インタビュー
2023.10.13

田中彩子〜形にとらわれず「遊び心」と「祈り」を込めた新アルバムとツアー

ONTOMOの連載でもお馴染み、音楽を軸に広い視野で世界を見渡すソプラノ歌手の田中彩子さん。コンサート・ツアーと4年ぶりの新アルバムに込めたテーマは『Play』。その幅広い選曲を中心にお話を伺いました。

田中彩子
田中彩子 ソプラノ歌手(ハイコロラトゥーラ)

3歳からピアノを学ぶ。18歳で単身ウィーンに留学。わずか4年後の22歳のとき、スイス ベルン州立歌劇場にて、同劇場日本人初、且つ最年少でソリスト・デビューを飾る。ウィ...

©Andrej Grilc

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——新アルバム、コンサートツアー共にテーマは『Play』。遊び心をずっと忘れずにという思いを込めた『Play』、そして平和の祈りを込めた『Pray 2つの意味合いを考えてつけられたそうですね。特にアルバムは4年ぶりとのことで、コロナ禍での心境も反映されているのでしょうか。

田中 ウィーンに住んで、街を歩いていると、コロナだけでなく、すぐお隣で起こっているウクライナ・ロシア問題や、その他の不穏な空気感はすごく身近に、ゆっくりと忍び寄ってくる影のような薄気味悪い恐怖心をこの数年間感じることが増えてきました。

今回のアルバムタイトルの『プレイ』という言葉は、『何かをプレイする』という積極性のあるとても前向きな言葉だと感じています。と同時に、そうした『プレイ』ができる、したいと思える心が持てるのはとても幸せな事だとも感じます。

この数百年のあいだ、多くの作曲家や演奏家が音楽に込められた思いを『プレイ』してきたこと、音楽を通して伝えたい気持ちを改めて考えさせられるきっかけになったと思います。

——モーツァルトのアリアは、モーツァルトが熱烈に愛した人であり、後の妻コンスタンツェの姉アロイジア・ヴェーバーに書かれた作品です。コロラトゥーラの難曲ばかりですが、歌っていてモーツァルトの特別な想いを感じることはありますか?

田中 モーツァルトがコロラトゥーラ用に書いた曲は一通り歌いましたが、どの曲も非常にコロラトゥーラの特性をわかっていたんだなと感じます。それはもしかするとアロイジアの影響が大きいのかもしれませんね。特にアロイジアのために書かれたコンサートアリアは、歌いやすいと個人的に感じます。簡単と言うわけではなくむしろ逆で、ものすごい超絶技巧でとても難しいのですが、歌い甲斐といいますか、コロラトゥーラだからこそ、この歌が歌える嬉しさも得ることができます。そういった曲もアロイジアへのアピールだったかもしれませんね。

——プレヴィン、ピアソラ、ニールセン、渋谷慶一郎…..と、少し珍しい作品が並びます。これらはどんな風に選曲していったのでしょう。

田中 基本的に私のレパートリーは、一般的にあまり馴染みのない曲が多いので、今回のアルバムが特別そうだとは思っていないのですが、いつも選曲するうえで自分の声の特徴であるコロラトゥーラを生かせる曲というのは1番大切にしていることではあります。ニールセンやピアソラなどはまさにそうで、私の音域に合わせてアレンジされています。

プレヴィンや渋谷慶一郎さんの曲は原曲のままですが、曲の雰囲気の透明感や謎めいた感じがとてもコロラトゥーラに似合う気がしたので選曲しました。

コロラトゥーラの歌という時点で、すでに著名曲は限られています。そうであれば、一般的には馴染みはないけれど、まだまだたくさんある素晴らしい曲をどんどん歌っていくことも、演奏家として大切だと思っています。

©Andrej Grilc

——チック・コリアの「ホワット・ゲーム・シャル・ウィ・プレイ・トゥデイ」は名盤収録の名曲ながら、ジャズ界でも演奏が少ない曲だと思います。初めから収録を決めていたとのことですが、田中さんが歌うことで、どんな仕上がりになっているでしょうか。

田中 どうでしょう。初めての試みだったので原曲の雰囲気をできる限り残しつつも、クラシカルになりすぎないよう気をつけましたが、あまりいろいろな形に縛られず、「コロラトゥーラのジャズ」として新しい気持ちで歌いました。

——最後にリスナー、そしてツアーに来てくださる皆さんにメッセージをお願いします。

田中 4年ぶりとなるこのニューアルバム、改めて私の歌を聴いてくださる方々に心より感謝の気持ちをこめて選曲、録音しました。

今回のツアープログラムは、ほとんどがこのニューアルバムからの選曲です。クラシックがお好きな方も、馴染みのない方も、皆が一緒に楽しめるようなアルバム・コンサートになったらいいなと思っておりますので、ぜひ気軽に聴いていただけたら嬉しいです。

ニューアルバム『Play Coloratura』


¥3000(本体価格)+税 / CD / avex-CLASSICS / AVCL-84155

 

詳しくはこちら

田中彩子 ソプラノ・リサイタル2023~Play Coloratura~

ツアースケジュール

2023年

10月15日(日)14:00開演 【福岡】FFGホール

 

11月3日(金・祝)13:30開演 【札幌】札幌コンサートホール Kitara 小ホール

 

11月12日(日)15:00開演 【名古屋】三井住友海上しらかわホール

 

11月19日(日)14:00開演 【大阪】住友生命いずみホール

 

11月23日(木・祝)14:00開演 【東京】紀尾井ホール

 

11月26日(日)15:00開演 【長崎】とぎつカナリーホール

 

12月2日(土)14:00開演 【浜松】アクトシティ浜松 中ホール

 

 

ツアー・各公演の詳細はこちらから

 

田中彩子
田中彩子 ソプラノ歌手(ハイコロラトゥーラ)

3歳からピアノを学ぶ。18歳で単身ウィーンに留学。わずか4年後の22歳のとき、スイス ベルン州立歌劇場にて、同劇場日本人初、且つ最年少でソリスト・デビューを飾る。ウィ...

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