毎年京都に集まり、多くの音楽ファンにその演奏を届ける公演が「ローム ミュージック フェスティバル」。

2016年にはじまり、コロナ禍の影響により2020年は中止、2021年は配信という形での開催となったが、2022年は有観客公演と配信のハイブリッドで行う。

フランス留学中にローム ミュージック ファンデーションと出会って

——吉田さんは2009、10、12年と奨学金を受給されましたが、奨学金をどのように活用されましたか?

吉田 私は最初、フランスに自費で留学したのですが、ちょうどユーロが高騰した頃で厳しい状況になってしまいました。ロームさんからいただいた奨学金がなかったら留学生活を続けることはできなかったと思います。たくさんの学びを得ることができたので、心から感謝しています。

吉田 誠(クラリネット)
2009、2010、2012年度奨学生、2010~2013年度セミナー生
東京藝術大学入学後、欧州に渡り、パリ国立高等音楽院およびジュネーヴ国立高等音楽院で学んだ。ソニーミュージックから小菅優氏とのデュオによる「ブラームス&シューマン作品集」(朝日新聞、レコード芸術室内楽部門特選盤)を世界リリース。文科省学習指導要領教育芸術社小学校音楽教科書準拠DVDで演奏が紹介。日欧のオーケストラや国際音楽祭に招聘。洗足学園音楽大学で後進の指導に当たっている。
©Aurélien Tranchet

——奨学金は学外での活動でも助けになりましたか?

吉田 個人レッスンを受けたり、国際コンクールを受ける際の旅費や古楽器を勉強するための費用など、さらに勉強の幅を広げていくことができました。

フランス留学中の演奏会にて。張り詰めた空気のなか、一音一音に心を込め、伸びやかに丁寧に届ける。
魂を揺さぶる吉田さんの演奏が、聴衆との空気を解かし温めてゆく。留学中の貴重な経験は、吉田さんの音楽家としての道を切り拓くパワーに。

——ローム ミュージックファンデーションが開催されているセミナーにも参加されたそうですね。

吉田 指揮セミナーを受講し、指揮者の小澤征爾先生やウィーン国立音楽大学指揮科准教授の湯浅勇治先生といったすばらしい方々から3、4年にわたってご指導を受けることができました。

——クラリネット奏者である吉田さんですが、なぜ指揮セミナーを受講されたのですか?

吉田 クラリネットには作曲家の最晩年の作品が多く、今回フェスティバルで演奏させていただくモーツァルトをはじめ、作曲家たちが生涯勉強してきたものがすべて詰まった楽曲ばかりです。ですから、作曲家がどのような学びを得て楽曲に何を込めたのか、ということを勉強する必要があります。そこで、作曲家がもっともエネルギーを費やしたであろうオーケストラ作品を勉強したいという想いに至りました。

そんなときに、このセミナーを知ったのです。セミナーを通して、スコアから音楽を見る、1つの楽器にこだわらず大きな角度から音楽を見る……といったことができるようになりました。ここでの学びは、指揮そのものはもちろん、演奏にも大きな実りをもたらしてくれました。ローム ミュージック ファンデーションさんがくださったさまざまな学びのための機会は、私のとても大切な糧になっています。

——吉田さんは「スカラシップ コンサート」にもご出演されましたね。

吉田 奨学生が「ローム ミュージック フレンズ」と呼ばれるようになった頃に出演しました。その際、演奏だけでなく奨学生同士が交流できる集まる機会も設けてもらい、有益な情報交換ができました。現在も活動の中で「フレンズ」の方にお目にかかることも多いです。多くの演奏家にとってローム ミュージック ファンデーションさんの存在はとても大きいと実感しました。

クロスロードとなる「ローム ミュージック フェスティバル2022」にむけて

——今回のフェスティバルでは、コンチェルトを核に多彩なプログラムが組まれています。吉田さんはモーツァルトの「クラリネット協奏曲イ長調K.622」を演奏されますね。

吉田 モーツァルトが晩年に書いた、世界的に愛されている作品です。モーツァルトのエッセンス、技法がすべて詰まったものであり、オペラのようで、天国的な要素まで入っています。

また今回は、モーツァルトがもともと想定していたバセットクラリネットで演奏するので、ぜひご注目いただきたいです。この楽器は通常のクラリネットよりも低音域が広いのですが、それによって曲が立体的に聴こえ、オーケストラとの絡みがより密度の高いものになります。チェロやコントラバス、ファゴットなど低音域の楽器との絡みがより増えてくるので、オーケストラと室内楽的な密度で演奏できるのです。より音楽における対話を深く楽しんでいただけると思います。

——今回ステージで共演されるみなさまについて教えていただけますか。

吉田 指揮の角田鋼亮さんとは初共演ですが、以前、小菅優さんとのピアノ協奏曲の公演を拝見しました。すばらしい耳を持ったマエストロだと思いました。きっと細部にわたってご一緒にアンサンブルを作っていけるんじゃないかなと楽しみです。

また新日本フィルハーモニー交響楽団さんとも演奏ははじめてですが、指揮を勉強し始めたときに、とてもお世話になったオーケストラです。小澤先生の創設されたオーケストラということもあってご縁があり、何回もいろいろな指揮者の方のリハーサルを見せていただきました。今回ご一緒できるのがとてもうれしいです。スケールの大きなアンサンブルができるのではないかと思います。

角田鋼亮(指揮)
東京藝術大学大学院指揮科ならびにベルリン音楽大学国家演奏家資格課程修了。NHK交響楽団、読売日本交響楽団、東京都交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、名古屋フィルハーモニー交響楽団などと共演している。2016~2020年、大阪フィルハーモニー交響楽団指揮者。現在、セントラル愛知交響楽団常任指揮者、仙台フィルハーモニー管弦楽団指揮者を務めており、いま日本でもっとも期待される若手指揮者の一人として活躍の場をひろげている。
©Hikaru Hoshi

——チェロの横坂源さんやトランペットの菊本和昭さんはいかがですか?

吉田 横坂さんとは何度も共演したことがあります。とても音楽に誠実な方で、一緒に音楽作りをする上で尊敬する大切な仲間です。

菊本さんとは初めてお目にかかりますが、NHK交響楽団で演奏されているのを何度も拝見しているので、ご一緒できてとても光栄です。

横坂 源(チェロ)
2008、2009年度奨学生
13歳で東京交響楽団とソリストデビュー。全日本ビバホールチェロコンクール最年少優勝、ミュンヘン国際音楽コンクール第2位。シュトゥットガルト国立音楽大学、ならびにフライブルク国立音楽大学で学ぶ。これまでに出光音楽賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞、ホテルオークラ音楽賞を受賞。
©Takashi Okamoto
菊本和昭(トランペット)
2008年度奨学生
京都市立芸術大学首席卒業、同大学院首席修了。フライブルク音楽大学、カールスルーエ音楽大学にて学ぶ。日本音楽コンクール第1位および増沢賞、日本管打楽器コンクール第1位ほか受賞多数。2004年より約7年間京都市交響楽団に在籍し、2012年よりNHK交響楽団首席トランペット奏者。
©Lasp Inc.

——さまざまなご縁がつながるコンサートになりそうですね!

吉田 いまの自分を作り上げてくださったローム ミュージック ファンデーションさんのコンサートで、大切な作品であるモーツァルトをバセットクラリネットで演奏できるので、とても楽しみです。まだまだ成長過程ですが、1つの成果として見ていただけましたら光栄です。

——現在は東京とフランスを拠点に活動している吉田さん。日本での拠点を縁の深い京都にも置くことになったとのこと。新たなスタートを切る吉田さんの演奏を楽しみにしています。

公演情報
ローム ミュージック フェスティバル 2022

日時: 2022年4月23日(土)・24日(日)

会場: ロームシアター京都

※全公演有料配信あり

 

リレー コンサート A

萩原麻未ピアノ・コンサート featuring 岡本麻子

日時:4月23日(土)12:00開演

出演:萩原麻未(ピアノ)、岡本麻子(ピアノ)

曲目

ラヴェル:管弦楽のための舞踏詩「ラ・ヴァルス」(2台ピアノ版)

モーツァルト:2台のピアノのためのソナタ

チャイコフスキー:バレエ音楽「くるみ割り人形」組曲 ほか

料金:S 3,000円 A 1,500円 オンライン500円

 

リレー コンサート B

愛しきクライスラー名曲選~4人のヴァイオリニストの饗宴~

日時:4月23日(土)16:30開演

出演:小川恭子(ヴァイオリン)、北川千紗(ヴァイオリン)、辻 彩奈(ヴァイオリン)、山根一仁(ヴァイオリン)、黒岩航紀(ピアノ)

※辻 彩奈の「つじ」は一点しんにょう

曲目

クライスラー:愛の悲しみ

クライスラー:レチタティーヴォとスケルツォ・カプリス

クライスラー:ベートーヴェンの主題によるロンディーノ

モーツァルト:セレナード第7番「ハフナー」より

モーツァルト:第4楽章「ロンド」(クライスラー編) ほか

料金:S 3,000円 A 1,500円 オンライン500円

 

オーケストラ コンサート Ⅰ

木・金・弦 3人の名手による協奏曲の祭典

日時:4月23日(土)18:30開演

出演:角田鋼亮(指揮)、吉田 誠(クラリネット)、菊本和昭(トランペット)、横坂 源(チェロ)、新日本フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)、朝岡 聡(ナビゲーター)

曲目

モーツァルト:歌劇「ドン・ジョヴァンニ」より序曲

モーツァルト:クラリネット協奏曲

フンメル:トランペット協奏曲

チャイコフスキー:ロココの主題による変奏曲

料金:S 4,000円 A 2,500円 B 1,500円 オンライン500円

 

リレー コンサート C

管楽器の名手たちが送るアンサンブルの愉悦

日時:4月24日(日)14:30開演

出演:上野星矢(フルート)、大島弥州夫(オーボエ)、濱崎由紀(クラリネット)、佐藤由起(ファゴット)、髙橋臣宜(ホルン)、佐藤友紀(トランペット)、稲垣路子(トランペット)、日髙剛(ホルン)、武内紗和子(トロンボーン)、宮西 純(チューバ)、朝岡 聡(ナビゲーター)

※本公演に出演する予定でした木川博史は都合のため出演できなくなりました。代わりに日髙剛が出演いたします。何卒ご了承ください

曲目

イベール:木管五重奏のための3つの小品

ビゼー:歌劇「カルメン」組曲(ワルター編)

ロッシーニ:歌劇「ウィリアム・テル」序曲よりスイス軍の行進

プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」よりモンタギュー家とキャピュレット家

サティ:ジュ・トゥ・ヴ

エワルド:金管五重奏曲第1番「シンフォニー」

料金:S 3,000円 A 1,500円 オンライン500円

 

オーケストラ コンサート Ⅱ

マーラー「巨人」×R.シュトラウス「ティル・オイレンシュピーゲル」

日時:4月24日(日)17:00開演

出演:角田鋼亮(指揮)、新日本フィルハーモニー交響楽団(管弦楽)、朝岡 聡(ナビゲーター)

曲目

ヨハン・シュトラウス2世:美しく青きドナウ

R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」

マーラー:交響曲第1番「巨人」

料金:S 4,000円 A 2,500円 B 1,500円 オンライン500円

 

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長井進之介
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長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

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