インタビュー
2025.09.01
11月1日(土)横浜みなとみらいホールでオルガンとオーケストラの新作初演&豪華フレンチ・プログラム

オルガニスト近藤 岳にきく オーケストラ共演の極意~サン=サーンスと新作の聴きどころ

11月1日(土)横浜みなとみらいホールで、パイプオルガン“LUCY(ルーシー)”の響きを存分に味わえるサン=サーンス「交響曲第3番《オルガン付》」、ヨーロッパを拠点に活躍する阿部加奈子さん作曲の新作オルガン協奏曲(世界初演)、そしてドビュッシー「交響詩 《海》」という豪華なフレンチ・プログラムが開催されます。指揮も阿部加奈子さんが務めるということで、この公演のもう一人の主役、オルガニストの近藤岳さんに、大学で同期だったという阿部さんについて、またパイプオルガンがオーケストラと共演する際のポイントなどを伺いました。

ONTOMO編集部
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東京・神楽坂にある音楽之友社を拠点に、Webマガジン「ONTOMO」の企画・取材・編集をしています。「音楽っていいなぁ、を毎日に。」を掲げ、やさしく・ふかく・おもしろ...

左から:近藤 岳 ©藤本史昭、阿部加奈子©T.Tairadate

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――指揮者としても大活躍される阿部加奈子さんの、新作オルガン協奏曲《風の睦び~オルガンとオーケストラのための3章》世界初演が話題ですね!

近藤 作曲中のため曲全体がどのような響きになるのかはまだ分かりませんが、3楽章それぞれが関連を持ちつつ、3つで1つの大きなストーリーが誕生する予感がしています! オルガンとオーケストラが織りなすさまざまな「風の綾」を楽しみながら演奏できたらなと思っていますが……早く完成されたスコアを手にして読んでみたいです!!(笑)

――阿部さんと近藤さんは、藝大作曲科における同級生だそうですね。学生時代から今に至るまで、近藤さんから見た指揮者、作曲家としての「阿部加奈子」とは?

近藤 彼女が大学の途中からフランスに留学して、次に久しぶりに日本で再会したのは20年以上経った頃でしょうか。昔から何事においても秀でた才能を持っている方で、「耳が良い」人でしたね。

しばらく会わない間に、風の便りでヨーロッパを中心に指揮者として活躍しているという話を耳にして、非常にびっくりしたのと同時に合点がいきました! 彼女のご両親は地元の大阪でいくつもの合唱団を束ね指導している著名な方ですので、阿部さんが指揮に導かれたのはごく自然なことだったのかもしれません。

近年、彼女が指揮をする姿を拝見すると、作品の本質に切り込む明晰さと迷いのなさ、演奏者とのコミュニケーションが見事で、それは時に「音楽」に遣える使者のようにも感じることがあります。……褒めすぎですかね(笑)。

阿部加奈子(あべ・かなこ|指揮/作曲)
オランダ在住。指揮者、作曲家。東京藝術大学音楽学部作曲科を卒業後、パリ国立高等音楽院にて日本人初の指揮科学生として学び、オランダのフォンティス総合芸術大学大学院指揮科において修士号を取得。作曲、指揮を多くの著名な音楽家に師事し、ヨーロッパを拠点に国際的な活動を展開している。 2005年には現代音楽アンサンブル「ミュルチラテラル」を創設し、その音楽監督として活動。これまでにエクサン・プロヴァンス音楽祭やコヴェントガーデン王立歌劇場、ウィーン芸術週間などでデビューを果たし、日本においては藤原歌劇団による公演でオペラ指揮者としての評価を得ている。また、ストラスブール音楽祭やヴェネツィア国際現代音楽祭などで200曲以上の世界初演を指揮し、近年では作曲活動にも力を注いでいる。
フランス・ドーム交響楽団の芸術監督兼音楽監督として活動する傍らアンサンブル・オロチの創設者兼音楽監督も務めている。生来の柔軟な思考から導き出される独創的な解釈と緻密なアプローチ、情熱溢れる演奏は、各地で高い評価を得ている。©RyotaFunahashi

――サン=サーンス「交響曲第3番《オルガン付》」もオーケストラとオルガンの響きを堪能できる作品ですが、オルガニストとして、オーケストラと共演する際に気をつけるポイントは?

近藤 やはりオーケストラとのタイミングと音響のバランスでしょうか。

コンサートホールでは、オルガンは舞台上とは違う場所に設置されており、指揮者のいる場所や客席では音の聞こえ方やタイミングがまったく違います。オルガニストは、舞台上の指揮者のタクトをオルガンに備え付けてある液晶モニターや鏡を見ながら演奏しますが、ホールによって楽器の特性や響きも違いますし、オルガンが置かれている場所も違います。ですから音を鳴らしたり鳴り止ませたりするタイミングには、常に細心の注意を払います。なかなかシビアなんですよ!

また、オルガンをどのような響きや音量で演奏すべきかという音づくりもたいへん重要で、オーケストラのスコアをよく読み込んで、リハーサルをした時にマエストロのお考えを伺いつつ、本番直前まで音色の微調整をすることも常にあります。

近藤 岳(こんどう・たけし|横浜みなとみらいホール・ホールオルガニスト)
オルガニスト、作・編曲家。東京藝術大学音楽学部作曲科卒業。同大学別科オルガン科修了。同大学大学院修士課程音楽研究科(オルガン)修了。2006年文化庁新進芸術家海外研修員としてフランス(パリ)に留学。現在、東京藝術大学非常勤講師(オルガン)、および国立音楽大学非常勤講師(作曲理論)。(一社)日本オルガニスト協会会員。2022年4月より横浜みなとみらいホール・第2代ホールオルガニストに就任。©藤本史昭

――人気曲《オルガン付》は、さまざまなオルガンやオルガン奏者で聴く機会がありますが、横浜みなとみらいホールが誇るパイプオルガン“ルーシー”は、この曲で、近藤さんの手によってどのような響きを聴かせてくれるでしょうか?

近藤 ルーシーは、たいへん美しい最弱音から、オーケストラに匹敵し凌駕するほどの豊かな大音量まで、実に多様な音色の変化と素晴らしいダイナミックレンジを持っています。オーケストラの大きなトゥッティの音にまったく埋もれることなく、対等に響かせ合うことができます。オルガンとオーケストラが融合するというサン=サーンスの素晴らしいアイデアを、さまざまなシーンに即して表情豊かに表現できるので、演奏していて魂が震えます!

これまでに数えきれないほど演奏してきた《オルガン付》ですが、ルーシーほど美しい響きの選択肢や可能性があるオルガンにはあまり出会うことがありません。相棒ルーシーと一緒に演奏できるのを今から楽しみにしています!

公演情報
阿部加奈子 指揮/作曲 横浜みなとみらいホール特別演奏会 神奈川フィルハーモニー管弦楽団 ~オルガン“LUCY”プロジェクト~

日時:2025年11月1日(土) 14:00開演

 

会場 :横浜みなとみらいホール 大ホール

 

出演

指揮:阿部加奈子
パイプオルガン:近藤 岳
オーケストラ:神奈川フィルハーモニー管弦楽団

 

曲目

ドビュッシー:交響詩 《海》
阿部加奈子:風の睦(むつ)び~オルガンとオーケストラのための3章(世界初演)※横浜みなとみらいホール委嘱作品
サン=サーンス:交響曲第3番 ハ短調 Op.78「オルガン付」

 

料金

全席指定 S席:7,000円、A席:5,000円、大学生・障がい者手帳をお持ちの方*:4,000円
高校生以下:3,500円

*横浜みなとみらいホールチケットセンター電話・窓口のみ取り扱い

※小学生~18歳以下のお子様の無料招待企画あり(枚数限定/要事前申込)

 

問い合わせ:横浜みなとみらいホールチケットセンター 045-682-2000
営業時間:10:00~17:00(休館日・保守点検日を除く)

 

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