渡辺真弓のバレエに恋して 第4幕

世界のトップスターが大集結! 3年に1度のバレエの殿堂「世界バレエフェスティバル」の想い出

イベント
2018.07.26

世界中のバレエ界のトップスターたちが一堂に会する「世界バレエフェスティバル」が2018年夏に開催されます。42年前の第1回公演の衝撃を体験している渡辺真弓さんがその想い出と、今年の見所をご紹介します!

渡辺真弓 舞踊評論家 放送大学非常勤講師
渡辺真弓
渡辺真弓 舞踊評論家 放送大学非常勤講師
10歳でバレエを習う。舞踊史家の薄井憲二氏に触発され、舞踊史に興味を持つ。お茶の水女子大学及び同大学院で舞踊の実技と理論を学ぶ。オン・ステージ新聞社(音楽記者)を経て...

世界のトップ・ダンサーが一堂に会するバレエの祭典「世界バレエ・フェスティバル」が、7月から8月にかけて開催される。この催しが始まったのは、今から42年前の1976年。初回は真夏ではなくGWだった。以後3年に1度定期的に開催されるようになり、今年で15回目を迎える。

気がついてみると、筆者は第1回から日本にいる間はほぼ全回通ってきたようだが、これほど出演者の顔ぶれが豪華で、内容も充実している企画をほかに知らない。

ここで歴史的な第1回の思い出をご紹介させていただこう。

筆者所有の第1回世界バレエフェスティバル(1976年)のフライヤー(左)とプログラム(上)

1976年 日本のバレエファンに衝撃を与えた伝説のガラ公演

第1回世界バレエフェスティバルのカーテンコール

この催しを知ったのは、主催者からのダイレクトメールと音楽舞踊専門紙のプレビュー記事である。インターネットどころかメールもファックスもまだない時代。情報源と言えばこの程度しかなかった。

謳い文句は「パリでもロンドンでもニューヨークでも見られぬ超豪華顔ぶれ!! 世界のプリマ大挙来日!!」。これは決して誇大宣伝ではなかった。

何しろロシア・バレエの名花マイヤ・プリセツカヤに、キューバの至宝アリシア・アロンソ、英国ロイヤル・バレエの女王マーゴ・フォンテーンという、当時「世界3大プリマ」と称された人が一堂に会す。まさにファンにとってはまったく夢のような話だった。

左上:キューバ出身で、現在はキューバ国立バレエの芸術監督アリシア・アロンソ(1920-)

右上:ロシア生まれで20世紀最高のバレリーナと称されたマイヤ・プリセツカヤ(1925-2015)

左:黒髪黒目のエキゾチックな容貌で世界を魅了したイギリス人ダンサー、マーゴ・フォンテーン(1919-1991)とルドルフ・ヌレエフ(1938-1993)

演目は、全幕ものの『眠れる森の美女』『白鳥の湖』『ジゼル』、そして日本では聞き慣れない「グラン・ガラ・パフォーマンス」の全4種類。「ガラGALA」とは、欧米の歌劇場でシーズン開幕の特別興行の際に催される特別公演を指す。今でこそ「ガラ」と称したコンサート形式の公演が花盛りだが、この名称が日本で使われたのは恐らく初めてのことだったと思う。

できれば全演目を制覇したかったところだが、当時は高校生だったのでとても無理。1回だけ、「グラン・ガラ」のマチネ(昼公演)のチケットを電話予約で入手することができた。

この「ガラ」の体験と衝撃は何と言ったらよいか。啓発されるところが大きかったのか、大学では舞踊学を専攻しようと思い立つなど個人的にも人生の分岐点となった。

それまで日本には、旧ソ連の3大バレエと称されたボリショイ・バレエ、レニングラード・バレエ(現在のマリインスキー・バレエ)、キエフ・バレエが毎年交替で訪れ、「バレエ=ロシア」というイメージが強かった。これを一変させ、「世界バレエ地図」を見るように、バレエ・ファンの視野をより広い世界へ広げたのが世界バレエ・フェスティバルであった。

「ガラ」では、ベテランから新進まで13組が美を競ったが、「世界3大プリマ」の名演はもちろんのこと、日本では知られざるスターたちを発見させてくれたのがうれしかった。
例えば、イタリアの名花カルラ・フラッチは、ロマンティック・バレエの代表作『ラ・シルフィード』を披露して、19世紀の妖精マリー・タリオーニの再来を思わせ、精霊そのもののエヴァ・エフドキモワの『ジゼル』の演技には初々しい魅力が溢れ、特に感銘を与えられた。

第1回公演で『ラ・シルフィード』を踊るカルラ・フラッチ(1936-)
上:アメリカ出身、美貌のバレリーナ エヴァ・エフドキモワ(1948-2009)
右:初めてポワント(つま先)で立ったと伝えられる伝説のダンサー マリー・タリオーニ(1804-1884)。「ラ・シルフィード」を当たり役にしていた

ダンサーの魅力だけでなく、『海と真珠』といった珍しい作品を見られたのも新鮮だったし、『ライモンダ』や『ラ・バヤデール』をはじめクランコの『オネーギン』などの抜粋を見ただけで、今度は全幕を見てみたいという思いにかられたものだ。

2018年は20組のトップスターが日本に集結!

さて今回は、A・B各プロで、パリ・オペラ座のドロテ・ジルベールとマチュー・ガニオ、ミリアム・ウルド=ブラームとマチアス・エイマン、イングリッシュ・ナショナル・バレエのアリーナ・コジョカルとパートナーのヨハン・コボー、ボリショイ・バレエのマリーヤ・アレクサンドロワとウラディスラフ・ラントラートフ、ハンブルク・バレエのシルヴィア・アッツォーニとアレクサンドル・リアブコなど20組もが競演。
今が旬のスターたちが、巨匠プティパからバランシン、クランコ、ノイマイヤーの振付けによる珠玉のレパートリーを踊る。
中でも個人的に期待するのは、2017年に初演されたばかりのノイマイヤー振付『アンナ・カレーニナ』やボリショイ・バレエを揺るがせたポソホフ振付『ヌレエフ』など話題の最新作である。

公演の最後を締めくくるのは、最も技巧的に華やかな『ドン・キホーテ』という選曲も興奮を誘う。

さらに世界バレエ・フェスティバルの掉尾を飾る「ガラ」は、創始者の佐々木忠次氏への追悼の意を込めて「Sasaki GALA」と命名され、8月15日に開催される。こちらのチケットは既に完売しているが、ABプロは日程によってはまだ余裕がある日もありそうなので、百聞は一見に如かず、この機会に「世界のバレエの現在」を一望してみられてはいかがだろうか。

ガラで踊るスターたち

パリ・オペラ座のマチュー・ガニオ
©Michel Lidvac
パリ・オペラ座のドロテ・ジルベール。世界バレエフェスティバルには初登場
©Kiyonori Hasegawa
ハンブルク・バレエのシルヴィア・アッツォーニとアレクサンドル・リアブコ
©Kiyonori Hasegawa
ボリショイ・バレエのマリーヤ・アレクサンドロワとウラディスラフ・ラントラートフ
©Kiyonori Hasegawa
パリ・オペラ座のミリアム・ウルド=ブラームとマチアス・エイマン
©Kiyonori Hasegawa
第15回世界バレエフェスティバル
Aプロ

8月 1日(水)18:00
8月 2日(木)18:00
8月 3日(金)18:00
8月 4日(土)14:00
8月 5日(日)14:00

指揮: ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
演奏: 東京フィルハーモニー交響楽団

会場: 東京文化会館

主な演目:『くるみ割り人形』『コッペリア』『アンナ・カレーニナ』ほか

Bプロ

8月 8日(水)18:00
8月 9日(木)18:00
8月10日(金)14:00
8月11日(土)14:00
8月12日(日)14:00

指揮: ワレリー・オブジャニコフ、ロベルタス・セルヴェニカス
演奏: 東京フィルハーモニー交響楽団

会場: 東京文化会館

主な演目:『ヌレエフ』『ロミオとジュリエット』『オネーギン』『眠れる森の美女』ほか

〈世界バレエフェスティバル全幕特別プロ〉

バレエ《ドン・キホーテ》

7月27日(金)主演: ミリアム・ウルド=ブラーム/マチアス・エイマン

7月28日(土) 主演:アリーナ・コジョカル/レオニード・サラファーノフ

会場: 東京文化会館

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