インタビュー
2025.02.21
3月8日開催、横浜みなとみらいホール「Just Composed in Yokohama —現代作曲家シリーズ—」に登場!

ホルン奏者・福川伸陽が語る現代音楽の魅力──音楽が広げる無限の想像力

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横浜みなとみらいホールが主催する「Just Composed in Yokohama —現代作曲家シリーズ—」は、新作の委嘱と再演を通じて現代音楽を未来へ継承するシリーズ。1977年に横浜市が始めた「日本の作曲家シリーズ」を受け継ぎ、1999年にリニューアルされて以来、毎年開催されている。

「Just Composed 2025 in Yokohama」には、日本を代表するホルン奏者である福川伸陽さんが出演。柔らかい音から力強い音まで幅広い表現力を持ち、「ホルンのレパートリーを広げること」をライフワークとし、作曲家への新作委嘱や多様な音楽の紹介に積極的に取り組んできた。

また、今回の公演では、武満徹作曲賞や芥川作曲賞を受賞し、フランスを拠点に活躍する作曲家の坂田直樹さんの新作「《息をする電球》—ソプラノ、ホルン、ヴィオラ、ピアノのための—」を披露する。室内楽を中心に数多くの作品を生み出してきた坂田さんによる新曲が、世界初演される予定だ。

公演の副題は「メメント・モリ」。これは古代から伝わるラテン語で、「死を忘れるな」という意味を持つ。「誰にでも訪れる死を意識することで、今をより大切に生きる」という意味としても捉えられており、このテーマに基づいてプログラムが組まれている。今回の選曲に込めた想いについて、福川さんに話を聞いた。

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「メメント・モリ」に込めた想い

—— 公演の副題「メメント・モリ」に込めた想いについて教えてください。

福川 「死」は誰にとっても避けられないものですが、正面から向き合うのは簡単ではありません。若い頃から考えていたテーマですが、年齢を重ね、多くの別れを経験する中でより身近なものになりました。作曲家たちが死と向き合いながら生み出した音楽にはどんな力があるのか、改めて考えたくなったのです。

—— コンサートを通じて伝えたいメッセージとは。

福川 音楽には、生への渇望、死への恐怖、輪廻や死後の世界への憧れなど、多様な感情が込められています。今回の公演が、人生を見つめ直すきっかけになればと思います。聴いた方が、それぞれの人生の中で「死」とどう向き合うかを考える時間になればうれしいですね。

福川伸陽(ふくかわ・のぶあき)
世界的に活躍している音楽家の一人。NHK交響楽団首席奏者としてオーケストラ界にも貢献した。ソリストとして、 NHK交響楽団、パドヴァ・ヴェネト管弦楽団、京都市交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、東京フィルハーモニー交響楽団、大阪交響楽団、横浜シンフォニエッタ他と共演。 ロンドンのウィグモアホールをはじめ、ロサンゼルスやブラジル、アジア各国でリサイタルをするなど、世界各地から数多く招かれており、「la Biennale di Venezia」「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン」「東京・春・音楽祭」などをはじめとする音楽祭にもソリスト・室内楽奏者として出演を重ねる。東京音楽大学准教授、国際ホルン協会評議員。

作曲家・坂田直樹さんの新曲、世界初演への挑戦

—— 坂田直樹さんの新曲について、どのような印象を持ちましたか。

福川 楽譜を見た瞬間、「ホルンの可能性を広げる挑戦的な作品だ」と感じました。坂田さんとは長時間議論を重ね、「これまでにない音を生み出せないか」と試行錯誤しました。とくに「しゃべるように演奏する」という新しい表現に挑戦しています。ホルンの持つ柔らかさや力強さの幅広い表現力を活かし、新たな可能性を追求する作品です。

—— その新しい表現とは。

福川 ホルンでどこまで表情豊かに語れるかを追求しました。奏法の工夫により、まるで会話をしているような音楽になっています。また、多彩な奏法が詰め込まれ、四人で演奏しているとは思えないほどの厚みと色彩感がある作品です。ただ、新しい奏法の習得には時間がかかり、新しい言語を学ぶような感覚ですね。

現代音楽の魅力とホルンの可能性

—— 現代音楽の魅力をどのように伝えていますか。

福川 現代音楽の魅力は「自由な受け取り方」にあります。ロマン派の音楽が「誰もが同じ感情を抱く」のに対し、現代音楽は聴く人次第で異なる印象を持てる。演奏前のMCでは曲の背景やイメージを伝え、聴き手が入りやすいように工夫しています。「この音楽にはどんな世界が広がっているのか」を自由に感じ取ってほしいです。

—— ホルンの可能性について、現代音楽の視点からどう考えていますか。

福川 ホルンは世界でもっとも難しい楽器のひとつですが、音域の広さやダイナミクスの幅、音色の変化など、表現力がひじょうに豊かです。一般的にはロマンチックな旋律や英雄的な場面で使われますが、現代音楽では不穏な雰囲気を作り出したり、打楽器のように使われたりと、新しい表現の可能性が広がっています。ホルンの新たな一面を発見できるのも、今回の公演の楽しみのひとつです。

—— 初心者でも楽しめるポイントは。

福川 「イメージの自由さ」だと思います。同じ音を聴いても、受け取り方は人それぞれ。僕の解釈とは異なる印象を持つ方がいたら、むしろ興味深いですし、ぜひお話を聞いてみたいですね。

今回のコンサートでは「死を忘れるなかれ」というテーマを掲げています。この言葉から、何を思い浮かべるかは人それぞれでしょう。明確な答えはなくても、音楽を通じて何かを感じ、考える時間になればうれしいです。

公演情報
Just Composed 2025 in Yokohama ― 現代作曲家シリーズ ―

日時: 2025年3月8日(土) 15:00開演(14:30開場)

会場: 横浜みなとみらいホール 小ホール

出演: 福川伸陽(ホルン)、小林沙羅(ソプラノ)、中 恵菜(ヴィオラ)、務川慧悟(ピアノ)

曲目: オリヴィエ・メシアン:『峡谷から星々へ』より第六曲「恒星の呼び声」【ホルン独奏】
フランシス・プーランク:エレジーFP168【ホルン・ピアノ】
坂田直樹:《息をする電球》-ソプラノ、ホルン、ヴィオラ、ピアノのための- (Just Composed 2025 委嘱作品:初演)
フォルケル・ダヴィット・キルヒナー:三つの詩曲【ホルン・ピアノ】
西村朗(神山奈々 編曲):雅歌Ⅱ~聖音を伴う抽象的なヘテロフォニー~(1986年度「日本の作曲家シリーズ」委嘱作品)【ソプラノ・ホルン・ヴィオラ・ピアノ】
リヒャルト・シュトラウス(山本哲也 編曲):四つの最後の歌【ソプラノ・ホルン・ヴィオラ・ピアノ】

料金: 全席指定、一般:3,000円、65歳以上・障がい者手帳をお持ちの方:2,800円、大学生:1,500円、高校生以下:1,200円

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