インタビュー
2025.09.18
2025年10月30日に浜離宮朝日ホールで14年ぶりの来日公演!

ピアニスト、ダヴィッド・フレイ「音楽に仕える」精神でバッハやワーグナーに向き合う

フランスの名手ダヴィッド・フレイにインタビュー! 2025年10月に開催される14年ぶりとなる来日公演に向けて、意気込みや今後の抱負について語ってもらいました。J.S.バッハやフレンチ・バロック、そしてワーグナーで構成されるプログラムに込められた想いとは?

取材・文
長井進之介
取材・文
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

©James Bort

この記事をシェアする
Twiter
Facebook

フランスのピアニスト、ダヴィッド・フレイは、第5回浜松国際ピアノコンクールをはじめ数々のコンクールに入賞。バッハやシューベルトなど、独墺の作曲家をレパートリーの中心とし、評価を受けてきた。今回、10月30日に浜離宮朝日ホールで行なうリサイタルでも、前半にJ.S.バッハを中心としたバロック時代の作品が並ぶ。

バッハの作品が音楽家を志すきっかけに

続きを読む

——フレイさんのレパートリーのなかでもバッハはとくに重要なものですね。

フレイ もちろんクラシック音楽における重要な人物ですし、幼いころからたくさんの曲に取り組んできましたが、私の最重要レパートリーかといわれると、そう断言はできません。ただ、私自身が音楽家として生きていきたいと思ったきっかけは、グスタフ・レオンハルトが指揮する《マタイ受難曲》を聴いたことです。美しい音楽であったことはもちろん、音楽でこれほど人に何かを伝えることができるのか、と衝撃を受けました。

ダヴィッド・フレイ(ピアノ)
ニューヨーク・タイムズ紙で「音楽的に洗練され且つエレガントな技術」、ドイツDieWelt紙では「思考する音楽家の完璧な例」と評されたダヴィッド・フレイは、同世代の中でも傑出したアーティストとして世界的キャリアを築いている。フランス南部・タルブ生まれ。パリ国立高等音楽院にてジャック・ルヴィエに師事し首席で卒業。第5回浜松国際ピアノコンクールでの入賞等数々のコンクールで上位に入賞。バドゥラ=スコダ、エッシェンバッハ、ブーレーズなどから薫陶を受ける。これまでにP.ヤルヴィ、サロネン、エッシェンバッハ、ムーティ、マズア等の指揮の下、バイエルン放送響、コンセルトヘボウ管、ミラノ・スカラ座管、パリ管、ドイツ・カンマーフィル、クリーヴランド管、ボストン響、シカゴ響、NYフィルなどと共演。また、ウィグモアホール、カーネギーホール、シャンゼリゼ劇場、ウィーン楽友協会など世界各地でリサイタルを行うほか、ルノー・カプソンらと組んで室内楽の活動も積極的に行なっている。ザルツブルク、ヴェルビエ、タングルウッド等の音楽祭にも定期的に招かれ出演多数。また自身も、故郷フランス南西部にて障害のある人々を支援する音楽祭「L'Offrande musicale」を主宰している。ワーナー専属アーティストであるフレイの録音は高く評価され、これまでにECHOクラシック・Instrumentalist of the Year等を受賞。多くのアルバムをリリースし、2021年発売の『バッハ:ゴルトベルク変奏曲』は大きな話題となった。

©François Berthier

——フレイさんの演奏も豊かな響きと多彩な音色、そして作品の内容に深く入り込んでいく解釈の深さで多くの聴衆を魅了されています。演奏する際に大切にしていることはありますか。

フレイ “音楽に仕える”ということはつねに意識しています。とくにバッハではそれを強く考えさせられますね。その際、楽曲の構造を理解することはとても重要です。お客様に演奏を届ける際、曲のはじまりから終わりを、旅の旅程や進化の過程としてわかりやすくお聴きいただくためです。

日本で音楽に対する誠実な姿勢に感銘を受けた

——今回のリサイタルでは、フレイさんとしては珍しくクープランやラモーなど、フレンチ・バロックの作曲家やワーグナーの作品を演奏されますね。

フレイ フレンチ・バロックの作品は、バッハよりもクラヴサン(チェンバロ)と深く結びついており、モダン・ピアノで演奏することに難しさを感じていました。ただ、11月にリリースする『バロック・アンコール』をきっかけに演奏し、そのような枠を超えて演奏する喜びに気づくことができました。

ワーグナーについては、ジョン・ノイマイヤーから、彼が振付するバレエ『ヴェニスに死す』で、ワーグナー作品をピアノで弾いてほしいというリクエストをいただいたのがきっかけです。その際、ワーグナーの音楽にある息遣いに感銘を受け、その世界に惹かれました。

——今後はどのようなレパートリーに取り組んでいかれるのでしょうか。個人的にはショパンのアルバムもすばらしかったので、もっとお聴きしたいのですが。

フレイ 今後も基本的にはシューベルトやバッハ、モーツァルトにベートーヴェンを中心としたレパートリーを演奏していきますが、ショパンもまた弾けたらいいなとは思っています。また、さまざなアーティストとのコラボレーションも積極的に行なっていきたいですね。

——10月の公演は14年ぶりの来日となりますが、日本のお客様にメッセージをいただけますか。

フレイ 長く間が空いてしまいましたが、日本は自分にとって大切な国です。日本の文化に興味がありますし、兄弟が日本の方と結婚しており、近しさも感じています。そして演奏会での音楽に対する誠実な姿勢にも感銘を受けました。今回また日本に行けることが今からとても楽しみです。

公演情報
ダヴィッド・フレイ  ピアノ・リサイタル

日時: 2025年10月30日(木)19:00開演

会場: 浜離宮朝日ホール

曲目: J.S.バッハ(W.ケンプ編)/シチリアーノ、ロワイエ/気まぐれ、スカルラッティ/3つのソナタ K1、K466、K87、クープラン/神秘的なバリケード、ラモー/鳥のさえずり、ワーグナー(F.リスト編)/楽劇《トリスタンとイゾルデ》より「イゾルデの愛の死」、ほか

詳しくはこちら

取材・文
長井進之介
取材・文
長井進之介 ピアニスト/音楽ライター

国立音楽大学演奏学科鍵盤楽器専修(ピアノ)卒業、同大学大学院修士課程器楽専攻(伴奏)修了を経て、同大学院博士後期課程音楽学領域単位取得。在学中、カールスルーエ音楽大学...

ONTOMOの更新情報を1~2週間に1度まとめてお知らせします!

更新情報をSNSでチェック
ページのトップへ