舞台でしか感じられない立体感、温度、湿度がある〈森山未來インタビュー 後編〉

森山未來が舞台に立つ理由 ――模索する表現者

インタビュー
2018.10.30

『SONAR』では観客との間から隔たりをなくした状態でパフォーマンスを行なった森山さん。ヨーロッパのコンテンポラリー・ダンスシーンで活躍する伊藤郁女とのデュオ『Is it worth to save us?』の初演、作品の内容を演者も知らされない舞台『NASSIM』が控えるなど、新鮮なプロダクションで挑戦が続く。

森山さんは音楽、言葉、人そして世界との関わりをさまざまな方法で模索している。

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photo:Ayumi KAKAMU
聞き手・文
高橋彩子 舞踊・演劇ライター
高橋彩子
聞き手・文
高橋彩子 舞踊・演劇ライター
早稲田大学大学院文学研究科(演劇学 舞踊)修士課程修了。現代劇、伝統芸能、バレエ、ダンス、ミュージカル、オペラなどを中心に執筆。『The Japan Times』『E...

舞台を通して世界との関わり方を「発見」する

――『SONAR』に関して、アウラや感覚領域の話が出ましたが、一緒に舞台作品を作る相手というのは、そういう何かの波長が森山さんと合う方ではないかと思いますが、いかがでしょう?

カッコいい言い方をすると、世界への関わり方を模索している人が好きなんでしょうね。生きづらそうな人たちとも言えるのかもしれないですけど。そういう人たちは、世界とコミュニケートする方法を、発見なり開発なりするしかないじゃないですか。だから、どうしたってオリジナリティに繋がる。彼らから突出したものが生まれると、それは惹かれますよね。

――森山さんご自身も、たとえば俳優かダンサーかといったジャンル分けを超えて、オリジナルな表現を模索しているようにお見受けします。

模索もしていますが、僕としてはやっぱり、憧れに似た気持ちが強いです。彼らは言葉を疑っている。だからダンサーになった、という人もいるし、例えば(2016年に『in a silent way』を共作した)チェルフィッチュの岡田(利規)さんは、彼なりの言葉の用い方や、言葉を超えたところにあるコモン・ランゲージみたいなものを捉えようとしているから、シンプルに会話ができるんです。

こういう話のときに思い浮かぶのが、アインシュタイン。彼は相対性理論のことがまったくわからない人に「あなたはサウナにいます。暑くてたまらない。でも、あなたの隣にすごいべっぴんの、あなた好みの美女が座っていたら、そこで過ごす5分はあっという間になるでしょう。横にむきむきのむさ苦しい男がいたら、その5分は永遠に感じられるでしょう。それが相対性理論です」というふうに説明したそうです。そういう言葉をもった人がいいなと思うんです。

小さな空間で純度の高いパフォーマンスを

――10月末に世界初演する『Is it worth to save us?』での共演相手、伊藤郁女さんも、今夏に日本で上演された彼女とお父様とのデュオ『私は言葉を信じないので踊る』のタイトルからもわかる通り、言葉を疑う方ですよね?

郁女ちゃんは、個人的なものを使って作品を作ることが多い人という印象。それだけに、僕のほうも何かしらを持ち出すことになると思います。

――伊藤さんとは、夏にフランスの田舎で合宿をしたとか。

過去にブルジョワが建てたらしきお城を改築した施設でクリエイションしました。夏休みだったのでパリのレジデンス施設がほぼ休みで、ちょっと遠くなら空いている、ということでそうなったんですけれど、きれいなところでしたね。

――『Is it worth to save us?』直後の11月半ばには、フェスティバル/トーキョーのナシーム・スレイマンプール×ブッシュシアター『NASSIM』にご出演。作品の内容をまったく知らない俳優が一度限りの舞台に立ち、作家本人の指示に従うというユニークな作品です。

本当に何も知らず、面白そうだと思って受けただけで、どうなるのかまったくわかっていないんです。

――面白そうというのは、何も知らない状態で舞台に立ってみて、自分がどうなるかに興味がおありなのでしょうか?

それもあるし、インストラクション自体が面白いじゃないですか。何をするのかも、何がどうなっているのかもわからない。そして、そんな作品が世界中を旅して回っている。こういう舞台自体、興味深いですから。

――小さめの空間での舞台が続きますね。

商業的な舞台での時間やお金の使い方では、どうしても何かをこぼしてしまっている感じがあります。それがイヤだとか、どうこうしたいとかではないんですが、小さい場所だと観客との距離感も近いし、お金がないからこそ工夫もするし、いろいろと制約がないところでチャレンジングなことができる公演は純度が高まる。そういうところでの表現は楽しいので、しょうがないですね(笑)。

森山未來さんの愛聴盤

クラシックはあまり聴かないのですが、昔からジャズ喫茶は好きでよく行ってますね。この間、横浜の桜木町にあるジャズ喫茶でリクエストしたのは、ジャズピアニストであるミシェル・ペトルチアーニの「Live at the Village Vanguard」。

数年前、映画館で見た彼のドキュメンタリーが面白くて、それ以来聴いています。彼はずんぐりむっくりした小柄な人で、きかん坊みたいなピアノを弾くんです。身体が脆いから強いタッチで鍵盤を叩くとすぐ骨にヒビが入って、一回のライブでどこかしら折れてしまうんですが、それでも彼は叩き続ける。
そして、ものすごく女性にモテる。人間的に魅力的だし、音楽も、すごくソフィストケート(洗練)されているというより、いろいろなところを行きつ戻りつして暴れ回っているところに、人間性が表れています。ドキュメンタリーでのイメージで聴くから余計にそう感じるのかもしれません。音楽は割とそういうふうに聴くことが多い気がしますね。

舞台では、そこに立っている人間の生き様しか出てこない。

――最後に、舞台を観に行くことをまだ躊躇している音楽ファンに向けて、お誘いのメッセージをいただけますか?

最近、美術館でとある作品を見て改めて実感したのですが、映像や図録で作品の情報はわかったとしても、それが実際にどういったサイズで、どのような立体感があって、その作品と観る人の関係がどんな遠近感なのかは、その場で体感しないとわかりませんよね。音楽だって、YouTubeでは聴けない音、カットされている音があるし、音圧だって違う。その場の温度や湿度を含め、すべてひっくるめて“パフォーマンス”だから、実際にその場に足を運んで対峙してこそ、その作品を観たと言えるのではないでしょうか。

――ご自身も、映像だけでなくライブに数多く出演されているのは、当然ながらそこにしかない魅力があるからですよね。

そうですね。映像は映像で面白いし、映像だからできることはありますが、基本的に、監督の作家性を観るものだと僕は思うんです。つまり、その監督の視線を面白がれるかどうか。

一方、舞台には、演出家や振付家はいるけれど、最終的には、そこに立っている人間の生き様しか出てこない。それが面白いか面白くないかは、当たるも八卦当たらぬも八卦で、10個観て自分の好みに10個出会えるわけはない。だから、まずは観てもらうしかないんです。

あとは、ミュージシャンの方が関わる舞台、音と対話している作品なども多いので、そういうところでチェックしてみるのもいいかもしれませんね。

出演情報
Is it worth to save us?

公演期間: 2018年10月31日(水)~11月4日(日)

会場: KAAT 神奈川芸術劇場 大スタジオ(神奈川県横浜市中区山下町281)

振付・出演: 伊藤郁女、森山未來

料金: 一般前売:5,000円 当日5,500円 U24(24歳以下):2,500円 高校生以下:1,000円(全席指定・税込み)

公演スケジュール:
10月31日(水)19:30
11月1日(木)19:30
11月2日(金)19:30
11月3日(土)15:00
11月4日(日)15:00

『NASSIM』 フェスティバル/トーキョー18主催プログラム ナシーム・スレイマンプール×ブッシュシアター

公演期間: 2018年11月9日(金)~11月11日(日)

会場: あうるすぽっと(東京都豊島区東池袋4-5-2 ライズアリーナビル2F・3F)

作・出演: ナシーム・スレイマンプール

公演スケジュール・出演:

11月9日 (金)19:30 塙 宣之(ナイツ)
11月10日(土)14:00   丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
11月11日(日)14:00    ドミニク・チェン
        18:00 森山未來(追加公演)

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