森崎ウィン、髙橋颯、矢部昌暉にミュージカル『ジェイミー』についてインタビュー!
音楽の観点からミュージカルの魅力に迫る連載「音楽ファンのためのミュージカル教室」。
第18回は、『ジェイミー』に出演するジェイミー役の森崎ウィンさんと髙橋颯さん、ディーン役の矢部昌暉さんにインタビュー! 2021年8月8日から東京建物Brillia HALLで上演され、映画化も決まっている話題作の魅力に迫ります。
1964年京都市生まれ。1987年、慶應義塾大学経済学部卒業。1990年から音楽に関する執筆活動を行う。著書に、小澤征爾の評伝である「音楽の旅人 -ある日本人指揮者の...
ロンドンで大ヒットした「自分らしく生きる」ことをテーマにした作品
ミュージカル『ジェイミー』は、現実の物語に基づく、ロンドン発のミュージカル。2017年2月に英国中部シェフィールドで初演され、同年11月にロンドンのウエスト・エンドのアッポロ劇場で開幕。大ヒットし、ロングランとなっていたが、新型コロナ・ウイルスの感染拡大により、2020年3月に劇場が閉鎖されてしまった。同年12月の短い再開を経て、今年5月からソーシャル・ディスタンスを取って再び公演が行なわれている。
舞台はイギリスの高校。16歳の男の子ジェイミー・ニューは、ドラァグクイーンになるという夢を持っていた。母親からもらった赤いハイヒールがきっかけで、ジェイミーは自分らしく生きようとするが、学校や周囲の大人たちからは反対され、父親とも葛藤が続いていた。そして彼は社会の偏見に立ち向かう。
ミュージカル『ジェイミー』(2021)スポット映像
多様性がいわれる現代にふさわしいミュージカルである。作曲は、シンガーソングライターで、ロック・グループ“フィーリング”のヴォーカルとしても知られる、ダン・ギレスピー・セルズ。
日本版の初演に先立ち、メイン・キャストを演じる、森崎ウィン(ジェイミー役)、髙橋颯(ジェイミー役)、矢部昌暉(ディーン役)の3人にインタビューした。
ジェイミーの2人は人生観や天真爛漫さに共感、ディーンのいじめっ子キャラは正反対
——このミュージカルのオファーを受けて、どういう感想を持ちましたか?
森崎 これの前に『ウエスト・サイド・ストーリー』(注:2020年2月、森崎にとって初めてのミュージカルであった)をやっていて、もうちょっとミュージカルを続けたいと思っていました。そして内容をきいて、今の僕だからこそやるべきという直感がしました。
髙橋 やりたい、やるしかないと思いました。
矢部 僕はミュージカルが初めてですけど、いずれミュージカルをやりたいと思っていました。今回、このような話をもらって、こんなに早くミュージカルができるとは、と思いました。これも縁なのかなと思って、新しい世界にチャレンジしたいと思いました。
——自分が演じる役柄についてお話しください。共感するところは?
森崎 ジェイミーの持っているトラウマや家族の問題は、まったく同じシチュエーションではないにしても、誰しもが持つものです。みんな大小、家族問題を抱えているのかなと思いますし、僕自身にもあります。ジェイミーの人生観には共感できることが多いですね。
髙橋 この『ジェイミー』をやること自体が僕にとっては挑戦です。難しい役だと思います。でもがんばりたいです。ジェイミーは天真爛漫なところがあり、我が道を進んでいるところに共感します。
矢部 ディーンはクラスのいわゆる“いじめっ子”です。ジェイミーが個性的で目立つ存在だから、彼をいじめたりします。ディーンは、下ネタや汚い言葉を言いますが、それを舞台上でセリフとして発するのは面白いですね(笑)。でもちょっと気が引ける部分もあります。お芝居は、普通じゃできない体験ができるので、どの役をやっても面白い。特に今回のディーンは自分とは真反対なくらいかけ離れているので、かえって、面白いと感じています。
ストーリーも音楽も前向きで、愛にあふれる作品
——『ジェイミー』はどういう作品ですか?
森崎 ストレートでわかりやすい作品です。ジェイミーが自分と向き合って、自分が逃げてきたところと対面し、そこを乗り越えて、自分らしく生きます。今の時代にぴったりの前向きになれるミュージカルです。音楽的にも、前向きになる曲が多いですね。全般的にポップスなので耳に馴染みやすいと思います。
髙橋 魅力的な作品だと思います。今の歌だっけ、今の芝居だっけ、と混乱するくらい一体感があり、魅力的です。
矢部 僕のなかでは、テーマの一つとして“愛”があります。母親からジェイミーへの愛。ジェイミーからもう一人の自分への愛。そういういろんな愛の詰まった作品だと思います。いろいろな愛が見られる、心温まる作品です。
——『ジェイミー』のなかで、好きなナンバーはどれですか?
森崎 「みにくい世界のみにくい僕」(Ugly in This Ugly World)ですね。こんなに自分を罵倒すると、自分の言葉が自分に返ってくる。こんなにマイナスなことを叫びながら歌うのは、僕にとって初めてかもしれません。そんな楽曲の魅力を知り、今は推しです。
髙橋 僕は「芸術」(Work of Art)ですね。ジェイミーが学校のトイレで今夜のドラァグショーに向けてのメイクをしているところを先生に見つかり、先生がジェイミーを廊下に出すシーンで、嫌な思いを乗り越え、一つ強くなる歌です。上がる曲調が好きですね。
矢部 僕は、1曲目の「誰も知らない」(And You Don’t Even Know it)ですね。明るい曲で最初のインパクトがあります。生徒全員で歌って、踊って、見ていても豪華です。ジェイミー自身の強さ、明るさなど、この作品を表している楽曲で、すごく好きですね。
——役作りで特に苦労したことはありますか?
髙橋 「噂のジェイミー」という曲で、生徒たちが教室でジェイミーのうわさで盛り上がっているシーンで、生徒たちが稽古場ですごいものを出してきているので、ジェイミーがバーンと登場するときに、それを越えなきゃと、毎回、プレッシャーを感じます。
矢部 ディーンが特に絡むのが、ジェイミーの2人なので、ウィンくんは僕の事務所の大先輩なのに、バカとかブスとかいうのは心苦しいですね(笑)。
僕の印象では、ウィンくんは芯があって力強く負けないジェイミーであるのに対して、颯くんは儚さや悲しみを背負うジェイミーなので、颯くんにバカとかいうと泣き出しそうで心苦しいですね。役にはそれをやっている人の個性が出ますから、同じ役でも返ってき方が違うので、そのやりとりが楽しいです。
『ジェイミー』で伝えたいことと、それぞれのミュージカルへの想い
——ミュージカルというものについては、どのようにお考えですか?
森崎 僕にとっては、『ジェイミー』は2本目のミュージカルです。やはりミュージカルは総合芸術の頂点だと思います。音楽の偉大さをあらためて感じたり、言葉の大切さをかみしめたりしています。
髙橋 僕もミュージカルは2作目(注:1作目は2020年1月の『デスノート THE MUSICAL』)。僕のまわりには普段からミュージカルを観に行く友達があまりいないのですが、ミュージカルの魅力や楽しさを知って、友達や周りの人にミュージカルを勧めたい気持ちです。ミュージカルにバイアスのかかっている人が多いけど、ミュージカルの作品にはいろいろなものがあることを知ってほしい。いろんなものが混ざった楽しさがあります。
矢部 僕は、ミュージカルは初めて。ミュージカルは歌やダンスなどやることが多いので、たいへんな部分があります。そのぶん、やりがいもある。歌やダンスがセリフの延長なので、役の言いたいことを歌に落とし込んでいきます。
ミュージカルでは、普段の音楽活動(注:ダンスロックバンド、DISH//のメンバー)とは一味違った音楽のやり方が面白いですね。歌い方も違うように感じています。歌は、キャラクターの心情を伝えるセリフの延長なので、言葉やメッセージをはっきり伝える歌い方をします。
——『ジェイミー』で伝えたいことは?
森崎 自分らしくいることが、その人の魅力であり、いちばん美しい。自分に肯定感をあげるのが大切だということを伝えたいですね。
髙橋 感謝の気持ちを伝えないといけないと思います。ネガティブだけでなく、ポジティブなことでも普段言いづらいこと、照れ臭いことをしっかり伝えたいですね。
矢部 自分らしくいるジェイミーはカッコよく見えます。自分らしさを大切にしてほしいということを伝えたい。そして、それを貫くジェイミーがどん底に落ちてそこから這い上がる姿を見せるためにも、ディーンがしっかりといじめないといけない。役としては、嫌な奴と思われればいいなと思います。
——最後にメッセージをお願いします。
森崎 僕らチーム・ジェイミー一同、劇場でお待ちしています。一瞬、現実を忘れるような、いいエンタテインメントを見たいときには、ぜひ観に来てください。
髙橋 楽しい現場です。それを本番の舞台で味わっていただきたい。僕自身もワクワクしています!
矢部 みんな個性的なキャラクターで、見るだけで華やかで面白い。しっかり、メッセージもあり、考えさせられたりもします。この作品自体がエンタテインメントの最高といえるくらい素敵な作品です。劇場でお待ちしています。
日時: 2021年8月8日(日)~29(日)
会場: 東京建物Brillia HALL
出演: ジェイミー・ニュー 森崎ウィン/髙橋颯(WATWING)、マーガレット・ニュー 安蘭けい、プリティ 田村芽実/山口乃々華、ディーン・パクストン 佐藤流司/矢部昌暉(DISH//)、ほか
料金: S席12,800円、A席9,000円、B席6,000円(全席指定・税込)
問い合わせ: 03-3490-4949
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