インタビュー
2025.10.10
桑原志織、進藤実優、牛田智大、山縣美季、西本裕矢、島田隼にきく 

ショパンコンクール第1ステージ~コンテスタントたちは「ワルツ」にどう取り組んだ?

第19回ショパン国際ピアノコンクールの第1ステージが、10月7日に終わりました。今回、第1ステージの課題曲にワルツが加わり、Op.18 とOp.34-1、そして Op.42の3曲の中から1曲を選んで演奏することに。第1ステージで演奏したショパンのワルツについて、コンテスタント6名のコメントを紹介します。

取材・文
道下京子
取材・文
道下京子 音楽評論家

2019年夏、息子が10歳を過ぎたのを機に海外へ行くのを再開。 1969年東京都大田区に生まれ、自然豊かな広島県の世羅高原で育つ。子どもの頃、ひよこ(のちにニワトリ)...

上列)左から桑原志織、進藤実優、牛田智大
下列)左から山縣美季、西本裕矢、島田隼

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桑原志織「クラシック・バレエの経験から、踊っているイメージを思い描いた」

10月5日、第1ステージにおける桑原志織 ©Krzysztof Szlezak

ワルツの課題曲3曲の中で、第1番のグランドワルツ(Op.18)だけが私のレパートリーでして、あとの2曲を弾いたことはありませんでした。選曲にあたり、3曲すべて弾いてみました。準備時間があまり長くなかったので、もっとも自分の手に合う第2番のワルツ(Op.34-1)を選びました。

私は、小さい頃にクラシック・バレエを習っていたので、ワルツの振り付けを考えたり、YouTubeをいろいろ見たりして、ワルツのステップについていろいろ試行錯誤を重ねました。クラシック・バレエは、民族的な踊りやワルツなどのダンスとは違いますよね。でも、私の中では、クラシック・バレエが一番しっくりきます。頭の中で踊っているイメージを思い描いてみました。

少し迷宮に迷い込んでしまいましたが、徐々にリズムや曲の雰囲気に馴染んできて、最終的には作品の持ち味を自然に表現できるようになり、とても楽しく演奏できました。

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進藤実優「朗らかに演奏できるように、リラックスして臨めた」

10月7日、第1ステージにおける進藤実優 ©Krzysztof Szlezak

今回のコンクールでは、ワルツの課題曲としては3曲しか候補がありませんでした。まず、前回のコンクールで演奏したOp.42を避けたいと思いました。残り2曲のなかで自分の手に馴染みが良いのは、Op.34-1でした。

コンクール前に、このワルツをコンサートで何回か演奏する機会がありました。でも、真剣になりすぎたり、緊張のせいか、あまり楽しく朗らかに聞こえなかったりということもありました。できるだけ普段通りに、朗らかに演奏できるように心を落ち着けてから演奏したつもりです。ですから、リラックスして臨めたのではないかなと思っています。

牛田智大「その場でできる限りのことは尽くしたのかなと思う」

10月3日、第1ステージにおける牛田智大 ©Wojciech Grzedzinski

(「ワルツ」Op.42を選んだ理由)とくに明確な理由があったわけではなく、いろいろ試してみるなかで先生と相談し、いまの自分の状態や前後の作品との相性も含めて自然に聞こえるのではないか、ということで選びました。

ワルツのような「テンポが速いにも関わらず細部にわたって情報量が多い」作品をホールで演奏するのは難しいので、とても気を使いました。どんな響きやピアノの状態でも対応できるようにあまり細部まで固定しないようにして、その場で音を聴きながらいろいろ変化をつけたり……その時点でできる限りのことは尽くしたのかなと思っています。

山縣美季「ワルシャワの公園のリスがインスピレーションに」

10月3日、第1ステージにおける山縣美季 ©Krzysztof Szlezak

3曲の課題曲をひと通り弾いてみました。はじめは、Op.18 とOp.34-1の2曲で迷っていました。プログラムを決めるときには、他の曲との組み合わせなども考えます。でも、シンプルにOp.42に心を惹かれたので、このワルツを選びました。

Op.42には、ワルツの優雅さのなかにもさらに洗練された空気感があります。 始まり方も少し変わっていますし、構成もユニークですし、いろんなことを遊びつつ試すことができそうだなと思いました。

でも、ワルツのリズムは難しいですね。 何回も同じパッセージが出てきますし、違うエピソードも現れてきます。いろんなキャラクターを描いて遊びたいけど、なかなか簡単にはいかない……そう思いながら、コンクールに向けて準備を進めてきました。

ワルシャワに来て、公園でぼーっと過ごす機会が時々ありました。公園には、リスがたくさんいます。ナッツをあげたいと思っていましたが、なかなかうまくいきません。リスは、木の上に登って行ってしまうのです。

ワルツを練習していたとき、リスが木の枝を軽々と歩いていく姿がパッと頭の中に浮かんできたのです。すると、自分のなかでイマジネーションがどんどん広がっていきました。本番でも、かわいいリスたちを思い浮かべて、楽しく弾けました。

西本裕矢「フィルハーモニックホールでワルツのリズムを刻めて幸せ」

10月7日、第1ステージにおける西本裕矢 ©Wojciech Grzedzinski

「ワルツ」Op.34-1は、2023年に開催されたショパン国際ピリオド楽器コンクールの課題曲でもありました。私は、猫さんと小犬さんのワルツ(「子猫のワルツ」と「小犬のワルツ」)にとくに磨きをかけていました。でも、今回のショパン・コンクールでは、2曲とも課題から外れてしまったので、もう1つのレパートリーであるOp.34-1をプログラムに入れました。

フィルハーモニックホールの空間で、ワルツのリズムを刻めるのは、ほんとうに幸せでした。

島田隼「Op.18はほんとうに舞曲を感じさせてくれる」

10月7日、第1ステージにおける島田隼 ©Krzysztof Szlezak

このコンクールで演奏した「ワルツ」Op.18には、いろいろな情景が含まれていて、それぞれがまったく違うのです。僕は、基本となるテーマがとても好きで、ほんとうに舞曲を感じさせてくれます。

舞台上にはショパンの顔が映像で映し出されていますし、プロフェッショナルな舞台なので、とても緊張してしまい、弾いているときにずっと足が震えていました。

取材・文
道下京子
取材・文
道下京子 音楽評論家

2019年夏、息子が10歳を過ぎたのを機に海外へ行くのを再開。 1969年東京都大田区に生まれ、自然豊かな広島県の世羅高原で育つ。子どもの頃、ひよこ(のちにニワトリ)...

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