第3章 前編《ミマス・ワールド》が生まれた原点
ミマスさんはどうやって「ミマスさん」になったのだろう?
仕事部屋にお邪魔し、これまで語られていない素顔にぐぐっと迫りました。
Sachikoの澄みわたるボーカルと、ミマスの詞と曲を基盤とする音楽ユニット「アクアマリン」( http://aqumari.com/ )のメンバー。1998年6月結...
「君も星だよ」……そのフレーズに出逢って、「自分はどこから来たのか」という問いの答えを見つけた。「君の温もりは宇宙が燃えていた遠い時代の名残」「百億年の歴史がいまも身体に流れてる」……『COSMOS』の歌詞には、この世界・地球・宇宙への崇敬と、その一部分として生きる人間の哲学が、科学の眼と平易な言葉で綴られている。
「教養を身に付けなくては」という焦りから広がった趣味
旅には時間をかける
人間が作り出すものよりも精巧なルールが、自然を支配している
「岩石と鉱物の違いはというと、鉱物は化学式で表せるんですね。たとえばこのパイライトは硫黄と鉄の化合物の結晶だからFeS2。で、いろんな鉱物が集まったのが岩石」
そう言ってミマスさんが指し示した「パイライト」に取材陣は目を疑った。定規で線を引き、機械で削り出したような立方体。金属のような質感は、まるで工業製品のよう。
「人間が削ったからじゃなくて、分子の配列で元からこういう形なんです。僕はこのパイライトのすっきりした形がすごく好きですが、こういうのを『きれいだな』と思うのは、たとえば数学者が方程式を『きれいだ』と感じるのと通じるものがあると思う。スペインの建築家・ガウディは『自然界に直線は存在しない』と言って曲線ばかりの建物をつくりましたけど、自然界にも直線はあるし、こういうのを見ると『地球も星も宇宙も全部、原子でできてるんだな』って改めてわかりますよね。本当は自然は全部ルールに則っているし、こんなに整然としている。人間が『どうです、きれいでしょう!』って作ったものよりも精巧なものが自然にあるというのは、衝撃的なことでしょう?」
宇宙の視点から、手のひらに乗る鉱物にフォーカスし、そこからさらにミクロに向かい、原子・分子まで想いを馳せ……そのすべてにおいて共通する、この世界のルールのシンプルさ、美しさに畏敬の念を抱く。そこでは人間も自分も宇宙や自然の一部であり、「人間対自然」「自分対それ以外」というような対立の構図もない。「この宇宙・この世界の中で、自分はどんな存在で、どう生きていくのか」という問いがあるだけだ。
「正確さ」とは「美しさ」の1つ
「でも、そこに美を見出すのは非常にマニアックな感性だとも思うんです。だから『COSMOS』を発表した時も『誰にもわかってもらえないだろう』と思っていました。それをたくさんの人が歌ってくれるというのは、僕にとっても驚きなんですよね」
「天文学が好きというところから人生が始まっていますので、『科学的に正しい』というのは僕にとって非常に重要ですね。星を見て『キラキラ光ってきれいだ』と感じる感性の人もいっぱいいるけれど、何を美しいと思うか、何を楽しいと思うかは人によっていろいろ。僕にとっては『正確である』ということが、1つの美しさなんですよね」
子どもの頃と変わらない自然は、人生の指針で在り続けてくれる
「最初は本と空を見比べながら、星座を1つずつ同定して楽しんでいました。これは小学生の頃に読んでいた星の本。親戚のおじさんが買ってくれました……」
初夏の星空には、北斗七星が高く輝いています。北斗七星といえば、おそらく誰でも一度は名前を聞いたことがあるでしょう。7つの明るい星が「ひしゃく」の形を作っている、有名な星の並びですね。
北斗七星は、いつも真北に輝く北極星の近くをグルグル回っていますので、一年中いつでも見ることができます。とは言っても見やすいシーズンは、夜8時や9時といった時間帯に空高く昇る5月頃になります。ぜひ真北の空の高いところを捜してみましょう。実際に見つけてみると、意外と大きいなと感じるのではないでしょうか。
北斗七星は星座ではありません。おおぐま座の一部です。おおぐま座は暗い星も含めて丁寧にたどると本当に熊の姿の形に星を結べるのですけれど、その背中からシッポの部分をなすのが北斗七星なのです。
北斗七星を見つけたら、7つの星のうち、ひしゃくの柄の先端から2つ目の星を注意深く見てみましょう。パッと見ると一つの星に見えますが、よく見ると、すぐそばに暗い星が寄り添っているのが見えます。これが有名な二重星「ミザール」と「アルコル」です。星座の図鑑やプラネタリウムの解説では必ずといっていいほど、この二重星が古代エジプトで兵士の視力検査に使われたというエピソードが紹介されます(エジプトではなくて古代メソポタミアと書かれた本もあります)。2つに見えるかどうか、あなたもぜひ一度チャレンジしてみてください。
ミマス
★春の星空のようす 2017年5月の星空(アストロアーツ:星空ガイド)
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